2008年1月9日水曜日

「ペインクリニックの役割」について

ゲスト/札幌一条クリニック 後藤 康之 医師

痛みの治療について教えてください。

「痛み」は、原因、種類、経過が多様で、本人のみの体験であり、感受性にも個体差がある、ごく主観的なものです。だからこそ、心理状態の影響が大きいことも事実で、痛み自体が大きなストレスとなりさらに症状を悪化させることがあります。食欲や睡眠にも影響を与えます。また、古来「痛いくらいは我慢しなければ」と言われることも多く、鎮痛剤の服用が唯一の痛みの治療という考えもありました。しかし、効果が十分ではなかったり、量を増やして副作用を招くこともあり、痛みそのものを治療するという認識はなかなか得られませんでした。
痛みを発生するメカニズムは複雑で、十分に解明されていない部分もあります。アメリカでは各科と協力して「痛みがあれば緩和する医療」=ペインクリニックの存在が一般的です。日本でも1962年に東大に設置されて以来、痛みの治療は急速に進歩しました。しかし、患者の需要を満たすには程遠く、遠方からはるばる都心まで治療に通う人も多いのが実情です。

ペインクリニックの役割について教えてください。

ペインクリニックは「痛み」を伴う疾患(しっかん)の診断、治療を行うことが目的です。頭痛、片頭痛、顔面痛、顔面神経まひ、三叉(さんさ)神経痛、肩・腰・関節の痛み、ギックリ腰、帯状疱疹(ヘルペス)、坐骨(ざこつ)神経痛、がんによる痛み、心因性の痛みなど、痛み、しびれのある症状なら、すべて治療の対象になります。
具体的には、注射で局所麻酔薬などを神経周辺に入れ、痛みを遮断する神経ブロック療法が中心です。一度で痛みが取れる場合もあるし、何度か通ってもらうこともあります。治療を行うにあたっては、内科、神経内科、整形外科などの診療科と協力して行います。神経という繊細な部分を扱うため、高い技術や豊富な経験も必要となります。症状によっては、抗不安薬、抗うつ薬、漢方薬などを併用します。痛みは心身に大きなダメージを与えます。体と心の両方を診ることが、ペインクリニックの役割です。

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