<MCI(軽度認知障害)と認知症について教えてください>
近年、「物忘れが増えて自分は認知症ではないか?」と心配して受診される方が増えています。脳ドックでも、以前は脳卒中の予防が主な受診動機でしたが、現在は認知症の予防や早期発見を目的とされる方が多くなっています。今後ますます進む高齢化社会において、認知機能の低下により、生活の質が低下することを懸念しているのだと感じます。
MCI(軽度認知障害)とは、認知症の前段階で、記憶などの認知機能に問題が生じてはいるものの、日常生活には支障がない状態をいいます。しかし、MCIをそのまま放置していると、5年間で約半数の方が認知症へと進行すると言われています。
MCIの段階で進行を食い止めるための対策を行えば、認知症の発症を防げるケースもあります。残念ながら現在、認知症を治す薬はありませんが、認知症の進行を遅らせる薬は登場しています。そういった意味でも早期での受診、診断が重要です。
<MCIの診断と認知症への進行を予防する対策について教えてください>
診察では問診、記憶力や判断力のテスト、画像診断などを行います。重要なのは問診で、特にご家族からの情報が診断の鍵となります。物忘れの回数などに“正常値”はありませんが、以前に比べて著しく回数が増えている場合や、物忘れの質的な変化がある場合は、ご本人よりご家族の方が敏感にその異常を感じ取っていることが多いからです。
画像診断は、認知症の症状を起こす別の病気を鑑別するのに有用です。またアルツハイマー型認知症などでは、脳の一部に萎縮が起こるなど特徴的な所見を呈するので、軽い症状であっても治療を開始する決め手になります。「VSRAD(ブイエスラッド)」というMRIを使った脳の萎縮度をみる検査もあり、早期のアルツハイマー型認知症の診断に役立っています。
MCIと診断されたからといって、すべての方が認知症になるわけではありません。食事や運動などの生活習慣を見直すなどで、認知症の発症を防げる可能性もあります。具体的には、①野菜や果物などをよく食べること ②肉類より魚類を多く食べること ③定期的な有酸素運動を行うことーが勧められます。それに加え、体をよく動かすこと、人とのつながりを大切にすること、心に適度な刺激を与えることなどが、アメリカのアルツハイマー協会からも推奨されています。
