2025年11月10日月曜日

関節リウマチと認知機能・身体機能低下の関係

<関節リウマチと認知機能・身体機能低下の
関係について教えてください>


 関節リウマチは、関節を構成する滑膜という組織で炎症が起き、全身の関節に腫れやこわばり、痛みが生じる炎症性疾患です。その炎症の中心にあるのが「IL-6(インターロイキン6)」という炎症性サイトカインです。

 サイトカインとは、さまざまな刺激によって免疫細胞などから産生されるたんぱく質で、主に身体に侵入した細菌やウイルスなどの異物を排除するための役割を担っています。

IL-6は、私たちの体の恒常性(安定した状態)の維持にとても重要ですが、過剰に産生され続けると、免疫系の調整異常や血液成分の異常など全身の臓器にさまざまな悪影響を与えます。特にIL-6が動脈硬化や気分の落ち込み、不眠を引き起こすことが知られています。また、最近の報告では認知機能にも密接に関連しているとされ、関節リウマチ患者さんは一般の人に比べて認知症リスクが高いという指摘もあります。

 また、関節リウマチなどの運動器疾患と認知症などによる認知機能の低下は、いずれもフレイルという状態に関連し、相互に影響し合うと考えられています。フレイルとは健康と要介護の中間にある状態です。健康な状態から、フレイルを経て要介護の状態に入っていきます。フレイルは、筋力など身体的な衰えと認知機能など心理的な衰え、さらに外出の機会などが減り社会とのつながりが少なくなるといった多面性を持ち、これらが絡み合って負の連鎖となり、自立度が落ちていきます。このように、高齢の関節リウマチ患者さんにおいて認知機能障害が認められる場合には、身体機能の低下も進んでいることが多く、認知機能障害がみられる患者さんに対しては早期から治療介入を行い、認知および身体機能の低下を防ぐことが非常に重要といえます。

 一方、海外の研究で関節リウマチ患者さんにおける認知症発症率は、従来の抗リウマチ薬を使っている人に比べて、生物学的製剤またはJAK阻害薬を使っている人の方が低いことが報告されています。この報告は、認知症の合併が関節炎の炎症と共通の経路によるもので、関節リウマチ治療薬が認知症の予防にも有効である可能性を示唆しています。認知機能や身体機能の低下を防ぐには炎症を抑えることが大切なのです。




佐川昭リウマチクリニック
古崎 章 院長

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