2010年9月1日水曜日

「生理痛の原因と子宮内膜症」

ゲスト/札幌駅前アップルレディースクリニック 工藤 正史 院長

生理痛の原因について教えてください。
 生理痛の症状を訴える女性のうち、約5パーセントが日常生活を制限されるほどの生理痛を経験し、治療を必要とするといわれています。生理痛は、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症や、クラミジアや淋菌(りんきん)感染などの後遺症による骨盤腹膜の癒着性病変など器質的疾患が認められる(病気が隠れている)場合と、原因となる病気のない機能的月経困難症とに分類されます。
 
最近、若い女性に増えている子宮内膜症とはどのような病気ですか。
 子宮内膜症は、子宮という名は付いていますが、子宮以外の部位に起こる病気です。卵巣、卵管、膀胱(ぼうこう)、腹膜、膣(ちつ)壁、直腸のほか、まれに肺に発症することもあります。
 子宮内膜とは、子宮の内側を覆っている粘膜です。妊娠が成立しないときは増殖した子宮内膜は不要となってはがれ落ち、血液などと一緒に体外へ排出されます。これが月経です。子宮内膜症は、本来であれば子宮の内側だけに存在するはずの子宮内膜組織が、子宮の内側以外のところで発生して増殖する病気です。子宮以外の場所には、不要となった子宮内膜が排出されるところがないため、出血した血液はその部分にたまってしまい、痛みを主に血尿などさまざまな症状を引き起こします。周囲の臓器と癒着して不妊症や子宮外妊娠の原因となるのも特徴です。
 治療は、対症療法と内分泌療法、外科療法になります。生理痛の痛みが強い女性は、子宮内膜からプロスタグランジンという物質が多く産生されており、これが痛みの原因となっています。プロスタグランジンの産生を阻害する薬を飲むことが対症療法で、出血が始まったらすぐに服用するのがコツです。鎮痛剤が効きにくい場合、低用量のピルを用いた内分泌療法を行います。ピルは経口避妊薬ですが、生理痛だけでなく、生理前の症状(イライラ・気分の落ち込みなど)や月経不順などの症状も改善します。また、鎮痛剤と異なり、子宮内膜症に対して治療的に働くなどのメリットもあります。薬やピルでは治療困難の場合には、外科療法が効果的で、現在は体にかかる負担の少ない腹腔(ふくくう)鏡で行う手術が主流です。
 痛みを我慢して過ごす時間は人生の大きな損失です。いたずらに怖がることなく、まずは専門医を受診することをお薦めします。

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