2025年1月10日金曜日

MCIと認知症

 <MCIと認知症について教えてください>


 「物忘れが増えたので、自分は認知症ではないか?」と心配して受診される方が増えています。脳ドックでも、以前は脳卒中の予防が主な受診動機でしたが、近年は認知症の予防や早期発見を目的とされる方が多くなっています。

 MCI(軽度認知障害)とは認知症の前段階で、認知機能に問題が生じていても、日常生活には支障を来していない状態をいいます。しかし、MCIを放置していると、5年間で約半数の方が認知症へと進行するとされます。MCIの段階で進行を食い止める対策を行えば、認知症の発症を防ぐことも可能です。認知症を根本的に治す薬はありませんが、認知症の進行を遅らせる効果のある薬はあります。そういった意味でも早期での受診、診断が非常に重要です。


<MCIの診断と認知症への進行予防の対策を教えてください>


 診察では、まず問診をします。次に記憶や判断力のテスト、画像診断などを行います。重要なのは問診で、とくにご家族からの情報が診断の決め手になることが多いです。物忘れの回数などに正常値はありませんが、以前に比べて著しく物忘れの頻度が増えていたり、物忘れの質的な変化があったりする場合は、ご本人よりご家族のほうが敏感にその異常を感じ取っているケースが多いです。

 画像診断は、認知症と似た症状が出る別の病気との鑑別において重要です。また、アルツハイマー型認知症などでは、脳の一部に萎縮が起こるなど特徴的な所見を呈するので、軽い症状であっても治療を開始する決め手になります。MRIの検査データを使って脳の萎縮度を調べる診断支援ソフトも登場しており、アルツハイマー型認知症の早期診断に役立っています。

 MCIと診断されたからといって、すべての方が認知症になるわけではありません。適切な対策をとることで認知症の発症を防げる可能性もあります。食事や運動などの生活習慣を見直すことが重要で、具体的には、①野菜や果物などをよく食べること ②肉類より魚を多く食べること、③定期的に有酸素運動を行うこと、が推奨されています。

 多くは生活習慣病の予防と重なります。それに加え、体をよく動かすこと、人とのつながりを大切にすること、心に適度な刺激を与えることなどが、アメリカのアルツハイマー協会からも推奨されています。




西さっぽろ脳神経外科クリニック
笹森 孝道 院長

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