2023年5月18日木曜日

気管支ぜんそくの吸入薬について

 白石内科クリニック 干野 英明 院長

「気管支ぜんそくの吸入薬について教えてください」

 気管支ぜんそくは、さまざまな原因によって気管支に炎症が起きて、その内腔(ないくう)が狭くなることによって起こります。治療薬としては、少量で効果が得られ、全身への副作用が少ないという点から、直接気道へ薬剤を入れる吸入薬が治療の中心となっています。吸入薬にはステロイド薬、β2刺激薬、抗コリン薬など、いろいろな種類があります。

 その中でも、吸入ステロイド薬はぜんそく治療における中心的な抗炎症薬です。吸入ステロイド薬は、ぜんそくの症状が出た時だけ使うのではなく、毎日決まった回数を吸入することが大切です。それにより気管支内の炎症が徐々に抑えられ、発作が起きにくくなります。吸入ステロイド薬の主な副作用は、声がかれることと口腔・咽頭カンジダ症が発生することです。声がれが起きた場合は、一度薬剤を中止するか、起きにくいタイプの薬剤に変えます。また、吸入後は必ずうがいをする必要があります。吸入ステロイド薬の中には、妊娠中にも使えるものもあります。

 吸入ステロイド薬は、単独で使うよりもβ2刺激薬と併用されることが多いようです。β2刺激薬は気管支拡張作用があり、吸入ステロイド薬と併用すると治療効果が増強するとされています。通常、この二つは合剤になっており、一つの吸入器に入っています。それでも効果が不十分な場合は、抗コリン薬の吸入を追加することもあります。抗コリン薬は気管支収縮抑制作用があり、β2刺激薬とはまた別の作用機序で気管支を拡張させます。ただし、抗コリン薬は閉塞隅角(へいそくぐうかく)緑内障や前立腺肥大症のある方には使えません。近年、吸入ステロイド薬とβ2刺激薬と抗コリン薬が一つになったトリプル製剤といわれるものも出ています。

 現在の吸入薬は、大別すると「ドライパウダー吸入」と「定量噴霧吸入」があります。ドライパウダー吸入は、患者さん自身が吸い込んで薬剤を気管へ届けます。一方、定量噴霧吸入は、薬剤を含むガスを一瞬で噴霧します。そのため、噴霧と患者さんの吸気のタイミングをうまく合わせないと効率よく薬剤が気管へと入っていきません。

 吸入薬にはそれぞれ特徴があり、使用する場合には医師に相談の上、自分に合ったものを処方してもらいましょう。また、吸入薬を開始したら自己判断で中止しないことも大切です。

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