[下血と血便の違いについて教えてください。
また、それらの原因となる病気にはどのようなものがありますか]
胃や腸から出血した血液の色は、時間の経過とともに赤から黒へと変化します。米国では肛門から遠い胃などからの出血による黒い便を下血と呼び、肛門に近い部位からの出血による赤い便を血便と呼んで明確に区別しています。
日本でも専門書では同様に定義していますが、下血を肛門からの血液排出の総称として使用することもあります。医師は下血や血便に対して、色や量、腹痛や下痢の有無などを考慮して鑑別診断を行います。黒くてタールのような便の場合、「胃・十二指腸潰瘍」や「胃がん」が疑われます。また、肝硬変を患っている人では「食道静脈瘤(りゅう)破裂」も考えられます。真っ赤な血液の場合は「痔(じ)の出血」が多いですが、断定はできません。「大腸がん」は肛門に近い場合に痔と似た出血が起こることもあり、肛門から遠い場合は便と混じった黒っぽい血液となります。ただし、多量に出血することは比較的少なく、気づかないことも多いです。大腸がんは初期段階では症状がほとんどなく、進行すると残便感や膨満感が現れます。
「虚血性腸炎」は比較的頻度の高い疾患で、急に強い腹痛と数回の下痢が起こった後に出血が始まります。初日は重い症状がありますが、通常数日の腸管安静で治癒します。「潰瘍性大腸炎」は若年者に多く見られ、下痢とともに粘液混じりの血便が毎日のように繰り返されることが多く、診断されれば長期の治療が必要です。他にも下血や血便の原因にはさまざまな病気があります。
[下血や血便があった場合はどうしたらいいですか]
下血・血便について緊急性の有無や病気の重症度はさまざまで、問診だけでは確定診断はできません。緊急性については、回数と量が重要で、痛みがなくても1日に何度も繰り返し出血する場合は、色に関係なく緊急で受診する必要があります。回数が増えるごとに体内の血液を失い、血圧が下がって失神する可能性もあります。
大量出血ではなくても自己判断はせずに受診することが望ましいです。黒色便、特にタールのような便の場合は、胃などに治療が必要な病気があるケースが少なくないので、早めに胃内視鏡検査を受けてください。また、血便は痔の出血だろうと思っても、大腸がんの兆候である可能性もあるため、大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。
福住内科クリニック
佐藤 康裕 院長