2017年10月25日水曜日

認知症の早期診断・治療の重要性


ゲスト/札幌宮の沢脳神経外科病院  丹羽 潤 先生

ほかの病気と同じように、認知症も早期診断・治療は重要ですか。
 認知症についても早期受診、早期診断、早期治療は非常に重要です。
 認知症と分類される病気は70以上あるといわれ、代表的なものはアルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症の4つです。頻度は少ないですが、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、甲状腺機能低下など、適切な治療をすれば「治る認知症」もあります。ただし、治すためには早期発見が大原則となります。
 認知症で最も多いアルツハイマー病は少しずつ進行していきますが、早い時期に薬を使い始めれば、良い状態を長く維持することができます。本人が病気を理解できる時点で受診することで、将来自分はこうしたいという意思を示すことができるのも、早期診断の意義です。 
 病院では、問診、神経心理検査、MRI(磁気共鳴画像装置)やCT(コンピューター断層撮影)、脳血流を調べるSPECTなどの画像検査を行い、認知症か正常の生理的な老化か、治る認知症か否か、原因の病気は何かなどを調べます。アルツハイマー病は、アミロイドβやタウたんぱくという物質が脳に蓄積していき、脳を萎縮させることで起こります。最近は、アミロイドβやタウたんぱくを検出できるPET検査も登場しています。これらの検査法が確立されれば、今よりもっと早期の診断が可能になります。

認知症予備軍の増加も問題になっていますね。
 専門用語では軽度認知障害(MCI)といいます。MCIは1年間に十数%の割合で認知症に移行し、6年で約80%が認知症に至ると報告されています。つまりMCIにはアルツハイマー病へ移行するタイプと移行しないタイプが存在するのです。
 現時点で両者を明確に鑑別する簡便な基準はありませんが、神経心理検査(コグニスタット認知機能検査)と脳血流SPECT検査により移行の予測因子を探る臨床研究を進めている病院もあります。今後は、アルツハイマー病へ移行するMCIか否かを早期に診断し、移行が推測される場合には早期から治療を開始するといった対策も必要でしょう。
 診断が早期であればあるほど治療は有効です。物事への興味や意欲の低下、手の込んだ料理を作れないなど、今までとは違う「変化」があったり、「もしかして…」と思ったら、躊躇(ちゅうちょ)せず身近な医療機関(脳外科、神経内科、精神科など)に相談することが大切です。

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