<骨粗しょう症について教えてください>
骨の組織では、古い骨を壊して吸収する働きと、吸収された場所に新しい骨を形成する働きが繰り返される「骨代謝」が行われています。骨粗しょう症は、骨代謝のバランスが崩れて骨がもろくなる病気です。
自覚症状がないまま進行し、高齢になって骨折して初めて気付くケースが多いです。国内の患者数は推計1280万人。約8割を女性が占めますが、男性も増加傾向にあります。女性は50歳前後で閉経を迎えると、骨を壊して吸収する細胞の働きを抑える女性ホルモンの分泌が急減し、骨密度が大きく低下します。骨粗しょう症が女性に多いのはこのためです。
手首の骨や背骨、太ももの付け根の骨〈大腿骨(だいたいこつ)〉で骨折が生じやすく、特に高齢で骨折すると、寝たきりになる事例も少なくないです。また、骨粗しょう症の人は、一度骨折すると、次々と骨折を起こす「ドミノ骨折」に陥りやすいので注意が必要です。
背中が丸くなったり、身長が縮んだりするのは、老化によるものと思われがちですが、骨粗しょう症による「いつの間にか骨折」が疑われるポイントです。
<治療や予防について教えてください>
診断は、2種類のエックス線を背骨や大腿骨に当てて骨密度を測る検査や、血液検査で骨代謝の働きをみる骨代謝マーカーなどで判断します。
治療の中心は薬物療法です。代表的な薬は「骨代謝を調整する薬」「骨の吸収を抑える薬」で、個々の患者さんの症状や生活状況などに合わせて適切な薬を選びます。近年は、週に1回や年に1回の投薬で済む、長期間効果の持続する薬も登場し、患者さんにとってより使いやすくなっています。自己判断で薬を中断してしまうと良い治療効果が望めないばかりか、かえって症状が悪化する場合もあり、いかに根気よく薬物療法を継続できるかが非常に重要です。
予防には、カルシウムやビタミンD、ビタミンKを多く含む食事をとり、散歩やウォーキングなどの適度な運動、体内でビタミンDが生成される日光浴などは、一定の効果があります。
骨粗しょう症は骨折、寝たきりにつながり、健康寿命を縮める引き金になりかねません。40〜50歳ごろから定期的に検査を受け、現在の自分の骨の状態を知っておくことが大切です。そして、継続的に予防や治療に取り組み、骨の健康を守っていきましょう。
医療法人 知仁会
八木整形外科病院
小野寺 純 医師