2023年11月23日木曜日

介護保険サービスと精神科特定疾病

<介護保険で定められている精神科特定疾病について教えてください>

 公的介護保険制度は、40歳以上の人が全員加入し、介護や支援が必要な状態になったときに所定のサービスが受けられるというものです。公的介護保険制度の被保険者は、65歳以上の「第1号被保険者」と、40歳から64歳までの「第2号被保険者」に分けられます。

第1号被保険者が要支援や要介護の認定を受けた場合、その原因を問わずいつでもサービスを受けられますが、第2号被保険者は介護が必要な心身状態になっただけでは、介護保険が適用されません。第2号被保険者が介護保険サービスを受けられるのは、「特定疾病」が原因で要介護状態となった場合のみです。

 特定疾病とは、簡単にいうと加齢に関係があって、要介護状態の原因となる病気のことです。精神科領域においては、初老期の認知症や脳血管疾患などで要支援・要介護状態になった場合に限られます。

 認知症では、失語(言語の障害)、失行(運動機能が損なわれていないにもかかわらず、動作を遂行する能力が障害されていること)、失認(感覚機能が損なわれていないにもかかわらず、対象を認識または同定できないこと)、実行機能(組織化する、計画を立てる、抽象化する、順序立てること)の障害が起こります。意識水準の低下によって起こる「せん妄」は、特定疾病の対象外です。せん妄の症状は、場所や時間が分からなくなる、睡眠リズムが崩れる、まとまりのない言動を繰り返す、注意力や思考力が低下するなどで、認知症との区別が難しい場合があります。

 大量のアルコール摂取が原因で認知症が発症することもあります。これを「アルコール性認知症」といいます。アルコールの多量摂取によって脳梗塞などの脳血管障害や栄養障害などを発症し、認知機能の衰退をもたらします。また、大量のアルコールを飲み続けることで、脳が萎縮するともいわれています。一般に認知症は高齢者に多い病気ですが、アルコール性認知症は世代に関係なく、65歳以下の若年者にも発症します。アルコール性認知症は特定疾病の対象外ですが、<アルツハイマー型〉や〈レビー小体型〉といった特定疾病に認められている他の認知症を併発するケースも少なくありません。

 脳梗塞や脳出血のような、脳の血管に異常が起こったために発症する脳血管疾患も、外傷で生じた場合には特定疾患に見なされません。

 特定疾病が原因で要介護状態となった場合は、例外として40歳から介護保険サービスを利用できますので、年齢だけで利用できないと決めつけてしまわずに、まずは精神科・心療内科の専門医に相談してみてください。 


医療法人 五風会 さっぽろ香雪病院
小澤 剛久 診療部長



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