2010年9月22日水曜日

「大腸がん」

ゲスト/札幌いしやまクリニック 樽見 研 院長

大腸がんとはどのような病気ですか。
 以前は欧米人に比べ、日本人には大腸がんは少なかったのですが、近年は急激に増加しています。原因としては、食生活の変化が挙げられます。日本人は昔と比べ、動物性の脂肪やタンパク質を非常に多く取るようになり、一方で食物繊維の摂取量は減少しています。このような大腸がんリスクファクターの増加によって、大腸がんによる死亡者数は、かつて日本人に多かった胃がんの死亡者数に追いついてきています。特に女性のがんの部位別死亡人数は大腸がんがトップになっています。
 大腸がんは、ポリープなどの前がん病変の段階で発見できれば、簡単に治療できますが、一般的には自覚症状がないため、無症状の時期に発見することが非常に重要となります。早期発見のために定期的な検査を受けることが一番の予防といえます。
 お尻から出血した場合、その多くは痔(じ)によるものと考えられますが、大腸がんのように重大な病気が隠されていることもあります。自己判断せず、必ず専門医を受診して、正しい診断と適切な治療を受けてください。

大腸がんの検査と治療について教えてください。
 大腸がんの早期発見を目的とし、がん集団検診では便潜血(せんけつ)検査を推進していますが、精度が高くないのが欠点です。もっとも正確に診断できるのが、肛門からスコープを挿入して大腸を見る内視鏡検査です。この検査が不安で受診しないという人もいますが、最近の内視鏡は高性能で、医師の技術も高くなっていますから、以前に比べ苦痛は小さくなっています。40歳以上の人は、2〜3年に1度は内視鏡検査を受けることをお勧めします。
 大腸がんの治療は早期の場合、大腸切除せずに内視鏡を使ってがん病巣のみ切除する内視鏡的治療が可能なものもあります。進行がんの場合は、以前は下腹部を切開する開腹手術しかありませんでしたが、現在は、症例によって小さな創(きず)ですむ腹腔鏡下手術が行われています。術後の痛みも少ないため、回復が早く、その結果として早期退院、早期社会復帰が可能となります。
 大腸がんは、その発生に食生活の内容が大きな影響を与えています。動物性脂肪を控え、ビタミン類や食物繊維を豊富に取るバランスの良い食生活を心掛けるなど、今までの生活習慣を見直すことも大腸がんの予防には大切なことです。

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