ゲスト/北海道大野病院附属駅前クリニック 古口 健一 医師
心房細動について教えてください。
心房細動は不整脈の原因として多く見られます。通常、心臓は1分間に60〜70回という一定のリズムで動いていますが、心房細動では、心房が部分的に興奮収縮し、心室の収縮が不規則な間隔で起こるため、心房全体としての統制がとれず、1分間に350〜600回の無秩序な収縮が起きます。そのため、血液を送り出すポンプとしての心臓の機械的効率が低下し、心不全が起こりやすくなります。心房細動が続くと、めまいや動悸(どうき)、胸部の圧迫感などを感じるだけでなく、心房の中の血液がよどんで血栓ができ、脳梗塞(こうそく)などの原因となります。
心房細動は加齢とともに多くなります。原因は大きく分けて二つあり、急に起こる発作性のものと、基礎疾患が原因のものがあります。基礎疾患には高血圧、糖尿病、虚血性心臓病、心臓弁膜症、甲状腺機能亢進(こうしん)症などがあります。
治療法を教えてください。
心房細動は持続時間から三つに分類されます。7日以内に自然停止するものを発作性心房細動、7日以上1年以内持続するものを持続性心房細動、1年以上持続するものを慢性心房細動と呼びます。心房細動は慢性になると血栓ができ、脳梗塞などの危険因子となりますから、数カ月あるいは数年間不整脈に悩まされ、基礎疾患がある場合は特にリスクが高いと考えてください。慢性期の治療法は大きく分けて三つあります。1分間の心拍数を整える投薬治療(レートコントロール)、心拍数を変えずにリズムを調節する投薬治療(リズムコントロール)、血栓を予防する投薬治療です。もっとも一般的なのは血栓予防の投薬治療で、抗不整脈剤の投与や抗凝固療法を行います。抗凝固療法では、基礎疾患など危険因子がない場合はアスピリン、基礎疾患がある場合はワーファリンを投与することが多く、特にワーファリンには高い効果を認めるデータがあります。ワーファリン投薬は定期的に血液検査を行い凝血能を観察しながら適切な量に調節します。薬物療法以外では、不整脈の原因部分を切除するカテーテルアブレーションという手術療法もあります。