2015年3月18日水曜日
痔瘻(じろう)
ゲスト/札幌いしやまクリニック 石山 元太郎 理事長
痔瘻とはどのような病気ですか。
肛門周囲に痔瘻管と呼ばれる細菌のトンネルができる痔瘻は、肛門疾患の中でも厄介な病気の一つです。痔核(いぼ痔)に次いで多い肛門疾患で、当院の外来患者の約15%を占めます。男性に多いのが特徴で、その割合は女性の5〜6倍といわれています。痔核や裂肛(切れ痔)は症状がかなり進行しない限り手術は行いませんが、痔瘻はいったんできてしまえば、ほとんどの場合手術しないと完治しません。
肛門から約2センチ入った部位には、肛門小窩(しょうか)というくぼみがあり、肛門腺という分泌組織につながっています。下痢を繰り返したり、体調を崩して抵抗力が弱まったりすると、肛門小窩から入った便中の細菌が肛門腺で炎症を起こし、これが広がって肛門周囲に膿(うみ)のたまりをつくることがあります。これを肛門周囲膿瘍(のうよう)といいます。このような状態になると、肛門周囲が腫れて、熱をもって激しく痛みます。膿瘍が破れて膿が出ることもあります。
放置すると、肛門小窩と膿の出口を結ぶトンネルが形成されます。この状態が痔瘻です。また、膿瘍を繰り返しているうちに、トンネルが枝分かれし、アリの巣のように深く、複雑な痔瘻へと進行していく場合もあります。
頻度は少ないですが、痔瘻は完治させずに放置しておくと、痔瘻がんになるケースもあります。肛門部に違和感を感じたら、早めに専門医を受診することが重要です。
痔瘻の治療について教えてください。
根本的に治すには手術が必要です。この際、不用意に肛門の筋肉を損傷すると、肛門の変形や機能低下を来す恐れがあります。そのため、痔瘻の手術は痔の手術の中で最も難しいとされ、特に深部の複雑な痔瘻は複数回の手術が必要になることもあります。
長期の入院が難しい場合は、シートン法と呼ばれる治療法によって外来通院で治療することも可能です。シートン法は、麻酔下でゴムひもを痔瘻管に通し、生体の異物反応を利用することで、ゴムとともに痔瘻管を少しずつ体の外へ押し出していくという治療法です。肛門の変形・機能低下のリスクが低い、再発率が低いなどいろいろな長所がありますが、治癒まで数カ月を要するため、お尻にゴムひもを装着したまま生活しなければならないという短所もあります。
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