2024年3月9日土曜日

高齢者の目まい

 <目まいについて教えてください>


 脳神経外科の外来では、目まいを訴えて受診される患者さんが多くいらっしゃいます。初めて経験する目まいは、本人にとってはとても恐ろしく感じられるものです。「天井がぐるぐる回った」「後ろに倒れそうになった」「地震かと思った」「立ち上がったら目の前が暗くなった」といった症状を目まいと感じて受診されるケースが多いですが、その訴えからはさまざまな原因が考えられます。

 頻度が高いものは、内耳障害による目まいですが、脳の障害によって起こる“怖い目まい”との鑑別が重要です。症状の強さだけで判断することは禁物で、目まいとともに言葉のもつれや手足の脱力・しびれが出ているようであれば、脳の障害が疑われます。脳の障害による目まいは極力早く診断し、治療に入る必要がありますが、その際にはMRIによる画像診断が有用です。


<高齢者の目まいについて教えてください>


 高齢者は、加齢に伴う平衡感覚の衰えや血圧を調整する能力の衰えなどがあり、目まいを起こしやすいです。糖尿病や高血圧などの持病を抱えている人は、飲んでいる薬が多いため、その副作用などで目まいを起こすこともあります。以前から耳鳴りや難聴があるケースでは、目まいが起こっても、必ずしも内耳に障害があるとはいえず、高齢者の目まいは原因を明らかにできない場合もあります。

 「起立性低血圧」とは、座った状態から立ち上がる時に血圧が急激に低下する病態をいいます。若い人は起立性低血圧により、顔が青ざめたり冷や汗が出るなどし、失神してしまうこともあります。高齢者では若い人のような激しい反応は起こりにくいとされていますが、一方で、加齢のため血圧が少し下がっただけでも目まいを起こしやすくなっているため、やはり立ち上がる際には注意が必要です。

 暑い時季は汗をかきやすいため、脱水から目まいを起こすこともあります。特に高齢者は喉の渇きを感じにくいので、脱水が生じやすいです。夜間にトイレに行くのを減らそうと水分補給を控えてしまうと脱水を起こしやすくなってしまうので、入浴前後や就寝前にはコップ1杯の水を飲むようにしましょう。

 漢方薬が目まいの症状に有効なことも多いです。長引く目まいでお悩みの方は、ぜひ医療機関にご相談ください。





西さっぽろ脳神経外科クリニック
笹森 孝道 院長

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