2025年5月12日月曜日

アトピー性皮膚炎と漢方

<アトピー性皮膚炎について教えてください>


 アトピー性皮膚炎は、元来のアレルギーを起こしやすい体質と環境要因(花粉、乾燥、ストレスなど)が相まって肌のバリア機能が低下することで起こり、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返す皮膚疾患です。

 治療は、湿疹を抑える塗り薬、痒みを抑える内服薬(抗アレルギー薬)、日常の保湿などのスキンケアが基本です。

 塗り薬はステロイド外用薬のみならず、アレルギーの経路の一部をブロックする生物学的製剤も加わり選択肢は以前に比べるとかなり広がっています。

 一方でこのような西洋医学的な治療に加えて漢方薬を用いた東洋医学的なアプローチも存在します。


<アトピー性皮膚炎に対する漢方治療について教えてください>


 漢方薬は自然由来の植物や鉱物などの生薬が原料となります。複数の生薬を組み合わせてできた数多くの漢方薬は、それぞれ様々な効果を発揮します。

 漢方治療では、症状に対してだけではなく、一人一人の体質や体格などを総合的に診てその人に合った薬をオーダーメードのように処方します。詳しい問診や脈診、舌診、腹診などを参考に処方内容を決定します。例えば、強い痒みや炎症を伴っている場合は熱を取る効果(清熱)のある薬(黄連解毒湯など)を、浸出液の多いジクジクした皮疹に対しては生薬として石膏の含まれる薬(消風散など)を、疲れやストレスで体力・気力が衰え症状が悪化した場合は気を補う薬(補中益気湯など)を、場合によっては複数合わせて処方します。ただ漢方薬のみですべて解決するわけではなく、塗り薬や抗アレルギー薬などの西洋医学を併用し、東洋医学と合わせ両方の良いところを取り入れより治療効果を上げるのが基本です。イメージとしては「足りないものを補い過剰なものを抑える」のが漢方治療です。

 漢方薬は比較的副作用が少なく、体への負担も軽いと言われていますが、体質に合わなかったり、時には副作用が生じたりすることもあります。短期間で効果が認められる場合もありますが、ある程度の継続が必要であり途中で処方内容を変更することもあります。

 漢方治療はアトピー性皮膚炎の治療の選択肢の一つと考えてよいでしょう。




宮の森スキンケア診療室
上林 淑人 院長

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