ライターコラム
全身に影響を及ぼす口腔(こうくう/オーラル)の健康が注目されている中、特に高齢者の口腔機能が衰える「オーラルフレイル」予防が重要視されています。
<滑舌が悪くなる><食べこぼしや飲み物でむせる>といった口周りのトラブルは、高齢者の体が弱っていく最も早いサインです。本人や周囲がオーラルフレイルのサインに気付き、早い段階で対処することが大切です。
口の機能低下 体弱るサイン
「フレイル(虚弱)」とは、高齢になり心身の活力(筋力、認知機能、社会とのつながりなど)が低下した要介護手前の状態のことをいいます。「オーラルフレイル」とは、「口腔の虚弱」という意味で、「食べる」「会話する」といった機能の軽微な衰えのことをいいます。オーラルフレイルは、体が衰えるフレイルの最初の段階で表れやすいです。口が衰え始めることがフレイルの入り口だといわれています。
オーラルフレイルのサインは、滑舌の低下や食べこぼし、むせ、かめない食品の増加、口が乾くなど、ささいな症状であるため気付きにくいという特徴があります。この状態を放っておくと食欲が低下し、栄養不足になり、筋肉が衰えて身体が思うように動かなくなるなどの負の連鎖が起こります。そして、フレイルの状態に陥り、さらに進行すると要介護の状態になってしまいます。日本歯科医師会(日歯)によると、オーラルフレイルの人は、そうではない人に比べ、要介護認定を受けるリスクが2.35倍になるとしています。また、オーラルフレイルの状態になった時点から、3年9カ月以内に死亡するリスクは、2.09倍に増えると指摘しています。
「要介護」の状態から「健康」の状態に戻ることは困難な場合が多く、フレイルの段階で生活習慣を見直すことなどにより、健康な状態に戻ることが可能とされていますが、さらに前段階のオーラルフレイルの時点で気付き、適切な口腔ケアを行うことが生活機能の維持・改善のために重要だといわれています。
早期の気付きと対策が重要
自分の歯が20本未満の人はオーラルフレイルになりやすい傾向にあり、歯を失う大きな要因は虫歯と歯周病です。この歯科疾患やオーラルフレイルを早期に発見するためにも、「かかりつけ歯科医」を持ち、定期的に口の健康のチェックを受け、メンテナンスをしっかり続けることが何よりも重要です。また、家族や周囲の人ができるだけ高齢者と食事を共にするなどして、オーラルフレイルの兆しがないか目を配り、もし症状が出てきたら、かかりつけ歯科医に相談するよう促すことも大切です。
オーラルフレイルを防ぐには、日歯によると、舌や唇などの筋肉、顔の表情を作る筋肉を鍛えるのが大事です。例えば、口をすぼめて「うー」と言ったり、口を横に広げて「いー」と言ったりする口の体操で表情筋を鍛えられます。また、舌を左の頬の内側に強く押しつけ、指で舌の先を押さえます。抵抗するように、舌を10回押しつけ、右でも同じことをすれば舌の筋肉が鍛えられます。こういった口の体操は、食事の前に行うと効果的です。できるだけ習慣になるよう、続けてみてください。