2023年12月14日木曜日

飛蚊症(ひぶんしょう)

<飛蚊症とはどのような病気ですか>


 白い壁を見ていると、視界の中で、点や糸状、輪のような黒い影・物体が飛んでいるように見えることがあります。これが飛蚊症です。眼球内の硝子体に何らかの原因で濁りが生じ、明るい所を見たときに濁りの影が網膜に映るために起こります。

 濁りの原因には、生理的なものと病的なものがあります。飛蚊症の原因として最も多いのは、「後部硝子体剥離」で網膜に密着しているはずの硝子体が剥がれ、その後部を構成する膜の影が飛蚊症として現れます。これは加齢による変化ですが、近視の強い人には若くても起こることがあります。これらの状態は特に治療する必要はなく経過を見ます。飛蚊症の見え方に慣れて、気にならなくなることが多いです。


<別の病気が原因となっている飛蚊症について教えてください>


 硝子体が剥がれる際に引っ張られたり、頭部への衝撃などで網膜の弱い部分に穴が開く「網膜裂孔」が、飛蚊症の原因になります。放っておくと、網膜剥離に進行する恐れがあります。網膜剥離は重大な視力障害の原因となりますので、早急な治療が必要です。網膜裂孔だけならレーザー治療、網膜剥離になったら手術が一般的です。

 網膜の静脈が閉塞することで、血液の流れが滞り、網膜に出血やむくみが起こる「網膜静脈閉塞症」も原因疾患の一つです。治療は、網膜光凝固や眼球に直接「抗VEGF薬」を投与する硝子体注射を行います。また、糖尿病や高血圧が原因で出血し、硝子体内に血液が入り込んで飛蚊症と感じることもあります。目の治療と同時に原因となる疾患の治療、改善が必要です。糖尿病性網膜症の場合、眼科では網膜光凝固治療を行いますが、黄斑浮腫が残れば抗VEGF薬の硝子体注射を行います。

 飛蚊症と似た症状を呈する病気に、視野の中央部に、輝く点が現れ、ぎらぎらとした稲妻のような模様が徐々に拡大し、見えない部分が生じる「閃輝(せんき)暗点」があります。はっきりとした発生メカニズムは解明されていませんが、脳血流の低下が関係していることが指摘されています。

 飛蚊症が生理的なものか、病的なものかを本人が自覚症状で区別することは困難です。飛蚊症を感じたら、早めに眼科で検査を受けることが大切です。


ふじた眼科クリニック
藤田 南都也 院長


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