肺炎球菌とはどのような菌ですか。
肺炎球菌は細菌の一種で、その名の通り肺炎を引き起こす菌です。肺炎は高齢者に問題となっていますが、今回は子どもの病気についてお話します。生まれたばかりの赤ちゃんは、お母さんからもらった抗体による免疫で、さまざまな菌から身を守っていますが、肺炎球菌に対する抗体は生後3カ月程度でなくなってしまいます。その一方で、幼稚園・保育園で集団生活をしているほとんどの園児の、のどや鼻の粘膜から肺炎球菌が見つかっています。
肺炎球菌が起こす病気には菌血症、肺炎、髄膜炎などがあり、また急性中耳炎の原因にもなっています。特に問題となるのは髄膜炎で、それは死に至ることのある疾患だからです。髄膜炎にかかると、発熱、授乳困難、嘔吐(おうと)、けいれんなどの症状が出ます。また大泉門(頭蓋(ずがい)骨の間にあるやわらかい部分)が炎症で隆起します。大人に比べて子どもでは症状の進行が早いため、とにかく速やかな治療が必要になってきます。
治療には、細菌に有効な抗生物質を使います。しかし近年、耐性菌によって抗生物質が効かない菌も増えていますので、治療は難しくなっているのが現状です。
肺炎球菌の予防にはワクチンが効果的と聞きましたが。
日本では毎年約1000人の子どもが細菌性の髄膜炎にかかるといわれており、肺炎球菌による髄膜炎の死亡率は10%、マヒや精神障害などの後遺症が残る率も30〜40%と非常に高くなっています。
2007年に世界保健機構(WHO)は、肺炎球菌ワクチンの有効性と安全性を高く評価し、加盟各国に子どもたちへの定期接種を勧告しました。現在、世界100カ国以上でワクチンが承認され、45カ国以上で定期接種化されています。
日本では、今年の2月に小児用の肺炎球菌ワクチンが初めて販売され、任意接種ですが使えるようになりました。このワクチンは、肺炎球菌の7種類のタイプに効果があることから「7価ワクチン」と呼ばれており、肺炎球菌の70〜80%に有効であるとされています。また、現在国内では、より多種類のタイプに効果のある新しいワクチンの開発も進んでいます。子どもたちにとって福音となる、これらのワクチンが社会に広く普及することが望まれます。