2017年7月5日水曜日

オーラル・フレイル


ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎院長

最近「オーラル・フレイル」という言葉を耳にしますが、どういう意味なのでしょうか。
 「人は足から老いる」とよくいわれますが、最近では「人は口から老いる」ともいわれるようになってきました。「フレイル」とは「虚弱」を意味します。滑舌の悪さや食べこぼし、飲み物にむせるといった口周りのトラブルが、実は高齢者の体が弱っていく最も早いサインであり、そうした不調をまとめて「オーラル・フレイル=口腔機能の虚弱・低下」と呼んでいます。日本歯科医師会では、全身の虚弱を予防するために、できるだけ早い段階でオーラル・フレイルに対処することを国民運動にしようと提唱しています。
 歯・口の健康状態が悪いと、かむ力や舌の動きも悪くなり、食べ物をおいしく味わえなくなります。また、滑舌が悪くなったり、口もとの「見た目」に自信が持てなくなったりすると、家に閉じこもりがちになり、さらなる老化につながるケースもあります。
 最近の研究では、「残っている歯の本数が多いこと」や「歯がなくなったら、入れ歯やブリッジなどの義歯治療を行うこと」が、認知症発症リスクや転倒リスクを減らすのに関連することが明らかになっています。また、日本人の死亡原因では肺炎が増え、第3位となっていますが、食べ物やだ液が誤って気管から入って起きる「誤嚥性肺炎」にもオーラル・フレイルが関与しているといわれています。口腔の健康が、全身の健康と寿命に大きく影響していることが分かっているのです。

オーラル・フレイルを予防するにはどうしたらいいですか。
 オーラル・フレイルのはじまりは、硬いものが食べにくい、液体でむせる、口が乾くなど、ほんのささいな症状です。自分がしっかり食べ物をかめているか、また、食卓を囲む時、家族にオーラル・フレイルの兆候がみられていないか、注意してみることです。
 歯や歯茎に異常がなくても、半年〜1年に一度は歯科医院で定期検診を受けることも重要です。かかりつけの歯科医であれば、患者さんの歯や歯茎だけでなく、口腔機能の変化にもすぐに気付くはずです。軽微な症状のうちに対処すれば、元に戻したり、機能を維持したりできる可能性は高いです。
 オーラル・フレイルの研究は現在も進んでいますので、今後も注目してみてください。しっかりかみ、しっかり食べ、しっかり動き、しっかり社会参加して、いつまでも健康に長生きしましょう。

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