2024年2月9日金曜日

統合失調症

 <統合失調症とはどのような病気ですか>


 ないものをあるように感じたり、現実とは異なることを現実だと思い込んだりする幻覚や妄想などの症状と、働く意欲が湧かない、他人と話をするのが苦手でおっくうになり、不登校・出社拒否、ひきこもりなど自分の世界に閉じこもってしまう症状が特徴的な病気です。

また、記憶力や注意力、判断力などが低下し、見通しを立てた行動が取れず、処理速度が落ちたりもします。「何かがおかしい」と不安を感じながらも、幻覚や幻聴、妄想などが病気のせいで起こっていると自覚できず、本人が病気の治療をなかなか受け入れにくいことも厄介な点です。また、最近は幻覚や妄想が目立たない患者さんも多く、うつ病や不安障害など他の心の病気との鑑別が難しいケースも増えており、この病気の早期発見・治療を難しくしています。

 脳内の神経伝達物質の一つであるドーパミンの過剰な分泌がさまざまな症状を引き起こすとされていますが、根本的な原因はいまだはっきりしていません。有病率は人口の約1%、つまり100人に1人の割合で発病するとされ、10代後半から30代前半での発症が多いです。

 統合失調症は一進一退を繰り返しながら、多くは快方に向かいますが、中には再発を繰り返したりするなどの難治例もあります。早期に発見して早期に適切な治療を開始するほど、よい経過をたどって良好な社会復帰につながることが知られています。


<統合失調症の治療について教えてください>


 抗精神病薬による「薬物療法」が中心です。従来の抗精神病薬で十分な効果が得られない場合、治療抵抗性統合失調症治療薬「クロザピン」を用いる事で、症状が改善される可能性があります。いったん回復し安定しても、また症状が悪化したり再発したりするのを防ぐために、服薬をきちんと継続することが重要です。

 症状が安定したら、回復の程度に応じた「精神療法」や「リハビリ」が行われます。入院中は、作業療法士などによる作業療法やレクリエーション療法などを行い、外来ではデイケアに通所して、各種の行事や創作的・文化的活動の中で、体力や集中力、他人とのコミュニケーション能力を徐々に回復させます。

 患者さんにとっての最大の支援者は家族であり、適切な支援は本人への大きな力となります。治療は長期間にわたるため、決してせき立てたり期待をかけ過ぎたりせず、途中でくじけないよう本人を勇気づけながら、根気強く接することが大事です。



医療法人五風会 さっぽろ香雪病院
宇佐見 誠 副院長

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