2016年5月25日水曜日

舌突出癖と筋機能療法


ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 院長

舌突出癖とはどのようなものですか。
 お子さんの成長とともに、歯とその歯並びは大きく変化します。一般的に歯並びが悪くなる原因を大きく分けると遺伝的な要因と後天的な要因とがあります。遺伝的な要因としては、歯の大きさや形、顎の骨の発育の仕方など、後天的な要因には、乳歯を早期に失ってしまった場合や、逆に永久歯が生えてきているにもかかわらず、乳歯やその歯根が残ってしまっている場合などがあります。そのほか、生活上の習慣や癖も歯列の乱れやかみ合わせを悪くする原因となります。その一つが「舌突出癖」です。
 舌突出癖とは、歯を舌で裏側から押したり、上下の前歯の間に舌を挟んだりする舌の癖のことです。歯ならびは、口のまわりや頬の筋肉の外側から押す力と舌が内側から押す力のつり合った位置に安定します。舌の悪い癖はこのバランスを乱すため、例えば、前歯のすき間に舌を入れることで、前歯の成長が妨げられ、上の歯が短くて下の歯に届かず、かみ合せようとしてもすき間ができる開咬(かいこう)を引き起こしたりします。歯は余計に力がかかった方向へと徐々に移動していくため、舌の力で前歯が出てしまうなど、開咬以外にもさまざまな不正咬合の原因となるのです。
 舌突出癖を放置すると悪化して治療が難しくなり、発音障害や顔の表情が不自然になるなどの問題が起こります。永久歯全体のかみ合わせの異常につながる恐れもあります。

舌突出癖の改善について教えてください。
 舌の癖の改善には、舌の動かし方などを訓練する筋機能療法(MFT)があります。舌や口唇などの口腔周囲筋をトレーニングするプログラムで、咀嚼時や嚥下時、発音時の舌の位置の改善や呼吸をはじめとした口腔機能の改善効果が期待できます。舌突出癖があると、歯列矯正が順調に進まなかったり、矯正治療後に後戻りすることがあるため、矯正治療を成功させるためにMFTの併用が必要なケースも多いです。また、MFTのみで不正咬合がある程度改善する場合もあります。
 普段から口を開けていることが多い、舌を出すなど食べ方がおかしい、きちんと発音できない言葉があるといった時には、舌突出癖など口の中に何らかの問題があるかもしれません。気になる点については、ぜひ矯正歯科医に相談してください。

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