<双極性障害について教えてください>
双極性障害は、気分が落ち込んで、気力が湧かず憂(ゆう)うつな「うつ状態」と、うつ状態とは逆に気分が高揚し、発言や行動が活発で抑制が利かなくなりがちな「そう状態」を繰り返す病気です。およそ100人に1〜1.5人の割合でかかる可能性があります。
そう状態では、症状が軽い場合、睡眠時間が短く多弁となり、意欲が増し、アイデアが次々浮かんできたりすることから、本人は「調子が良い」と感じ、周囲も「やけに元気そうだな」と思う程度で見過ごされがちです。しかし、症状が重くなると、過大な消費を続けたり、攻撃的な言動で周囲の人とトラブルになったり誇大妄想に影響されて無謀な行動をしたり、興奮状態を呈する場合もあります。また、うつ状態では、重症化すると一般の方と比べ、約15倍も自殺のリスクが高くなると指摘されています。
さまざまな依存症や不安障害など、他の精神障害を併発するケースも多いです。
<診断と治療について教えてください>
双極性障害は、初めに抑うつ状態を呈することが多く、双極性障害のうつ状態とうつ病は症状が似ているため、見分けがつきにくく、診断が難しいです。なかなか治らないうつ病と思っていたら、実は双極性障害だったというケースも少なくありません。双極性障害と診断されるまでに平均6〜9年かかっているとされています。双極性障害とうつ病は治療方針も治療に用いる薬も異なります。双極性障害の患者さんがうつ病の薬(抗うつ薬)を飲むと、症状が悪化する恐れもあります。この2つの病気をしっかりと鑑別することが大切です。
治療は薬物療法が有効です。双極性障害では気分安定薬(リチウムなど)を使い、うつ状態とそう状態の波を小さくすることが治療の目標となります。また、患者さんが病気について正しく理解し、病気を受け入れるための心理・社会的治療(認知行動療法)も重要です。双極性障害の発症メカニズムの研究も進んでおり、より有効な治療法の登場が待たれるところです。
本人が気付きにくい病気なので、周囲が「今までと様子が違う」ことに気付いたら、いち早く医療機関につなげることが大切です。継続的な治療が必要な病気ですが、元気に回復した人や症状をコントロールしながら普通に日常生活を送っている人もたくさんいます。
医療法人 耕仁会 札幌太田病院
太田 健介 院長