[高齢発症の関節リウマチについて教えてください]
免疫機能の異常が原因で関節に炎症が起き、放置すると軟骨や骨の変形が進む病気が関節リウマチです。関節リウマチは若年から高齢者まで幅広い年齢に発症する病気ですが、近年、日本人の平均寿命が延びて高齢者が増えるにつれ、発症年齢及び患者さん全体の年齢層も徐々に高齢化しています。
日本リウマチ友の会の調査(2020年リウマチ白書)では、60歳以上で発症するケースが患者さん全体の約17%を占めます。また、60歳以上が患者さん全体の70%を超える割合を占めるようになっています。60歳以上の高齢発症は一般に、60歳未満の若年発症と比較して男性の比率が高いです。突然の発熱や多発性の関節炎が出現するなど疾患活動性が高く、関節破壊が進行しやすいケースが多いとされています。また、手や手指関節に加え、肩や膝などの大きい関節の関節炎が多いのも特徴と考えられます。
高齢発症の関節リウマチは、高齢者に好発するリウマチ性多発筋痛症やRS3PE症候群などの病気と同様の症状を呈するため、診断に苦慮することがあります。そのため、問診や採血、レントゲンや関節エコーなどの画像検査から、慎重な鑑別診断を行います。
[高齢者の関節リウマチ診療のポイントを教えてください]
関節リウマチの治療目標は「寛解」です。これは高齢発症も若年発症も変わりません。高齢者はすでに循環器疾患、脳卒中、慢性腎臓病、肺疾患などの持病を持っていることが多く、関節リウマチ治療の主軸であるメトトレキサートや生物学的製剤が十分に使用できない場合があります。また、高齢発症の患者さんであれ、若年発症で高齢者になられた関節リウマチ患者さんであれ、高齢者はフレイルという虚弱状態に陥りやすく、治療しなければ、身体機能の低下で寝たきりや要介護の原因になったり、命に関わる場合もあります。
このように、高齢になるほど個人差が大きく、高齢者の関節リウマチ診療は一律の目標を設定することは難しいです。個々の患者さんが希望される治療内容や社会的背景はさまざまです。身体機能や生活機能がどの程度維持されているのか、仕事や家事を継続できているか、意欲の低下はないか、老老介護を行っているかなど、個々に応じた治療目標を設定することが重要です。
医療法人社団 佐川昭リウマチクリニック
佐川 昭 理事長