ゲスト/医療法人社団 正心会 岡本病院 岡本 呉賦 院長
統合失調症とその治療について教えてください。
統合失調症は、考えや気持ちがまとまらなくなる状態が続き、幻覚や妄想といった症状を伴う精神疾患です。厚生労働省の推計では、国内の患者数は約71万人。発症頻度は100人に1人弱で、決して特殊な病気ではありません。
症状を抑える抗精神病薬の服用が治療の重要な柱です。現在の主流は1990年代以降登場した「第2世代(非定型)」と呼ばれる薬です。以前の薬「第1世代(定型)」より手の震え、筋肉の硬直などの副作用が少ないという特徴があります。そのほか、抗不安薬や睡眠薬、抗パーキンソン病薬など別の種類の薬を、症状の調整のために併用するケースもあります。ただ、一般的に統合失調症の治療は、薬を何種類も併用するのではなくなるべく少ない種類・量にとどめることが望ましいとされています。
抗精神病薬には同じ成分の薬でも異なった剤形があります。従来、飲み薬による投与が一般的でしたが、最近はより一歩進んだ治療として薬の効果が長く続く注射剤が注目されています。
薬の効果が長く続く注射剤とはどのようなものですか。
持続性注射剤といい、1回の注射で2〜4週間効果が持続します。注射剤と聞くと、飲み薬より古い治療法というイメージを持たれる方もいるかもしれません。確かに、以前は特に症状の激しい急性期など、効果を早く得たいときや内服が難しいときに半ば強制的に注射剤を用いるケースなどもありましたが、持続性注射剤はそういった使い方の注射剤とは異なります。
持続性注射剤を使うメリットとしては、よく薬を飲み忘れる人や毎日の服薬にわずらわしさを感じている人の助けになります。また、飲み薬の種類を減らせるケースが多く、私が診ている患者さんでは、持続性注射剤1剤だけで体調を保っている方も珍しくありません。結果、副作用が少なくなり精神症状が安定することも多く、患者さんの生活の質を高め、社会復帰を後押しする効果もあるといえます。
持続性注射剤の適正な使い方が広がり、有効な治療の選択肢となることを期待していますが、必ずしも全員に効くわけではありません。従来のような服薬中心の治療が適した患者さんもいます。医師とコミュニケーションをとりながら、自分に最適な薬物療法を見つけることが何よりも重要です。