2023年12月22日金曜日

冬の乾燥は気管の大敵〜乾燥とせき、加湿器の話〜

冬に長引くせきについて教えてください

 冬は空気が乾燥する季節です。湿度が低い環境では、さまざまな感染症を引き起こすウイルスの活動が活発になります。また、空気が乾燥すると、感染を防ぐ人体の働きが低下します。

気管(気道)に入ってきた病原体を捕らえて外へ押し出す働きが鈍くなり、ウイルスなどが肺の奥まで入り込みやすくなり、風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などにもかかりやすくなります。また、こうした呼吸器感染症はぜんそくやせきぜんそくを悪化させる要因となる可能性があります。ぜんそくは気管/気管支の慢性的な炎症が根本原因です。もともと炎症によって粘膜がとても敏感な状態になっているところに乾燥した空気や冷たい空気などによる刺激やウイルス感染などにより引き起こされた炎症などの、刺激が加わると、気道が収縮して狭くなり、せきが出たり、息苦しくなったりする可能性があります。冬の乾燥は「気管・気道の大敵」と覚えておいてください。

 札幌市が、市内の一般住居の冬期間の室内湿度分布状況を調査したところ、夏期間の31〜75%と比較して、冬期間は19〜53%と湿度が低い傾向があることが分かりました。砂漠の平均湿度は20〜25%ほどとされているので、住居によっては札幌の冬は砂漠より乾燥しているのです。私たちが暮らしていく中で、快適と感じる湿度は40〜60%とされていて、これを保つことが感染症予防、ぜんそくの発症・発作予防にもつながります。加湿器と湿度計を使うなどして、部屋の湿度を管理することが大切です。

 暖房を使い、室内の空気が乾燥する時季に活躍する加湿器ですが、使用法によっては「加湿器肺炎」という健康被害を引き起こす恐れがあるので、注意が必要です。加湿器肺炎は、加湿器内の水に発生したカビや細菌を吸い込むことで起こるアレルギー性の肺炎のことです。室内に雑菌をばらまくことのないよう、加湿器本体の洗浄のほか毎日タンクの水を取り換えるなどして清潔を保つといったメンテナンスが必要になります。知っておいてほしいのは、加湿器には水道水を使うこと。塩素が含まれるため、ミネラルウオーターや浄水器の水よりも雑菌などが繁殖しにくくなります。加湿器にはいろいろな方式がありますが、<超音波式>は避け、雑菌が繁殖する可能性が比較的低い<加熱式>や<スチームファン式>、<気化+加熱のハイブリッド式>をお勧めします。

 最後に、長引くせきは「気管からの危険信号」です。放置しないで、呼吸器の専門医を受診してください。


医療法人社団 大道内科・呼吸器科クリニック
北田 順也 副院長


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