健康診断で「脂質異常症」を指摘されているのに、症状がないからといって放置している人はいませんか?
最近、初めて脂質異常症を指摘されたという人も増えているそうです。コロナ禍の外出自粛で体を動かす機会が減り、運動不足で体重が増えたことも原因の一つとされています。
脂質異常症はどうして怖い?
脂質異常症は血液中のコレステロールや中性脂肪などの検査値が基準から外れた状態のことです。血管の壁が脂質の沈着などで厚くなったり硬くなったりする動脈硬化を進行させ、脳卒中や心臓病を招きます。
いわゆる「血液がドロドロ」な状態を意味しますが、異常値であったとしても自覚症状はほとんどありません。症状が出現したときには、命に関わる事態になっていることも多く、高血圧と同様に「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」と呼ばれています。
厚生労働省の調査によると、国内の患者数は220万5000人(2017年)で、20年前と比べ2倍以上と大幅に増加しています。
定期的な健診で早期発見を
初期症状はないため、定期的に健康診断を受けて早期発見に努めることが何よりも大切です。空腹時の血液検査で、①LDL(悪玉)コレステロールが高い(1dL当たり140mg以上)②HDL(善玉)コレステロールが低い(1dL当たり40mg未満)③中性脂肪が高い(1dL当たり150mg以上)―3項目のうち1つでも当てはまっていると、脂質異常症と診断されます。2022年に動脈硬化性疾患予防ガイドラインが改定され、中性脂肪では「空腹時に1dL当たり150mg以上」に加え、「非空腹時(食後)に1dL当たり175mg以上」の新基準ができました。食後に跳ね上がる人もリスクが高いと分かってきたからです。
コレステロール、中性脂肪ともに生存に欠かせない重要な物質ですが、取り過ぎると肥満を招き、動脈硬化を進行させます。加齢とともに患者数は増え、特に女性に多いのが特徴です。女性は閉経後にコレステロール値が急上昇する傾向があります。50歳を過ぎた頃から脂質の値に注意する必要があります。
予防は食事、運動などの生活習慣改善で
脂質異常症の予防は、まずはダイエット(体重の適正化)、禁煙、食事、運動といった生活習慣改善です。
LDLを下げるポイントは、脂肪の量と質です。動物脂(牛脂、ラード、バター)、インスタントラーメンやケーキに多く含まれる「飽和脂肪酸」を控えてください。鶏卵の黄身や魚卵はコレステロールを多く含むので要注意。中性脂肪高値の要因にはエネルギー量の過剰摂取、特に甘いものや油もの、アルコールの取り過ぎが挙げられます。ガイドラインでは、大豆や魚、野菜などを取り合わせた「減塩した日本食パターン」を推奨しています。
運動習慣は、1日30分程度のウオーキングのほか、ジョギングやサイクリング(各15分程度)などの有酸素運動を週2、3回すると効果的です。
食事・運動などの生活習慣の改善を行っても効果が見られない場合は薬物療法が必要となります。健診などで異常値を指摘された方は、放置せずに、まずはかかりつけ医に相談してみてください。
ライターコラム