2023年2月16日木曜日

膝関節周囲骨切り術によるスポーツ復帰

 医療法人知仁会 八木整形外科病院 薮内 康史 医師


膝関節周囲骨切り術について教えてください


 中高年になると膝に痛みを感じる人が増えてきます。その多くは変形性膝関節症によるものです。膝の関節軟骨がすり減り、関節内に炎症が起きたり、関節が変形して痛みが生じます。症状が進むと、歩けば膝が痛く、正座や階段の上り下りが難しくなります。末期になると安静時にも痛みが取れず、歩行困難になるなど日常生活に支障を来します。

 鎮痛剤の服用や関節内注射などの保存的治療では痛みを軽減できても、病気の進行は食い止められません。一方、外科的治療は一度手術を受けて回復すれば、痛みをほとんど忘れて生活できる可能性が高いです。手術治療は膝の変形を矯正して痛みを解消する「骨切り術」があります。

 近年注目されている骨切り術とは、膝周囲の骨〈脛(けい)骨や大腿(だいたい)骨〉を矯正することで脚の並びを変えて、膝の傷んだ部分に負担のかからない脚へと矯正する手術です。例えば、日本人に多いO脚変形では膝の内側がすり減るため、自分の骨を切って変形を矯正することで、内側に偏っている荷重ストレスを外側に移動させ、軽度のX脚へと矯正します。いくつか術式がありますが、最近では、脛骨(すねの骨)の内側から骨を切って広げ、時間とともに骨に置き換わる人工骨を挿入し、金属プレートで固定する方法が多くなっています。


骨切り術のメリットについて教えてください


 最大の利点は、自分の関節を温存することができるため低侵襲で、他の手術法と比較して術後の日常生活に対する制限がほとんどないことです。回復すれば、術前の痛みが取れ、人工関節では制限のある「跳んだり走ったり」の激しいスポーツ活動も可能となります。自分の膝を残したい、まだまだマラソンや登山、スキー、テニス、ゴルフなどのスポーツを楽しみたい、という人に適した手術法です。膝が痛くてスポーツを諦めかけている方は、骨切り術で今後の人生が変わるかもしれません。漁業や酪農業のような身体を積極的に動かす職業の方にとっても良い手術になり得ます。

 また、人工関節は技術の進歩とともに耐久性は向上していますが、その寿命は一般的に20〜30年程度と考えられていますので、若い患者さんにも骨切り術が勧められます。

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