2024年3月9日土曜日

アルコール依存症

<アルコール依存症について教えてください>


 アルコール依存症は、酒の飲み過ぎで問題が起こっているのに、自分では酒を飲む量や時間、状況などをコントロールできなくなった状態をいいます。「今日は1杯だけ」と決めても、気が付くと何杯も飲んでいたり、飲んでは寝、目覚めたら飲むを繰り返す「連続飲酒」をするのが典型的な行動です。

 過剰に飲酒する生活が続くと、アルコールを代謝する肝臓を中心として、体のさまざまな部分で異常や障害が起こります。例えば、脂肪肝や肝炎、肝硬変、心筋症、逆流性食道炎、糖尿病、認知症などが挙げられます。また、アルコール依存症とうつ病、不安障害の合併も頻度が高く、お酒に頼る生活が自殺のリスクを高めることも明らかになっています。

 意志が弱いからお酒をやめられない──アルコール依存症について一番多い誤解です。アルコール依存症は、酒を飲む人であれば誰もがかかり得る身近な病気で、意志の強さや性格とはまったく関係ありません。アルコール依存症からの回復には、専門医療機関での治療が必要です。また、「一度、アルコール依存症になると治らない」というのも大きな誤解です。適切なプログラムによる治療を続ければ、回復できる病気であることを知ってほしいです。


<治療について教えてください>


 治療は物事の受け止め方のゆがみや偏りを修正していく「認知行動療法」と、同じアルコールの問題を抱えた当事者同士がつながり、励まし支え合いながら回復を目指す「集団精神療法」を主軸に、酒を飲みたい気持ちを低減させる薬を使う薬物療法を併用するなど、患者さん一人一人の状態・状況に応じ、いくつかの治療法を組み合わせ、飲酒習慣の改善に取り組んでいきます。

 近年は、入院しての断酒を基本的な治療としながらも、通院や節酒を治療の入り口や断酒へのステップとして取り入れるプログラムも登場し、治療の幅が広がっています。

 アルコール依存症は、本人や家族だけでは対応しきれない病気だと考えてください。大切な人がアルコール依存症かもしれないと感じたら、大きな問題が起きる前に、地域の精神保健福祉センターや保健所、専門医療機関、自助グループなど、アルコール依存症問題の専門家に相談し、適切な治療につなげることが何よりも重要です。



医療法人 北仁会
いしばし病院
畠上 大樹 院長

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