2025年10月27日月曜日

高血圧治療ガイドライン改訂のポイント

<今年8月に高血圧治療ガイドラインが改訂されましたが、
そのポイントを教えてください>

 高血圧は自覚症状がないことが多いですが、脳心血管病の最大の危険因子です。日本高血圧学会は今年8月、「高血圧管理・治療ガイドライン2025」を発表しました。今改訂では、高血圧の治療で血圧を下げる際の目標値(降圧目標)について、75歳以上で上の血圧と下の血圧をこれまでより10引き下げ、「上130mmHg未満・下80mmHg未満」に抑える新たな治療指針が盛り込まれています。

年齢に関わらず原則的に「上130未満・下80未満」を目指すことで統一されました。最新の研究で、高齢者も血圧を下げることで、脳卒中や心臓病のリスクが下がるとする結果が報告されているのを踏まえてのことです。

 血圧を下げるために推奨されている生活習慣は、塩分の摂取量を控え、野菜や果物などカリウムを含む食品を積極的に摂ること、適正体重を維持すること、ウオーキングなどの有酸素運動や筋トレを行うこと、節酒、禁煙などです。ストレスをためないことや適切な睡眠も大切です。積極的な運動が難しくても、日常生活の中で活動量を増やすことを意識してみてください。座位の時間が長いと生存率が低下するという報告もあります。健康寿命を伸ばすためにも、座っている時間を減らして「9000歩/日」を目標に日々活動しましょう。

 生活習慣の改善は非常に大切ですが、それだけではなかなか目標の血圧を達成するのは難しく、飲み薬が必要となることも多いです。早めに高血圧対策をしていくことは、将来的な脳心血管病のリスクや認知機能低下のリスク、身体活動低下のリスクを減らすことにつながります。この先も元気な日常を送るために、健診で血圧が「上140以上、下90以上」を指摘された場合や、家庭血圧を5日以上測定して平均が「上135以上、下85以上」の場合を目安に、医療機関の受診をお勧めします。

<女性の血圧について注意すべき点はありますか>

 血圧には性差があります。女性特有の因子、例えば婦人科疾患や、妊娠・妊娠合併症、更年期・閉経などが血圧に影響を与えることが分かっています。女性は一般的に、閉経前後から血圧が高くなる傾向があり、脳心血管病のリスクは閉経後に顕著に上昇します。若い頃は血圧が低かったという人も、50歳以降は高血圧になる可能性が出てくることを知っていただき血圧が高めな際には早期に受診して対策することが重要です。




社会医療法人
延山会 北成病院
山岸 恵理子 循環器内科医長

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