<ライターコラム>加齢などにより筋肉量が減り、全身の筋力が低下した状態を「サルコペニア」といいます。2016年からは「疾患」に位置付けられ注目を集めています。進行すると、歩く、立ち上がるなどの日常生活の基本動作に支障を来し、転倒や骨折のリスクが高まります。
また、生活習慣病などさまざまな病気につながることもあります。長引くコロナ禍で、外出機会が減り、活動量・運動量が減ったと感じている高齢者は特に注意が必要です。筋肉量の減少で高まるさまざまなリスク
サルコペニアは、加齢や病気が原因で筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下している状態のことをいいます。サルコペニアになると、体のバランスを保つ機能が衰えて転倒しやすくなり、骨折の危険性が高まります。また、全身の筋肉量が減り、“霜降り肉”のように脂肪が筋肉の中に入り込んでいる状態は「サルコペニア肥満」といい、糖尿病や高血圧などの生活習慣病のリスクが高くなることが分かっています。さらに、喉の筋肉が痩せ細ると、食べ物を飲み込む嚥下(えんげ)機能が低下することがあり、栄養状態の悪化で免疫が低下すると感染症にかかりやすくなります。サルコペニアは、要介護になる一歩手前の状態「フレイル(虚弱)」の一因になるだけでなく、がんや心血管の病気になったとき、サルコペニアだと死亡リスクが高いことや、認知機能の低下との関連も指摘されています。
日本サルコペニア・フレイル学会の診断基準では、▶︎握力が男性28キロ未満、女性18キロ未満 ▶︎椅子から立ったり座ったりを5回繰り返すのに12秒以上かかる──のどちらかの場合、サルコペニアの疑いがあるとしています。また、普段の生活を振り返り、つまづきやすい、歩幅が狭くなった、立っているのがつらい、疲れやすい、痩せ型、信号が青の間に横断歩道を渡り切れない、などに当てはまる人は、サルコペニアになりやすいとされています。
サルコペニアかも?と思ったら、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。サルコペニアやフレイルを専門に診療する外来を設けている医療機関もあります。
適切な対策で予防が期待できます
食事の量やバランスが悪くて栄養が十分でないことや、体を動かさずに運動量が少ない生活習慣などを背景として筋肉の量が減り、そのためにさらに運動量が減るという悪循環の結果、サルコペニアはより進行してしまいます。 予防には適切な食事と運動で筋肉量を増やすことが重要です。筋肉維持のためには、なるべく早い段階から積極的に対策に取り組むことも大切。40~50代から予防を意識した生活を心掛けてください。 食事は筋肉をつくるたんぱく質をしっかりと取りましょう。肉や魚、牛乳などの動物性たんぱく質と豆類などの植物性たんぱく質のバランスも大切です。ビタミンDを一緒に摂取すると、筋肉量がより効率的に増えます。 運動は、特に下半身の筋トレが大切です。スクワットや踏み台昇降運動などが有効で、自宅で1日5分、週2程度行うだけでも効果があります。心地よく疲れる程度に行うのがポイントです。「少し頑張る」を続けることで、次第に筋肉が鍛えられ、将来への蓄えになるはずです。