2023年6月1日木曜日

アルコール依存症【前編】

[アルコール依存症について教えてください]

 アルコール依存症は、お酒の飲み過ぎで問題が起こっているのに、自分ではお酒の飲む量や時間、状況などをコントロールできなくなった状態をいいます。「今日は1杯だけ」と決めても、気がつくと何杯も飲んでいたり、飲んでは寝、目覚めたら飲むを繰り返す「連続飲酒」をするのが典型的な行動です。

 アルコールは脳に心地よさを与える神経回路に働きます。習慣的な飲酒が続くと以前の量では足りなくなり、徐々に酒量や頻度が増えても気づかず、抜け出せなくなる悪循環が起こります。厚生労働省は、1日あたりの適正な飲酒量の目安を「純アルコールで1日平均20グラムほど」としています。ビールなら500ミリリットル、日本酒なら1合が目安です。3倍の1日60グラム以上を取ると「多量飲酒」となり、依存症のリスクが高まります。

 過剰に飲酒する生活が続くと、アルコールを代謝する肝臓を中心として、体のさまざまな部分で異常や障害が起こります。例えば、脂肪肝や肝炎、肝硬変、心筋症、逆流性食道炎、糖尿病、認知症などが挙げられます。また、アルコール依存症とうつ病、不安障害の合併も頻度が高く、お酒に頼る生活が自殺のリスクを高めることも明らかになっています。お酒関連の問題では、生活が全般的に乱れるため、家庭でも職場でも金銭や人間関係のトラブルが起こりやすくなります。離婚や失業につながる恐れや、飲酒運転による事故、暴行・窃盗などの犯罪に発展するケースもあり、放置すれば問題は拡大し、より深刻になっていきます。アルコール依存症患者の平均寿命は52〜54歳と報告されており、一般の平均寿命より約30年も短いです。

 意志が弱いからお酒をやめられない──アルコール依存症について一番よくある誤解です。アルコール依存症は、お酒を飲む人であれば誰もがかかり得る身近な病気で、意志の強さや性格とはまったく関係ありません。アルコール依存症からの回復には、専門医療機関での治療が必要です。「自分の意志ではやめられない」からこそ治療や助けが必要なのです。「一度、依存症になると治らない」というのも大きな誤解です。軽症の人から重症の人まで、それぞれに合った治療があり、適切なプログラムによる治療を続ければ、回復できる病気であることを知ってほしいです。


 次週は、アルコール依存症の治療について詳しくお話しします。
【後編のWEB版は6月8日(木)の掲載予定です。】


医療法人北仁会 いしばし病院
畠上 大樹 副院長

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