[支援ロボットを使う人工膝関節置換術について教えてください]
膝（ひざ）の関節の軟骨がすり減ったり、炎症が起きたりして出る膝の痛み。悪化して日常生活に支障が出たら、人工膝関節へ置き換える手術が治療の選択肢に入ります。2019年、支援ロボットを使う人工膝関節置換術に公的医療保険が適用され、ロボットを導入する病院が増えてきました。
支援ロボットは、加齢に伴う変形性膝関節症や、関節リウマチによる膝の変形などで傷ついた関節を、金属やポリエチレン製の人工関節に置き換える手術に使います。支援ロボットは、赤外線カメラで膝関節の形状を読み取り、画面上で骨を3次元化します。足を曲げ伸ばしした際の靭帯（じんたい）の動きなども分析します。医師が、3次元画像やデータを基に人工関節を埋め込む位置を決めると、骨を削る範囲や深さが画面に表示されます。ちょうど車のカーナビと同じ仕組みです。
正しい位置に人工関節を設置するためには、骨を削る量や角度は医師の経験や技術、感覚に頼る部分があります。支援ロボットは、医師が計画した骨切り位置まで正確に誘導してくれます。また、医師が骨を削る際、設定した深さに達すると自動停止する機能も併せ持っています。これにより骨を削る範囲が深さ1ミリ、角度1度以下の誤差に抑えられます。このため通常の手技と同様の感覚で、より精度と安全性の高い安定した手術を可能にしてくれます。
[支援ロボットを使う手術は、患者にとってどんなメリットがありますか]
支援ロボットを用いることで、これまで医師の経験や感覚に委ねられていた部分が数値として評価できるようになり、より精度と安全性が高まり、正確な手術ができるようになりました。事前の計画通り正確に手術できるため、従来の手術と比較して出血量の減少や痛みの低減、術後入院期間の短縮が見込めます。また、正確な手術ができれば、良好な手術成績が期待でき、患者さんの満足度向上にもつながります。
超高齢化社会の到来で、変形性膝関節症や関節リウマチの患者さんが増えています。膝関節の痛みやトラブルは生活の質に直結し、健康寿命に大きく影響します。早期に受診し、適切な治療を受けることがとても重要です。ロボット支援下手術は、多様な治療法の選択肢の中でも、患者さんの負担を軽減する可能性にあふれた有用な手術法の一つとして期待されます。
医療法人知仁会 八木整形外科病院
八木 知徳 理事長・院長
