2018年12月5日水曜日

慢性硬膜下血腫

ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 院長

慢性硬膜下血腫とはどのような病気ですか。
 転んで頭を打ったり、強くぶつけたりした時、頭の中に出血することがあります。けがをしてすぐに出血が起きた場合は、急性の出血あるいは血腫などといいます。一方で、ケガをしてすぐの検査で異常がなかったのに、受傷してから1〜2カ月ほど経ってから徐々に頭の中に血が溜まってくる病気があり、これを「慢性硬膜下血腫」といいます。
 慢性硬膜下血腫は、50歳以上の中高年に多くみられ、酒飲みの人、肝臓の悪い人、治療のために血液をサラサラにする薬を服用している人は、この病気になりやすいとされています。このような人の場合、軽いケガの後でも発症することがあるので注意が必要です。北海道ではこの季節、特に雪道での転倒事故に気を付けてください。
 慢性硬膜下血腫は、出血が少ない場合はほぼ無症状です。ある程度、血が溜まってくると脳を圧迫し、さまざまな症状が出てきます。代表的なものに頭痛や頭の重だるい感じが挙げられます。手術前に訴えのなかった患者さんでも、術後に頭が軽くなったという人も多いです。放置すると圧迫が進み、足元がおぼつかなくなるなどの歩行障害や手足のまひを起こしたり、脳梗塞などの脳血管障害と似た症状を示したりするケースも多いです。高齢者の場合、認知症と間違われていることも少なくありません。また、高齢者は圧迫があっても症状を自覚していない例もあり、そのまま寝込んでしまっていることもあるので、家族など周りの人が注意する必要があります。

治療について教えてください。
 無症状であれば、よほど圧迫が強くない限りはそのまま経過観察をします。内服薬を使用して様子をみることもあります。ここ最近では、血腫の治癒を促進する効果のある漢方薬を使うケースも増えています。
 圧迫が強い場合や、症状が出ているものは手術を行います。脳外科の手術というと恐ろしいイメージを持っている方も多いと思いますが、慢性硬膜下血腫の手術は局所麻酔で行い、高齢者でも受けることができます。
 頭を打っても、軽いケガであれば慌てて病院に行く必要はありません。しかし、1カ月以上経ってから頭が痛くなってきたり、先に挙げた症状が出てきたりした時は、我慢しないで専門医を受診するようにしてください。

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