2017年10月4日水曜日
可逆性認知症
ゲスト/特定医療法人北仁会 いしばし病院 内田 啓仁 医師
可逆性認知症について教えてください。
認知症の原因にはさまざまなものがあり、アルツハイマー型認知症や血管性認知症といった認知機能の低下が回復しない(不可逆性)のものとは異なり、適切な治療を施すことで治る(可逆性)ものもあります。認知症の治療において最初に行われるのが、可逆性認知症と不可逆性認知症の鑑別診断です。
可逆性認知症の一つに「薬剤性認知症」といって、薬の種類や量が増えると、副作用で認知機能の低下を誘発するなどの症状が出るものがあります。
抗不安薬、抗精神病薬、抗うつ薬、睡眠薬、抗がん剤、降圧薬・鎮痛剤・胃薬の一部などで認知障害を来たすことがあります。多剤・多量服用を始めてから、物忘れが多くなったなど異常を感じることがあれば、かかりつけの医師に相談してください。薬剤を適切な量、処方に調整することで症状は治まります。
初期の認知症を疑われた人の中には、うつ病が原因で集中力や判断力の低下、物忘れといった認知症のような症状が起こっている「仮性認知症」である場合もあります。これはうつ病の症状の一つなので、うつ病の治療をしてうつ病が治れば、認知機能も改善します。高齢者のうつ病と認知症の見極めは医師でも難しいケースが多く、本人や家族が見分けることは困難です。おかしいと思う症状が見られたらすぐに専門医を受診することをおすすめします。
ほかにはどのような可逆性認知症がありますか。
「突発性正常圧水頭症」です。これは脳の中でつくられる脳脊髄液という液体が頭にたまり、脳が圧迫を受けることで生じます。症状は物忘れ、歩行障害、尿失禁などです。症状だけをみればアルツハイマー型認知症と似ていますが、外科手術で脳にたまった脳脊髄液を取り除けば治癒は可能です。
「慢性硬膜下血腫」も治る認知症です。脳を包む硬膜の下にできる血腫で、頭部打撲から数週間で発生します。頭痛や吐き気、ふらつきのほか、日時が分からない、お金の計算ができない、手足に力が入らないなどの症状が出ることがあります。この場合も、たまった血腫を取り除く外科手術などで治癒が望めます。
突発性正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫ともに診断は、CTまたはMRIで行います。可逆性といえども診断が遅すぎると治療は難しくなります。手遅れにならないよう、早めに診てもらうことが大切です。
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