2017年9月20日水曜日
子どものおしりの病気
ゲスト/札幌いしやま病院 河野 由紀子 医師
肛門科を受診する子どもの比較的よくみられる病気について教えてください。
新生児から乳児期によくみられるのが、おしり(肛門)の周囲の皮膚炎です。オムツの部位に一致して赤みや湿疹、ただれが生じます(オムツかぶれ)。尿や便に含まれるアンモニアや酵素などが原因となって起こる炎症です。対策としては、オムツを長時間つけたままにせず、頻繁(ひんぱん)に交換して清潔を保つことが基本です。炎症部位はこすったりしないよう、ぬるま湯に浸したコットンなどで汚れを取り除きます。それでも症状が治らない時は専門医に診てもらうのがいいでしょう。
痔(じ)は大人の病気と思われがちですが、実は子どもの痔も珍しくありません。0歳から幼稚園・小学校低学年の時期までによく見られるのが裂肛(切れ痔)で、特に女児に多い傾向があります。排便習慣が確立していない子どもの場合、入園や入学で環境が変化すると自宅以外でトイレを我慢してしまい、便秘がちとなって硬い便がおしりを傷つけます。また、この年代は食事の好き嫌いが顕著になるので、食物繊維の摂取不足からも便秘になりやすいです。裂肛になり排便時に痛むと、さらに排便を我慢するようになり、便が硬くなって、よりおしりを傷つけやすくなる悪循環に陥ってしまいます。
裂肛の治療は、座薬や軟こうで痛みを和らげながら、根本の原因である便秘の解消を図るのがポイントになります。野菜や海藻、寒天など繊維質の多い食材を取ること、朝起きて、朝食を取り、トイレに行くという生活のリズムを作ることなど、生活習慣の見直しをアドバイスしていきます。便秘の改善のために下剤を処方する場合もありますが、おなか(腸)に刺激を与えずに便性を整える薬から用います。
生後1カ月から1歳までの乳児、特に男児に多いのが乳児痔瘻(じろう)です。肛門の内側から入った細菌が感染を起こし、肛門周囲の皮膚の下にうみがたまります。症状は肛門周辺の左右どちらかの側方が、赤く腫れて痛むなどです。大人の痔瘻は手術が必要ですが、乳児は成長とともに自然に治るケースが多く、うみを抜く処置をすれば痛みはなくなります。
肛門科と聞くと、手術されるのか不安で、子どもを受診させるのをためらう人もいますが、子どもの痔の検査・治療は「手術をしない」「痛くない」ものがほとんどです(成人の検査・治療もほぼ同様です)。子どものおしりのことで悩んだら、気軽に相談してください。
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