ゲスト/札幌駅前アップルレディースクリニック 工藤 正史 医師
子宮頸がんの予防ワクチンについて教えてください。
子宮頸がんがワクチンで予防できる時代になりました。子宮頸がんは初期の段階ではほとんど自覚症状がなく、しばしば発見が遅れます。20~30代で急増しているがんであり、日本人では年間約1万5000人が発症していると報告されています。
子宮頸がんの原因となるのは、発がん性ヒトパピローマウイルス(HPV)です。HPVは性的接触で感染します。HPVの感染は一時的なもので、約90%は自然に体内から排除されますが、残りの約10%は感染が持続し、そのうちの約1%が子宮頸がんを発症します。このHPVは特別な人だけが感染するのでなく、多くの女性が一生のうちに一度は感染するありふれたウイルスです。子宮頸がんと関係あるHPVには15種類ほどのタイプがあり、その中でも16型、18型は子宮頸がん患者の約60~70%の感染率となっています。ワクチンは、この16型、18型の感染を防ぐものです。
HPVに感染する可能性が低い10代前半にこの子宮頸がん予防ワクチンを接種することで、子宮頸がんの発症を約70%減らす効果があると考えられています。残りの約30%のがんを早期発見するためには、子宮頸がん検診の受診も必要です。公的な子宮頸がん検診は、20歳以上を対象として2年に1回の受診間隔で実施されています。 10代でワクチンを接種し、20歳を過ぎたら定期的な子宮頸がん検診を受けることが、効果的な予防・早期発見・治療のためには理想的です。
また、40歳でも3~4割程度の効果がありますので、45歳くらいまではワクチン接種のメリットはあると考えられます。
具体的にワクチン接種はどのように行いますか。
接種は、10歳以上の女性に3回、腕の筋肉に注射します。2回目は1カ月月後、3回目は初回の6カ月後です。主な副反応は、痛みとかゆみです。世界ではすでに96カ国で小学生や中学生の女子にワクチンを接種しています。課題は、ワクチンの値段が3回の接種で約5万円かかることです。ただし、このワクチンは3回の接種だけで長期(約20年以上)にわたって抗体価が維持され、予防効果が持続します。公費による補助が実現する可能性もありますが、おそらく年齢制限が設けられ、全額無料になるかは未定です。