2016年6月22日水曜日

裂肛(れっこう)


ゲスト/札幌いしやまクリニック 西尾 昭彦 院長

裂肛とはどのような病気ですか。
 痔とは、肛門およびその周辺に起こる病気の総称です。肛門疾患で多いのは、痔核(じかく)、裂肛、痔瘻(じろう)の3つで、外来の約8割を占めます。痔核はイボ痔、裂肛は切れ痔、痔瘻はあな痔とも呼ばれます。
 便秘気味の若い女性に多くみられるのが、肛門内側の皮膚(肛門上皮)が切れる裂肛です。痔の中でも痛い病気の代表です。症状は排便時の痛みが主で、出血はないか、あっても少量です。一度裂けた傷は排便の度に延ばされるため治りにくく、痛みが続くようになります。痛みが嫌で排便を避けるようになると、便がますます硬くなり、症状を悪化させるという悪循環が生じます。
 繰り返し切れて慢性化すると、傷が深くえぐれて潰瘍化していきます。炎症性の肛門ポリープと呼ばれる突起物ができたり、傷の縁の皮膚が盛り上がって肛門が狭くなったりして、排便時の苦痛が増します。トイレの中で気が遠くなるという患者さんもいるほどです。

裂肛の治療について教えてください。
 裂肛の治療は、便を軟らかくして排便を楽にする内服薬や、排便時の痛みを抑えるための塗り薬、肛門に注入する座剤、軟こうなどの外用薬が中心です。
 傷の治療を行いながら、生活習慣を改善して便通を整えることも裂肛治療では大切です。朝食をきちんと取る、水分や食物繊維を十分に取る、便意を我慢しない、適度な運動をするなど、便秘を防ぎ、硬過ぎず軟らか過ぎない“質の良い便”を出す生活を心掛けてください。
 傷が深い、肛門が狭いなどの慢性化した裂肛になると、薬などの保存治療では治らず、外科治療が必要になります。肛門周囲の痛みだけが取れる硬膜外麻酔をして、硬く狭くなった肛門の括約筋を正常な状態になるまでマッサージをして引き延ばす治療です。マッサージの時間は10秒程度で、入院の必要もなく、翌日の排便から痛みがなくなるケースがほとんどです。
 さらに重症例になると、2~3日入院してマッサージに加えて潰瘍やポリープの切除が必要な場合もあります。
 恥ずかしさから受診をためらわれている方も多いようですが、切らずにすむ治療により、痛みのない快適な生活を取り戻せることが多いことを知ってほしいと思います。

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