2018年12月12日水曜日

メンタルヘルス・ファーストエイド(前編)

ゲスト/医療法人社団 正心会 岡本病院 鈴木 志麻子 先生

最近、「メンタルヘルス・ファーストエイド」という言葉を耳にしました。どういったものでしょうか。
 メンタルヘルス(心の健康)に問題が起きた人に対して、身近な人が提供する初期対応のことです。「こころの応急処置」と言ってもいいでしょう。これはオーストラリアで誕生したプログラムですが、現在は世界20カ国以上で用いられています。

どんな状況で提供するのですか。
 例えば、救急救命のファーストエイドにおいては「ABC(A:気道確保、B:人工呼吸、C:心臓マッサージ)など」が実施されますが、日本語版のメンタルヘルス・ファーストエイドでは「り・は・あ・さ・る」の5つのステップを実施します。5つのステップは必ずしも順に行うとは限らず、必要に応じて前後したり繰り返したりします。

「りはあさる」の「り」について教えてください。
 「リスク評価」の「り」です。自殺や他害の危機を評価します。後編(12月19日掲載予定)で詳しく紹介します。

「は」について教えてください。
 「判断・批判せずにはなしを聞く」の「は」です。悩んでいる人は、一方的にアドバイスされるより、辛い気持ちを理解してほしいと望んでいます。話を聞くこと自体が大きな支援であり、最も重要なステップです。価値観や考え方の違いから相手を批判したくなってもそうせずに、まずは温かみを持ってじっくりと話を聞くことが大事です。

「あ」について教えてください。
 「あんしんと情報を提供する」の「あ」です。専門的なことが分からなくても一緒に考えることが大切です。一緒に考えること自体も支援であり安心につながります。
 続いて、現在の苦しみが「うつ病」「不安障害」などの医学的問題であり、効果的な治療があることを伝えます。必要な時には、社会的問題(借金、ハラスメント、介護など)を相談できる専門機関があることも伝えます。適切な情報提供のためには、行政などが出している相談先案内一覧(パンフレットなど)が役立ちます。

「さ」について教えてください。
 「サポートを得るように勧める」の「さ」です。病院や相談支援機関のサポートを受けることで事態が良くなるというメリットを伝えることが大切です。ここでも一方的には勧めず、一緒に考えた上で提案し、相手の気持ちを踏まえた対応を心掛けましょう。「は」で、十分に話を聞いてもらえたと思えば、こうした勧めも受け入れやすくなります。

「る」について教えてください。
 「セルフヘルプを勧める」の「る」です。家族や友人に話をするよう勧めたり、楽になるようなこと(マッサージ、呼吸法など)や、同じ経験がある人に話を聞くことなどを提案したりします。ただし、無理に勧めないのが肝心です。
〜後編に続く〜
 ※メンタルヘルス・ファーストエイドをもっと知りたい方は、動画「こころのサインに気づいたら」(YouTube・厚生労働省チャンネル)が参考になります。

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