<整形外科手術後の疼痛管理とはどのようなことですか>
膝の人工関節手術や骨切り術、靱帯再建術といった整形外科手術を受ける患者さんが、病院や医師に強く望むのは「疼痛=痛み」の緩和です。
かつては、手術を受けたら術後に痛みがあるのは当然と思われていました。手術中は麻酔が効いていて痛みを感じませんが、術後に麻酔が切れた後は我慢できないほど痛んだという患者さんも少なくありませんでした。
しかし、現在では術前・術中から術後を見据えた痛み止めの措置をするなどして、術後の痛みを可能な限り低減させることができ、痛みを「管理=コントロール」できる時代になってきています。術後の疼痛管理は従来、手術の担当医と病棟の看護師が中心となって行っていましたが、近年は「痛みを緩和する専門家」である麻酔科医を中心に、痛みについての専門知識を持った看護師と薬剤師がチームとなった「術後疼痛管理チーム」を設置し、全身麻酔で手術を受けた患者さんの術後の痛みの軽減、生活の質の向上といった疼痛管理に専門的に取り組む病院が増えてきました。
<術後疼痛管理チームについて教えてください>
手術翌日から3日間、チームで回診を行い、薬の量の調節、吐き気や便秘など副作用への対応、合併症の予防などにあたります。医療機関によって、チームの動き方などに差があると思いますが、当院では民間病院・中規模病院ならではのフットワークの軽さを活かして、患者さんの状態や要望に対して臨機応変にスピーディーに対応できるのが強みだと考えています。
最近では、痛みが強いときに患者さん自身が薬を追加できる「自己調節鎮痛法」が導入されています。患者さんが痛みを感じたら、チームや看護師が来るのを待たずに、自身でポンプに付いているボタンを押すと薬が追加される仕組みです。1回当たりの薬の量や注入の間隔はあらかじめ安全な範囲で設定してありますので、使いすぎということはありません。
術後の痛みは、手術による合併症のリスクを高めるなど、患者さんの回復を大きく妨げます。痛みは決して我慢するものではないということを知ってもらいたいです。術後疼痛管理チームによる痛みのコントロールは、患者さんの早期回復、早期リハビリ開始につながるだけでなく、患者さんに安心感を与え、精神的ストレスを軽減することで、患者さんの満足度の高い、質の高い医療の提供にもつながります。
医療法人知仁会
八木整形外科病院
金 忍 医師