琴似駅前内科クリニック 髙柳 典弘 院長
健康長寿を支える生活習慣の中で運動がもたらす効果について教えてください
座っている時間を減らして毎日散歩をするだけで、何年間も寿命を延ばせるかもしれない──。米国・ハーバード大学の研究チームが、中年期の成人11万人以上を30年間追跡した研究で、その可能性を示しました。
研究の詳細は、30年間(中央値26年)の追跡中に4万7596人が死亡し、そのデータを分析した結果、運動時間と死亡リスクとの間に統計的に偶然ではない関連がありました。具体的には、中強度の運動が週に0〜19分の人に比べて、150〜224分の人は死亡リスクが低く、225〜299分の人はさらに死亡リスクが低いことが判明しました。また、高強度の運動が週に0分の人に比べて、75~149分の人は死亡リスクが低くなることや、心臓血管病による死亡と他の原因による死亡に分けて分析すると、死亡リスクはどちらが原因の場合でも運動によって低下することも分かりました。さらに多くの運動をしていた人は、死亡リスクの低下幅は少し大きくなり、一方、運動時間が比較的短くても、死亡リスクは低下幅はやや小さくなりますが、有意に下がっていました。身体活動時間が長いことによる心疾患のリスクなどデメリットも認められませんでした。
また、米国の身体活動に関するガイドラインでは、ウオーキングなどの中強度の運動を週に150~300分行うか、ジョギングなどの高強度運動を週に75~150分行うことを推奨しています。これらの目標を達成した人は、向こう30年間で死亡する確率が20%前後低いことが分かっています。また、ガイドライン推奨量の2~4倍の運動を続けている人は、死亡リスクがさらに数%低いことも報告されています。
軽度の運動でも全く運動をしないよりは健康に良く、重要なのは習慣的に体を動かすことです。毎日、散歩や階段昇降、家事などで身体を動かすのも良い運動習慣といえます。また、身体活動が習慣として身に付くように、自分が楽しいと思うレクリエーション活動や運動を見つけてほしいと思います。始めるのに遅すぎるということはなく、あまり活動的でない生活を続けてきたまま高齢期に入った人でも、運動量を増やすことで多くのメリットを得られます。いよいよ春を迎え、屋外でも体を動かしやすい時季になるので、ぜひこの機会に健康長寿を目指して、運動習慣を定着させましょう。