2023年3月9日木曜日

癖になりやすい便秘薬、なりにくい便秘薬

福住内科クリニック 佐藤 康裕 院長

便秘薬が癖になることはありますか

 大腸に強い刺激を与えることでぜん動運動を起こし、排便を促すタイプの便秘薬は「刺激性下剤」と呼ばれ、「くせになりやすい」便秘薬です。<寝る前に1回飲めば、翌朝にはすっきり出せる>とうたわれる薬や漢方便秘薬の多くは刺激性下剤であり、代表的な成分はセンナ、ダイオウなどの生薬です。

これらの成分を用いたダイエットサプリや健康茶も市販されているので注意が必要です。これらを繰り返し服用すると耐性が起こって、薬を飲んでも効果が得にくくなってきます。長期の連用により腸壁の神経が障害され、大腸がぜん動運動する力が低下することが原因です。また、正常な大腸粘膜はピンク色をしていますが、刺激性下剤を常用している人の大腸粘膜は真っ黒に変色していることがあります。これは「大腸黒皮症」と呼ばれる状態で、大腸の機能が低下してますます便秘が悪化します。

 刺激性下剤は他の便秘薬に比べて効果がすぐに出やすいので患者さんには好まれますが、体に悪影響を及ぼす場合もあるので、どうしても便が出ずに苦しい時だけ、あるいは旅行中など短期間の服用にとどめることをお勧めします。刺激性下剤と類似した成分が含まれているサプリやお茶なども毎日飲むのは控えた方が良いでしょう。

正しい便秘治療について教えてください

 これまで便秘は病気とみなされず、医療機関を受診しても効果的な治療がなされないケースもありましたが、2017年に日本初となる便秘の診療ガイドラインが作成されるなど、便秘の診断・治療体制が整ってきています。

 近年、癖になりにくい(耐性が生じにくい)便秘薬も多数登場しています。効果や下痢などの副作用を見ながら合う薬を選び、食事や運動など生活習慣の改善と併せて排便をコントロールしていくのが正しい便秘治療です。第一選択薬は酸化マグネシウムで、腹痛が出にくい穏やかな薬です。毎日継続しても安全です。酸化マグネシウムで不十分であれば、作用する仕組の違う別の便秘薬を使います。医師の処方が必要ですが、こちらも毎日服用できます。より適した薬を選ぶために何回か変更を要することや、複数の薬を併用するケースもあります。

 たかが便秘と思わず病院を受診し、医師と相談しながら自分に合った薬を見つけ、根気よく治療を続けることが大切です。


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