2023年11月3日金曜日

胃がんの原因、ピロリ菌

<ピロリ菌の検査と除菌治療について教えてください>

 ほとんどの胃がんはピロリ菌の感染に起因します。ピロリ菌を除菌することで、胃がんのリスクを軽減でき、胃がんは「予防できるがん」と言われるようになっています。ピロリ菌の除菌治療は保険適用となっており、1週間の経口薬による治療です。

日本国内ではすでに1千万人以上がこの治療を受けていますが、ピロリ菌に感染する約3千万人がまだ未治療であると推計されています。

 ピロリ菌は乳幼児期に感染し、胃に定着します。高齢者は昔の不衛生な飲料水から感染し、若い世代は親からの食べ物の口移しなどで感染することが一般的です。大人になってから感染することはほぼありませんので、「一生に一度感染の有無を確認する」ことが非常に重要です。ピロリ菌の検査は尿、血液、便、呼気などで行えますが、保険診療で検査する際には内視鏡検査も行い、胃の状態を確認することが必須となっています。

 若い世代にピロリ菌の検査と除菌治療ができれば、“胃がん撲滅”にまた一歩近付きます。一部の自治体では中学生全員に無料検査を提供しており、道内でも函館市、室蘭市、北広島市などでは学校検診で尿を用いたピロリ菌の一次検査を実施しています。

<ピロリ菌を除菌した後も胃カメラを受ける必要はありますか>

 ピロリ菌の除菌後も定期的な内視鏡検査をお勧めします。除菌治療により、胃がん発症リスクは低減しますが、残念ながらゼロにはなりません。除菌後も、未感染者と比べて胃がんの発症率が高いことが分かっています。しかし、除菌しているという安心感から検診を怠ってしまう人も多く、胃がんの発見が遅れるケースもあり問題になっています。

 ピロリ菌は胃内に持続感染し、ほぼ無症状のまま何年も何十年も炎症を引き起こし続けます。炎症が続くことで、胃の粘膜が徐々に薄くなり、「萎縮性胃炎」と呼ばれる状態になります。そして、萎縮性胃炎が進行すると胃がんの発症リスクが高まります。除菌をしても胃の粘膜は元に戻らないため、除菌をした年齢が高いほど、また萎縮性胃炎が進行しているほど、除菌後の胃がん発症リスクは高くなります。

 胃がんは早期発見が重要であり、検査の中で最も診断精度の高いものは胃カメラ(胃内視鏡検査)です。中年以降は、年に一度の内視鏡検査を受けることを強くお勧めします。


福住内科クリニック
佐藤 康裕 院長



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