2017年6月21日水曜日
帯状疱疹
ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長
帯状疱疹とはどのような病気ですか。
現在では定期予防接種の一つとなっていますが、水ぼうそうに子供の頃かかったことがある人は多いと思います。水ぼうそうが治っても、その原因ウイルスは体内から消えることはなく体の神経節に残って潜伏しています。疲れやストレスなどで免疫力が低下すると、その潜伏していたウイルスが再び活動を開始し、痛みや発赤、水ぶくれを伴った皮疹が出現します。これが「帯状疱疹」です。主に帯状に皮疹が出ることが多いので「帯状疱疹」と言われていますが、顔や頭に出現した場合など、一概に帯状とは言えないことも多く判断が難しく注意が必要です。日常よく見られる皮膚疾患の一つですが、老若男女だれでもかかる可能性があります。また加齢により免疫力が低下するため、高齢化社会の進行に伴い患者数は増加傾向にあります。
通常は前駆症状として、体の左右どちらか一方に局所的にチクチク、ピリピリとした痛みや違和感が出現し、その後しばらくしてその部位に、赤くむくんだ水ぶくれを伴う皮疹が現れてきます。このような皮疹は体の神経の走行に沿って現れます。顔や頭に出現すると、眼球の角膜炎やめまい、顔面神経の麻痺を起こすこともあり注意が必要です。
皮疹や痛みなどの症状の程度が強く、神経への障害が大きかった場合、皮膚症状が治まった後も後遺症として痛みが残ってしまうことがあります。これを「帯状疱疹後神経痛」といいます。60歳以上の高齢者に起こりやすい傾向があります。また帯状疱疹の治療が速やかに行われなかった場合に生じやすいとされています。
治療について教えてください。
治療は、帯状疱疹の原因であるヘルペスウイルスの増殖を抑える薬(抗ウイルス薬)を使用します。内服薬の使用が一般的です。通常1週間内服します。飲み始めて2~3日で効果が現れてきます。痛みや皮疹などの皮膚症状は、治療開始後1~2週間をピークに徐々に快方に向かいます。高齢者は治るのに時間がかかる傾向があります。
皮疹部の保護や細菌などによる二次感染を防ぐために塗り薬を、痛みと炎症を抑えるために消炎鎮痛薬を併用することが多いです。また、痛みが激しいなど症状が重篤の場合、入院治療が必要になることもあります。
帯状疱疹後神経痛を防ぐためにも、発症後できるだけ早期の治療が望まれます。帯状疱疹を疑ったら早めに医療機関を受診することが大切です。
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