2023年8月10日木曜日

ヒスタミン食中毒

[ヒスタミン食中毒について教えてください]

 ヒスタミン食中毒は、ヒスタミンが高濃度に蓄積された食品、特に魚類及びその加工品を食べることにより発症するアレルギー様(食物アレルギーの症状とよく似た)食中毒です。

 ヒスタミンは、食品中に含まれるアミノ酸の一種であるヒスチジンに、ヒスタミン産生菌と呼ばれる細菌の持つ酵素が作用することでつくられます。

例えば、ヒスチジンが多く含まれる食品を常温に放置するなどの不適切な管理をすると、食品中のヒスタミン産生菌が増殖し、ヒスタミンが多く生成されます。ヒスタミン食中毒の原因となる主な食品は、ヒスチジンを多く含む赤身魚(マグロ、ブリ、サンマ、サバ、イワシなど)やその加工品です。また、ワインやチーズなどの発酵食品も原因となる場合があります。

 食後1時間ぐらいで顔面、特に口の周りや耳たぶが赤くなる、じんましん、頭痛、嘔吐(おうと)、下痢などの症状が出ます。症状は比較的軽く、次第に回復することがほとんどですが、症状が強い場合は治療が必要なこともあります。まれに重症化しますが、これまでに死亡事例は報告されていません。

[治療と予防について教えてください]

 治療は、抗ヒスタミン薬の投与などで症状を緩和させます。下痢や嘔吐などの症状が出ている場合には、それぞれに対症療法を行います。その後、水分補給や安静で通常は24時間以内に回復に向かいます。

 ヒスタミンは熱に強く、加熱調理しても分解されません。また、冷凍する前にヒスタミンが生成、増殖していると食中毒が発生する恐れがあります。このように、ヒスタミンは調理加工工程で除去できず、一度生成されると食中毒を防ぐことはできません。家庭での予防としては、ヒスタミンを生成させないようにするため、原材料から最終製品の喫食までの一貫した温度管理が重要です。

 魚であれば、新鮮なものを購入すること。室温での放置を避け、保存するときは冷凍し、長時間の冷蔵は行わないようにしましょう。切り身やすり身を作るときには、ヒスタミン生成菌の二次汚染を避けるために十分な衛生管理の下で行うのが望ましいです。フライや照り焼きなど加熱する場合でも古くなったものや怪しいと思ったものは使わないことです。

 食中毒が多くなる夏の暑い時季は、特にヒスタミン食中毒に注意してください。


医療法人社団慈昂会 琴似駅前内科クリニック
髙柳 典弘 院長



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