2016年6月1日水曜日
虫刺され
ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長
虫刺されについて教えてください。
ハイキングやキャンプなど屋外で活動する機会の多くなる季節です。自然に足を踏み入れる際、気を付けなければならないのは虫刺されです。刺されるとかゆみや痛みに悩まされるだけでなく、ときには命に関わる感染症にかかることもあります。
蚊やブユは代表的な吸血性昆虫ですが、ヌカカをご存知の方は意外と少ないのではないでしょうか。ヌカカは、体長1〜2ミリと非常に小さい吸血性昆虫です。小さいゆえに無警戒になりがちですが、一度に複数の箇所を刺され、後になって小さな腫れがあちこちにできていることに気付くケースが多いです。かゆみが強く、特にアレルギー体質の人は、赤く腫れて熱を持ち、腕や脚がむくむこともあります。
春から夏はマダニの活動も活発になる時期です。マダニが怖いのは、いくつかの感染症を媒介することです。日本紅斑熱、ライム病のほか、致死率が高いのは重症熱性血小板減少症候群です。西日本中心に死亡例が報告されています。しかしながら北海道でも原因となるウイルスを持ったマダニが確認されており注意が必要です。予防ワクチンも治療薬もないので、まずはかまれないように気を付けましょう。
5〜6月はチャドクガの幼虫にも注意が必要です。刺されると赤いブツブツができて、かゆみも強いです。毛虫そのものに接触しなくても、風に乗って飛んできた微細な毒針毛に触れただけでも発症します。このため、毛虫が原因と気付かないことも多いです。
虫刺されの予防策とケア、治療について教えてください。
まず服装に気を付けてください。長袖を着る、ズボンの裾を靴下で覆うなど、できるだけ肌を露出しない工夫をすることです。市販の虫よけスプレーなども有効です。
もしマダニにかまれてしまった場合は、無理に取らないこと。はがそうとすると、体の一部がちぎれて残ったりするので、形成外科、皮膚科での処置が必要です。
どの虫であれ、刺されてもかかないことが大切です。かきむしると傷口から細菌に感染したり、炎症が長引いて色素沈着を起こしたりします。また、放置すると皮膚が硬い状態になり、強いかゆみが出る結節性痒疹(ようしん)につながる例もありますので、たかが虫刺されと侮らず、早めに皮膚科を受診しましょう。
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