<難治性うつ病について教えてください>
一般にうつ病に対しては、抗うつ薬による薬物療法と精神療法が行われます。適切な治療が約1年間実施されると、3分の2のうつ病が寛解(症状が落ち着いて安定する)状態になるまでに改善するとされています。難治性うつ病とは、残りの3分の1のうつ病を指し、一般的で適切な治療を行っても改善しないケースをいいます。
精神科クリニックなどの医療機関に通院し、長い期間抗うつ薬を服用していても、調子が良くならない方、会社を休みがちという方などは、難治性うつ病が疑われます。
難治性うつ病に対する治療は、抗うつ薬を2種類以上使用する「併用療法」や、抗うつ薬に加えて抗精神病薬を用いる「増強療法」などがありますが、いずれもエビデンスがまだ乏しく、副作用が出現するなど、その効果は限定的です。新しい治療法として、2019年6月より「反復経頭蓋(けいずがい)磁気刺激療法=rTMS療法」が保険適用となりました。
<rTMS療法について教えてください>
磁気を生成する装置を頭部に当てて、認知機能をつかさどる脳の前頭前野にある脳神経に刺激を与えて活性化させ、うつ病を改善することを目指す治療法です。椅子に座って楽な姿勢で治療を受けることができ、1回の治療は約40分間。これを毎週5回、6週間(合計30回)続けます。治療中は、テレビを観たり、音楽を聴いたりしてくつろぐことが可能です。
治療の対象(適応)となるのは、①18歳以上の方 ②うつ病の診断を受けて、中等度以上のうつ症状がある方 ③抗うつ薬による薬物療法で十分な効果が認められない方で、原則として入院治療のもとで行われます。 施術中に頭皮痛や頭部不快感、頭痛などの副作用が出る場合もありますが、時間がたつにつれて徐々に薄れていきます。
高齢の方にも適応があり、また副作用や治療に要する時間など患者さんへの負担が少ないrTMS療法の登場で、難治性うつ病治療の幅が広がりました。当院では、現在まで30例のrTMS療法を実施しており、寛解が約70%、症状改善が約13%(不変が13%、治療中断が3%)と良好な治療効果を示しています。全国的にみても、副作用がひどくて抗うつ薬を使えない人や、薬が効きにくい人でも、回復につながった症例報告が少なくないので、気軽に相談してほしいと思います。
特定医療法人社団慈藻会
平松記念病院
傳田健三 院長