医療法人 五風会 さっぽろ香雪病院 林 千尋 (薬局長)
不眠症はどのような病気ですか
不眠症には大きく分けて3種類のタイプがあります。①寝付きが悪い「入眠障害」、②夜中に何度も目が覚める「中途覚醒」、③朝早く目が覚め、その後眠れない「早期覚醒」です。ほかに、深く眠った感覚が得られない「熟眠障害」もあります。
睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群など、ほかの原因がないのにこうした症状があり、眠くて集中できなかったり、疲労感を強く感じたりして、学校や職場、家庭などにおける日常生活に支障を来している場合、不眠症と診断されます。不眠症の治療は、睡眠薬による治療だけではありません。間違った睡眠習慣を改めることや睡眠に関する正しい知識を伝えること(睡眠衛生指導)も大切です。非薬物治療で効果がない場合など、医師が患者さんの状態をきちんと評価し、睡眠薬が必要だと診断してから薬物治療を始めます。
睡眠薬について教えてください
睡眠薬は作用時間の長さを基準にして超短時間作用型、短時間作用型、中間作用型、長時間作用型の4種類があり、不眠症のタイプに合わせて使い分けたり、組み合わせたりして処方します。
依存が生じるのでは、と睡眠薬を飲むことに抵抗を感じる方もいらっしゃると思いますが、医師の指導の下で適正に服用していれば、過度に心配する必要はありません。睡眠薬をやめる時は徐々に減量したり、作用時間の長いものに変えてやめていくなど、いくつか方法があります。
薬には「禁忌」といわれる使用上の注意事項があり、副作用などの恐れのため使用してはいけない患者さんが提示されています。2022年7月、多くの医療機関で処方されている超短時間作用型の睡眠薬「ゾルピデム酒石酸塩」「ゾピクロン」「トリアゾラム」の3剤について、禁忌の項に「本剤により睡眠随伴症状(夢遊症状など)として異常行動を発現したことがある患者」が追記されました。超短時間作用型の睡眠薬による睡眠随伴症状は、睡眠中に起き出して歩き回る、飲食する、外出する、車を運転するなどの行動をとる事がありますが、他人から見ても本人が無意識であると判別することは難しく、放置しておくと重大な事故につながる可能性があり、非常に危険です。薬剤師は服薬指導の際に、患者さんやそのご家族にそのような症状が出たことがないかを確認していますが、作用時間の短い睡眠薬を服用している方は今一度、注意してください。