2025年5月26日月曜日

RSウイルスワクチンについて

<RSウイルスについて教えてください>


 RSウイルスは「呼吸器合胞体ウイルス」とも呼ばれ、一般的には乳幼児の呼吸器感染症の原因ウイルスとして知られています。RSウイルスは、2歳までにほぼすべての乳幼児が罹患し、何度も感染します。秋から冬にかけて流行し、5日ほどの潜伏期間を経て発熱、鼻水、せきなどの症状が出ます。

数日間で回復するケースが多いですが、せきがひどくなり、喘鳴(ぜんめい)、呼吸困難などの症状が出ることもあります。感染経路はせきやくしゃみなどによる飛沫感染や、ウイルスがついたドアノブなどを触ることによる接触感染で、マスク、手洗いなどが基本的な予防策になります。

 これまで成人にはあまり関係ないウイルスというイメージがありましたが、最近になって、再感染により高齢者や基礎疾患のある成人にも肺炎を引き起こし、死亡率が上がる原因となることが分かってきました。高齢者や免疫機能が低下している人、ぜんそくやCOPD(肺気腫などの慢性閉塞性肺疾患)、心疾患など慢性的な基礎疾患のある成人などは注意が必要であり、これらの疾患が増悪する危険性があります。


<RSウイルスワクチンについて教えてください>


 成人では一般的な検査方法が確立しておらず、また専用の治療薬もありません。そのような中で、一昨年ぐらいから高齢者などを対象としたRSウイルスの予防ワクチンが発売されています。

 現在2つあるRSウイルスワクチンの一つは、60歳以上の方と、50歳以上で重症化リスクが高いと考えられる方が対象となります。臨床試験では1回の接種で、予防効果(有効性)は60歳以上で80〜90%とされています。特に、60歳以上の、基礎疾患のある方に高い効果が認められています。安全性については、筋肉注射のため接種部位の痛みや腫れなどの症状が1割程度にみられますが、他のワクチンと比べて副作用が強いということはないようです。

 現時点では、いずれのワクチンも保険適用外で、医療機関により接種費用が変わります(1回の接種で約3万円程度)。自己負担は大きいですが、有効な治療法がない中で、特に高齢者がRSウイルスに感染して重症化するリスクを考えると、予防策として打っておく価値があると思われます。気になる方は、事前にかかりつけ医に問い合わせてみてください。





白石内科クリニック
干野 英明 院長

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