2002年12月25日水曜日

「ピロリ菌と胃・十二指腸潰瘍(かいよう)」について

ゲスト/やまうち内科クリニック 山内雅夫 医師

ピロリ菌について教えてください。

 正式にはヘリコバクター・ピロリといい、胃粘膜に住むラセン系の細菌です。胃の中は、胃酸のため強い酸性を呈し、細菌が生き延びる環境ではないという先入観から発見が遅れ、存在が認められたのは今からほんの20年ほど前です。ピロリ菌にはアンモニアを産生する能力があり、胃酸を中和して胃の中でも生存することができるのです。感染経路は経口感染とされていますが、感染の予防方法はまだ明らかになっていません。衛生状態の悪い地域や国で、感染率が高いことはわかっています。日本では若い人の感染率は低いのですが、40歳以上では約80%の人が感染しています。これまで多くの研究で、ピロリ菌が胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因になっていることが解明されてきました。ピロリ菌感染イコール胃潰瘍になるという訳ではありませんが、ストレス、喫煙、アルコールやカフェインの過剰摂取、鎮痛剤の服用などさまざまな要因が重なると胃・十二指腸潰瘍が発症します。またさらに、ピロリ菌によって引き起こされた慢性胃炎から胃ガンが発生することも推測されます。

胃・十二指腸潰瘍の治療方法をご紹介ください。

 以前の胃・十二指腸潰瘍の治療は、胃酸の分泌を抑制するH2ブロッカー投与が一般的でしたが、いったん治癒しても非常に再発しやすく、そのたびに再治療が必要でした。しかし潰瘍の主要な原因がピロリ菌であることが判明してからは大きく治療法が変わりました。除菌療法といいますが、胃の中のピロリ菌を駆除するために2種類の抗生剤を1週間内服し、さらにH2ブロッカーよりも強力に胃酸の分泌を抑制するプロトンポンプ・インヒビターを併用する方法です。この治療法によって、大部分の潰瘍の再発を防ぐことができるようになりました。もっとも、胃・十二指腸潰瘍の中にはピロリ菌に関与していないものもあり、このような場合は、除菌療法の対象外になります。ピロリ菌感染の有無を検索するには、内視鏡検査で胃粘膜を採取して調べる方法のほか、尿素呼気試験、血清抗体測定などがあり比較的簡単に分かります。なお、胃・十二指腸潰瘍を有しないピロリ菌感染者(慢性胃炎などの患者)に対しても、胃ガン予防の見地から除菌療法をした方が良いとする意見もありますが、まだ明確な結論は出ておらず、保険診療も認められていません。

2002年12月18日水曜日

「糖尿病と合併症予防」について

ゲスト/青木内科クリニック 青木伸 医師

糖尿病と合併症について教えてください。

 インスリンというホルモンの働きが弱く「血糖値の高い」状態が続いてしまうのが糖尿病です。「のどが渇く」などの自覚症状が現れるのは、病気がかなり進行してからで、糖尿病の診断を受けても症状が無い人がほとんどです。しかし、症状が無くても血糖値が高い状態が続くと、血管に負担がかかり合併症を引き起こす可能性が高くなります。合併症は、腎臓や目、神経に現れ、透析が必要になったり、失明、足の切断など、重症化することも稀ではありません。また、動脈硬化が進み、心筋梗塞(こうそく)や脳卒中の原因になることもあります。糖尿病は放っておくと命にかかわる恐ろしい病気なのです。

糖尿病と診断されたら、どのような点に注意すれば良いでしょうか。

 初期に適切な治療を受け、生活習慣を見直すことが何より大事です。治療と自己管理がうまくいっているかは、数値で分かります。HbA1c(過去1~2カ月の平均的血糖値)は重要で、糖尿病の場合は6.5%以下に維持します(正常値は5.8%以下)。この値を保つことが難しいと考える人が多いのですが、今まで診察した患者さんの平均は6.4%以下を保っている例がほとんどです。投薬と食事療法、軽い運動などの管理ができれば、長期に支障なく生活できます。糖尿病患者の約半数は高脂血症や高血圧症を合併しています。高脂血症予防には、糖尿病の場合総コレステロール値200mg/dl以下を目標に(健康な場合は220mg/dl)、また狭心症のある人は180mg/dl以下に保ち、心筋梗塞や脳梗塞を防ぎます。血圧については、糖尿病による腎臓病のある人は、125/75mmHg以下に維持しなくてはいけません。中性脂肪値は糖尿病の場合、120mg/dl以下の維持を目指します。このように、糖尿病の合併症を予防するには、血糖値以外の検査値にも注意を払う必要があります。食事内容や生活習慣など、細かなことまで相談できる主治医のもとで、自覚を持って生活を管理することが糖尿病とうまく付き合っていくためのコツです。

2002年12月11日水曜日

「ほくろのガン」について

ゲスト/かとう皮フ科クリニック 加藤文博 医師

ほくろのガンについて教えてください。

 正式には悪性黒色腫(しゅ)といい、非常に悪性度が高い皮膚ガンの一種です。足の裏、ツメ、指など皮膚の末端で、刺激を強く受ける部分に発症する例が多く見られます。ほくろのガンというと「新たにできたほくろ」と思われる人が多いようですが、実際には、約半数はもともとあったほくろから生じると考えられています。年齢的には、50~70歳代が多いのですが、中には10~20歳代の人もいます。男女比は、ほぼ同程度です。初期であれば、切除すればまず完治しますが、悪性度が強いので、進行してしまうと治療が難しくなります。リンパ節をはじめ、さまざまな臓器に転移しますが、転移前は急激にほくろが大きくなります。

予防法や早期発見の注意点をご紹介ください。

 紫外線が強い地域に住む白色人種は発症率が高いことから、紫外線が悪影響を与えていると考えられます。また、摩擦など機械的な刺激を受けることも発症の要因であると考えられます。紫外線、刺激は、なるべく避けた方が良いでしょう。疑わしいほくろの特徴として、左右が対称ではなくいびつな形をしたもの、辺縁から色が染み出ているもの、色むらのあるもの、6mm以上の大きさがあるもの、徐々に大きくなっていくものが挙げられます。このようなほくろがあったら、すぐに受診することをお勧めします。悪性黒色腫の恐ろしい点は、初期に痛み、かゆみ、出血などの自覚症状がまったく無いことです。「痛くもかゆくもないから、放っておいて大丈夫だろう」とほくろを放置した結果、手遅れになるというケースが多いのです。また、以前からある普通のほくろがガン化する例も多いので、時々は、自分自身でほくろの状態を確かめてみましょう。ひっかいたりこすったりしやすい個所にある、出血しやすい、サイズが大きいなどのほくろは、万が一のガン化を予防する意味で、事前に切除してしまうこともできます。「たかがほくろ」と思わず、気になったらすぐに皮膚科を訪ね、相談してください。

2002年12月4日水曜日

「外科手術による矯正」について

ゲスト/つちだ矯正歯科クリニック 土田康人 歯科医師

外科手術による矯正治療について教えてください。

 受け口と呼ばれる反対咬(こう)合、出っ歯と呼ばれる上顎(がく)前突、上下の歯が咬(か)み合っていない開咬、顔や顎(あご)が曲がった状態の顎変位など、顎変形症の症状がひどく、矯正治療のみでは治しきれない場合、外科手術によって治療する方法があります。矯正専門医と口腔(こうくう)外科、形成外科が協力し、骨延長などの外科的処置を行い、その前後は矯正治療で咬み合わせを正常にします。手術前の治療に1年弱、手術後約2年、合わせて3年ほどの矯正期間が必要です。年齢的には、高校生以降の骨が成長しきった状態で行います。成人してからの治療も可能なので、年齢にかかわらず、まずは専門医の診察を受けてください。

手術というと、入院期間や費用などが心配ですが。

 外科手術なので、顔に傷ができるのではないかと心配されるでしょうが、口の中から行うので傷あとが残ることはありません。入院期間はだいたい2週間程度で、ほとんど危険の無い手術です。かつて、このような治療は高度先進医療機関に指定されている大学病院などでのみ許可されていました。しかし、現在は都道府県指定の更生医療機関などの矯正専門医なら、口腔外科、形成外科と協力して行えるようになりました。一般の矯正治療は保険診療の対象外ですが、外科治療を伴う場合はすべて保険診療対象となります。著しく咬み合わせがずれているまま放っておくと、発音や咀嚼(そしゃく)など機能面で問題が生じます。また、審美的な見地からも悩まれることが多いのも実状です。矯正歯科以外で、美容のみを目的として口元を治療されることもあるようですが、健康な歯をさし歯にするなど、機能面での配慮が二の次になってしまう場合も見受けられます。外科矯正の目的は、あくまで咬み合わせを正常にすることですが、付随して横顔や表情が健康的に美しくなる例を多く見ています。また、外科治療せずに顎の変形を治したい場合は、永久歯が生え揃う小学校1、2年生のうちに、矯正治療を始めることをお勧めします。

2002年11月27日水曜日

「骨量減少と骨粗しょう症」について

ゲスト/草薙レディースクリニック 草薙鉄也 医師

骨粗しょう症について教えてください。

 骨粗しょう症とは、骨がスポンジのようにスカスカになって骨折しやすくなる病気です。閉経を迎えた更年期以降の女性に起こりやすく、ちょっとした転倒や衝撃で骨折し、それが高齢者の寝たきりの大きな原因の一つになっています。骨の形成と女性ホルモンには深い関係があります。女性は、20代の前半までに卵胞ホルモンの働きで、骨の中にカルシウムが大量に蓄積され、丈夫な骨になります。背骨は35歳前後、股(こ)関節と手首は20代前半で最も丈夫な骨になります。しかし更年期になってホルモンの分泌量が減ると、破骨細胞だけが活発に働くようになります。また、カルシウムは女性ホルモンやビタミンDの助けがないと体内に吸収されないので、女性ホルモンが不足すると、カルシウム不足になり、その結果、閉経後骨量が減って骨粗しょう症という事態になるのです。

骨粗しょう症の判定の仕方や、予防法をご紹介ください。

 骨密度は、80%以上が正常、80~70%を骨量減少、69%以下を骨粗しょう症といいます。30歳から65歳までに平均で30%程度は減少することがわかっています。すると、30歳で骨密度が95%あっても、65歳ごろには65%で骨粗しょう症ということになります。30代では100%の骨密度がないと、骨粗しょう症予備群ということになります。今まで診察した患者さんを調査したところ、若くして骨量が平均以下の人が約3割いました。これは、65歳以降の骨粗しょう症の人の割合とほぼ一致します。つまり、骨粗しょう症はお年寄りの病気だと思われがちですが、その傾向は若い時からはっきり現れているのです。予防策として、まず20、30代で1度骨密度を計ってみましょう。腕よりも背骨や大腿(たい)骨を計測しましょう。30代の平均値として背骨は103%、大腿骨は102%、閉経時で背骨は93%、大腿骨は88%、閉経後10年で背骨、大腿骨とも73%は必要です。自分の骨密度値がこれを下回っている場合は、積極的にカルシウムとビタミンDを取り、適度な運動を心掛けて骨量増加に努めましょう。また、無理なダイエットは、骨の成長に悪影響を及ぼしかねません。食事・生活習慣を見直して、骨粗しょう症を予防しましょう。

2002年11月20日水曜日

「痛みの治療」について

ゲスト/十善クリニック 水柿功 医師

痛みの治療について教えてください。

 「痛み」を専門に治療するペインクリニックでは、主として神経ブロックで治療します。対象となる疾患は、腰痛症、腰椎(ようつい)椎間板(ついかんばん)ヘルニア、脊(せき)柱管狭窄(きょうさく)症、腰椎手術後腰痛症、五十肩、肩こり、頭痛、変形性膝(しつ)関節症などがあります。薬物療法やさまざまな理学療法を行ったのにもかかわらず残っている痛みは、多くの場合神経ブロックを行うことで改善されます。突然起きる「ギックリ腰」は、洗顔が出来ない、靴下をはけない、歩くのも苦痛などの症状がありますが、1回の神経ブロック治療で痛みが取れてしまう場合もあります。また高齢者の方で「年だから、腰が痛くなるのは仕方の無いこと」といわれ、自分自身で諦めている方でも改善の余地はあります。さらに手術などが必要な回復力が乏しい場合でも、神経ブロックの回数を増やすことで改善が期待できます。痛みを我慢するということは、人体の自然治癒能力を大きく妨げることになります。神経ブロックの治療は、人の持つ本来の自然治癒能力を促すことにあるのです。

具体的な治療方法をご紹介ください。

 神経ブロック「硬膜外ブロック」について説明しますと、このブロックは、ギックリ腰や腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症などの治療に行われます。脊髄(せきずい)を含む硬い膜の外側を硬膜外腔(くう)といいますが、ここに局所麻酔薬を注入すると痛みを遮断し、血液の流れを改善します。腰痛に対する硬膜外ブロック療法は、腰痛の原因のいかんにかかわらず効果を発揮します。また、痛みを引き起こしている部位が特定される場合は、直接局所麻酔薬を注入して痛みを取る場合もあります。肩こり、五十肩にも優れた治療効果があります。また、帯状疱疹(たいじょうほうしん)の場合には、早期に神経ブロックを行えば、治癒した後から発症する帯状疱疹後神経痛に悩まされることはありません。「痛み」は我慢すれば慢性化し自然治癒力が低下します。そうなる前にペインクリニックの専門医に診てもらうことをお勧めします。

2002年11月13日水曜日

「糖尿病」について

ゲスト/秀愛会内科・消化器化クリニック 高梨良秀 医師

糖尿病について教えてください

 糖尿病は、膵臓(すいぞう)でのインスリンの作られ方が不足したり、インスリンの働きが弱かったりする病気です。中年以降の発病が多く、自覚症状としては、のどの乾き、多尿、体重減少、倦怠(けんたい)感などがあります。多くの場合は自覚症状が出る以前に、健康診断などで尿検査に異常値が出るなどして、受診される方が多いです。初期の時点で糖尿病を治すために本人が真剣に取り組めば、悪化することなく経過します。ところが、糖尿病の本当の恐ろしさは、病状が進行するにつれて、重い合併症を引き起こすことにあります。合併症としては、神経障害、網膜症、腎症、さらに脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞を合併する可能性もあります。神経障害では、壊疽(えそ)によって組織が腐った状態になることもあり、足の部分切除や場合によっては足の切断ということもあります。網膜症では進行すると眼底出血によって失明する恐れもあります。腎症は進行すると、腎臓の機能が低下し、血液透析が必要になります。糖尿病は決して珍しい病気ではありませんが、このような合併症を引き起こす病気であることを知ってください。

合併症を避けるにはどのようにすればいいでしょうか。

 医師の指示に従って、処方された薬を飲み、食習慣、生活習慣を改めれば問題ありません。しかし、自覚症状が無いため、薬を飲まなかったり、これくらいはとカロリーを取り過ぎたりする人が多く、病院にも足が遠のいて、気が付いた時には悪化しているという場合が非常に多いのです。初期の場合は、今までの食事の8割程度を摂取できるのに、悪化してからでは6割程度と段々制限も厳しくなります。すると、それが守れず、さらに悪化するという悪循環を生み出します。糖尿病を治療するには、本人の自覚と強い意志が大切です。糖尿病と診断されたら、定期的に病院へ行き、検査を受けてください。処方された薬を飲み、適度な運動とカロリーを控えた食生活を心掛けるだけで、合併症から身を守ることができるのです。

2002年11月6日水曜日

「サルコイドーシス」について

ゲスト/大道内科・呼吸器科クリニック 大道光秀 医師

サルコイドーシスとは、どのような病気ですか。

 類上皮細胞肉芽腫(しゅ)という「肉の塊」のような組織ができる病気です。全身のあらゆる臓器にできますが、肺および胸部のリンパ腺にできる場合が最も多く、その場合、症状、胸部写真の影も結核と似ています。結核の胸部写真では、多くは片側の肺門リンパ節が腫(は)れますが、サルコイドーシスの場合、両方の肺門リンパ節に腫れが見られる場合が多いです。かつては、若い男性に多い病気で、両方の肺門リンパの腫れが出るくらいで、何の症状もなく、2年ほどで自然に治癒する病気だと思われていました。しかし、最近の研究で、この病気は若者からお年寄りまで発病することがわかりました。病気が現れる個所によって症状もさまざまで、目にできた場合は失明の可能性、心臓にできた場合は不整脈や突然死の原因に、神経に現れた場合は精神異常や耳鳴り、めまい、顔面神経痛の原因になることもあります。この病気の原因は不明ですが、急に悪くなったり、良くなったりするものではないことがわかってきました。10万人に2~4人程度の発症率で、難病であり、国の特定疾患にも指定されています。

診断方法と治療法について教えてください。

 診断には胸部写真と血液検査でのアンギオテンシン変換酵素の上昇、ツベルクリン反応陰性化(結核は陽性)などの検査所見と、気管支鏡を使った検査を行います。この病気は原因不明のため、根本的に治す薬品はありません。ただ、ステロイドホルモンという薬で一時的に症状を軽くすることができます。長期の使用で副作用が起こったり、症状の悪化を招いたりすることもあるので、慎重な投薬が必要です。また、結核の患者にステロイドホルモンを投与すると、急激に症状が悪化するので、まずはサルコイドーシスと結核の区別をしっかりつけなくてはいけません。侵された臓器により治療法も異なるので、いつ、どのようにステロイドホルモンを使うか、まとめ役の主治医のもとでいろいろな科の先生たちと連携を取りながら、経過を診ていく必要があります。完治はしませんが、症状が出ない間は、普通に過ごせます。

2002年10月23日水曜日

「八重歯などの矯正」について

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治正光 歯科医師

八重歯も矯正の対象になるのでしょうか

 八重歯というのは、前歯と奥歯の間に位置する歯、犬歯が、歯列から外れて生えている状態をいいます。ときどき「八重歯が気になるので、犬歯を抜いてしまった」という人がいますが、犬歯は、機能面でも審美面でも、非常に重要な歯です。犬歯はほかの歯よりも比較的根が長く、顎(あご)の骨にしっかり固定されており、寿命も長いのです。機能的には、食べ物をすりつぶす奥歯と噛(か)み切る前歯を、調節する役割を果たしています。逆に、八重歯のままにしておいた場合は、歯列から外れているため、せっかくの長い根も顎の骨に固定されておらず、また歯も磨きづらいため、虫歯になったり、年を取って顎の骨が「やせて」、歯根が露出してしまうことが多いのです。八重歯を中心とした歯列矯正の場合、極力抜歯をせずに、本来あるべき位置に戻します。どうしても、抜かざる得ない場合は、犬歯を残し、隣の歯を抜く場合が多いです。

笑うと歯茎(ぐき)が目立つ場合も矯正で治りますか。

 テレビで見かけるタレントさんや女優さんでも、笑うと歯茎が目立つ方がいますが、欧米ではガミー(歯茎)フェイスと呼ばれています。上顎(がく)前突、いわゆる出っ歯の一種で、見た目の問題だけでなく、下の歯が上の歯茎に当たっている場合が多く、歯肉炎などを合併する可能性もあります。歯並び自体がきれいだと、矯正治療の対象ではないと思われがちですが、矯正することによって、前歯と一緒に歯茎も引っ込めることができます。大人になってからでも矯正は可能ですが、できれば永久歯が4本出た時点で矯正を開始すると、本人もあまり負担に感じずに治すことができます。骨格的な遺伝の場合が多いので、お母さんやお父さんの歯茎が目立つという場合は、早めに矯正専門医を訪ねてください。また、目立たない矯正具もありますので、歯や歯茎で気になることがあったら、一度専門医に相談することをお勧めします。

2002年10月9日水曜日

「肥満」について

ゲスト/岡本病院 松浦信博 医師

肥満について教えてください。

 肥満には、病気が原因となる症候性肥満と過食や運動不足による単純性肥満がありますが、ここでは約9割を占める単純性肥満についてお話しします。大人の肥満の場合、脂肪細胞の数が増えることは滅多に無く、細胞自体が大きくなることによる肥満がほとんどです。摂取した熱量が消費する熱量を上回った結果、肥満になりますが、その原因はさまざまな要因が複合的に関連していると考えられます。誤った摂食パターンや過食、運動不足などです。遺伝によって「太る」ということも確かにありますが、これは食生活に気を付けていれば、克服可能な程度がほとんどです。日本肥満学会が提唱する肥満の判定基準があります。BMI(ボディマスインデックス)といい、体重(kg)÷身長の二乗(m)で計算し、22が標準、20~24未満なら正常、24~26.5はやや肥満、26.5以上なら肥満です。

肥満による合併症や、肥満を解消するための方法を教えてください。

 大人の肥満には2つのタイプがあります。内臓脂肪型肥満は、腹部を中心に太り、リンゴ型と呼ばれ男性に多いタイプです。もう1つは、皮下脂肪型肥満で、洋ナシ型と呼ばれ下半身に脂肪が付く女性に多いタイプの肥満です。問題が多いのは、リンゴ型肥満で、糖尿病、高血圧、動脈硬化、高脂血症など生活習慣病になる確率が高くなります。肥満解消の方法は、やはり食生活を見直すことが一番です。三大栄養素をバランス良く取り、脂質の摂取量を減らします。昔ながらの和食を中心にすると良いでしょう。三食きちんと食べ、朝食はしっかり、夕食は控えめに。薄味に慣れ、間食やアルコールを減らし、残飯はすぐ処分しましょう。運動ももちろん大切ですが、継続が一番効果的なので、無理のある運動はせず、長く続けられるようなものにしましょう。5、6kmの歩行、歩数にすると1万歩位ですが、これを1週間に3回程度行えばいいでしょう。肥満解消に近道、王道はありません。生活習慣を見直し、焦らずゆっくり継続することです。

2002年10月6日日曜日

「タコ・うおの目」について

ゲスト/緑の森皮フ科クリニック 森尚隆 医師

タコ、うおの目とはどういう状態をいうのですか。

 タコは、足の裏や指の一部分が角質化した状態のことです。皮膚が硬くなり、厚く盛り上がっています。うおの目は、角質化した部分の中央に芯(しん)・核ができ、皮膚の奥深く(真皮)へと入り込んだもので、神経を刺激して痛みを感じます。できやすい場所は、足の指の背(上側)、指と指の間、足の裏の第2指と第3指の付け根などです。タコとうおの目では症状が異なりますが、ほとんどの場合、足に合わない靴が原因です。靴の幅が狭く、指が両側から圧迫されると指の間に摩擦が起こります。大きい靴も、足が靴の前側へと滑り、指や付け根が圧迫され摩擦が起こるのでよくありません。底の薄い靴は地面からの衝撃が大きく、足の裏が圧迫されます。靴はきつ過ぎず、ゆる過ぎずが理想です。選ぶ時は両足とも履いてみることをお勧めします。予防の基本は靴選びです。また、親指と小指の付け根を結ぶ横のラインの中央にくぼみがないベタッとした足(開張足)や、指の関節がハンマーのような形で曲がったままになっている状態(ハンマートゥ)、巻き爪(づめ)などの人はタコやうおの目ができやすいので、注意が必要です。

治療法について教えてください。

 痛みが軽ければ、市販のタコ・うおの目用の保護パッドが有効です。カミソリなどを使い、自分で削る人がいますが、消毒が不十分でばい菌が入り、足やリンパ節の炎症を起こす危険性があります。また、ウイルス性のイボの場合は、削ると周辺に感染することもあります。悪化したり、痛みがひどい場合は、早めに専門医へ相談してください。またレーザーや電気メスで削り取ることも可能です。手術法によっては保険が利かない場合もあるので、事前に確認したほうがいいでしょう。また、冷え性の人は血行不良から起こる皮膚の角質化、中高年は動脈硬化から起こる血行不良、糖尿病から起こる末梢(しょう)神経の障害がタコやうおの目の原因になることもありますので、靴などの原因が思い当たらない時は、こうした病気の検査を受けることもお勧めします。

2002年10月2日水曜日

「加齢性黄斑変性」について

ゲスト/誠心眼科病院 加藤成美 医師

加齢性黄斑変性とは、どんな病気でしょうか。

 網膜の中心部にある黄斑部に異常が生じる病気で、この部分は物を見るのに重要な役割を果たしているため、症状が進むと失明にもつながります。アメリカでは中途失明原因の1位になっています。近年日本でも急激に患者数が増え、「加齢性」の名が付くように、50歳代から発症率が高くなります。最初は、物を見ようとしたとき、中心部分がぼやけて見えるようになって気が付く場合が多く、黒ずんで見える(中心暗点)、物がゆがんで見える(変視症)などの症状が現れます。さらに病状が進むと眼底出血が起こり、著しい視力の低下や失明に至る場合もあります。加齢によるものなので、どんな人に多く発症するとはいえませんが、喫煙、高血圧、動脈硬化症は危険因子と考えられています。

どのような治療法や、予防法がありますか。

 タイプとしては、黄斑部の中心窩(か)が萎縮(いしゅく)して変性する非滲出(しんしゅつ)型と、網膜の外側の脈絡膜から新生血管が発生し、網膜に侵入する、滲出型があります。予後が悪いのは滲出型で、もろい新生血管が破れて出血したり、血液中の成分が漏れるなどして黄斑部が隆起し、視力障害が起こります。いずれにしても、元通りに治すことはできません。非滲出型は進行が遅く、血管拡張剤などで治療します。滲出型の場合は、螢光(けいこう)眼底造影検査などで詳しく新生血管の位置を調べ、治療法を決定します。新生血管の位置によって、止血剤、血管強化剤などの投薬、新生血管をレーザーで焼く光凝固、外科手術による新生血管膜除去術などの治療を行います。加齢性黄斑変性は、はっきりとした発症原因がわからないため、有効な予防法はありません。50歳代になったら、人間ドックで眼底検査を受ける、格子縞(じま)や時計、新聞の文字などを片目ずつ見て、ゆがみが無いかチェックするなど、早期発見に努めることが肝心です。片目に発症した人は、もう片方に発症する危険が高いので、定期的に眼底検査を受けてください。

2002年9月25日水曜日

「在宅医療」について

ゲスト/斎藤内科医院 平澤路生 医師

在宅医療について教えてください。

 病気で寝たきりになったり、通院することが困難になった患者さんを対象に、医師が出向いて診療を行う「訪問診療」が、在宅医療の中心になります。「往診」は患者側の求めに応じて、患者宅を訪問し診察・治療しますが、訪問診療の場合、病気に合わせて計画的に出向いて治療します。この点で、通院と同様の医療が行えます。在宅で行えない検査が必要な場合や、状態が急変し入院が必要な場合は、提携関係にある設備の整った適切な病院を紹介します。医療機器や医療技術の進歩で、高カロリー輸液、酸素吸入や人工呼吸器など、かつて入院しなければ使用できなかったことが在宅で可能になってきています。医療の水準を極力落とさず、住み慣れた環境で心穏やかに療養してもらうのが、在宅医療の目的です。

家で過ごすということに大きな意味があるのですね。

 クオリティ・オブ・ライフ(人生の質)について考えた場合、病院で寝たきりの状態で少しでも延命するのか、自分の家で家族とともに意義のある人生を過ごすのか、ということは大きな問題になります。持病のあるお年寄りや難病の方、末期ガンの方など、さまざまな病状の多くの方が、長期の入院よりは、家族とともに在宅で医療を受けることを希望しています。人手や施設の面で見劣りする在宅は、入院生活よりリスクを負うことになりますが、それも納得した上で「家に帰りたい」という気持ちがかなえられれば、それは医学では説明のつかない「生きる力」につながる例が認められます。医療保険制度が変わり、長期の入院も難しい状況です。介護保険制度ができて、ホームヘルパーや訪問看護、在宅リハビリテーションなど在宅を支援する制度が整えられてきています。それらをうまく利用することも大切です。在宅医療を希望する人は、まず訪問診療を実施している医院に相談してください。納得し、信頼できる医療機関を見つけることが、在宅医療実現への第一歩です。

2002年9月18日水曜日

「矯正治療」について

ゲスト/E-line矯正歯科 上野拓郎 歯科医師

矯正治療について教えてください。

 矯正歯科へ来院される方は、見た目の歯並びや咬(か)み合わせに不安や不満があるという理由からでしょう。まず矯正歯科では、カウンセリングを行います。自分の歯並びの状態を知ってもらい、大まかな治療内容について説明します。その上で治療を開始することになった場合、詳しく診断するための資料として、歯型、骨格や歯のレントゲン撮影などの検査を行います。極端な不正咬(こう)合や顎(あご)の動きに問題がある場合は、顎の動きのチェックや顎の関節部のレントゲンやMRIを用いた詳しい検査を行います。検査結果に基づき、診断と治療方針を決定します。矯正は長い付き合いになるので、ここで納得いくまで話し合い、治療計画、期間、費用など、十分に理解してから治療をスタートします。矯正治療に入る前に、虫歯、歯周病、顎(がく)関節症がある場合は、その治療を行います。これが本格的な矯正治療開始までの流れです。治療の方法は、症状によって違います。歯に主な原因のある不正咬合の場合、顎や歯並びを広げながら歯を抜かずに治療するか、顎と歯のバランスが極端に悪い場合は抜歯して治療することになります。また、歯だけではなく骨格に問題のある人は、思春期成長前であれば顎の矯正治療を行い、骨格が改善した後、歯の矯正治療をする場合があります。思春期成長後であれば、外科的矯正治療も必要な場合があります。思春期成長前のお子さんで歯並びが気になるようでしたら、早いうちに専門医に相談し、治療時期についての説明を受けることも必要です。

矯正装置の違和感が心配な人も多いと思いますが。

 症状によって矯正装置の種類、使用期間はさまざまです。短いものでは数カ月、長い場合は10年近くになります。最近は、材料や治療方法が発達し、違和感や苦痛の少ない装置が多くなってきました。装着直後は違和感や痛みが多少ある場合がありますが、数日で無くなる場合がほとんどです。装置装着後は、約1カ月に1度程度の通院になります。歯が移動し、顎の矯正治療も完了し、見た目にはきれいな歯並びになりますが、動かした歯はまだ骨の中で安定していません。この後は保定期間として、保定装置を使って安定を待ちます。保定期間は2~3年で、通院間隔も2~6カ月に1度程度です。保定が完了し、矯正治療がすべて終了します。気になった時点で一度専門医を訪ねてみましょう。

2002年9月11日水曜日

「過敏性腸症候群」について

ゲスト/医療法人社団土田病院 土田茂 医師

過敏性腸症候群とは、どんな病気でしょうか。

 腹痛、膨満感、腹部不快感を伴う下痢や便秘、下痢 と便秘を繰り返すなどの症状が1カ月以上続く疾病です。原因はストレスと不規則な 生活、偏った食事などです。消化器は自律神経と密接に関係しています。ストレスが 多い社会状況を反映してか、最近特に症状を訴える人が多くなりました。思春期、社 会に出たばかりの20代の女性、働き盛りで責任の重い40~50代の男性と、ストレスを 強く感じる層に多く現れます。月曜日の朝や、出勤・通学時、外出前など、緊張や不 安で精神的なストレスを強く感じる時に症状が出やすい病気です。逆に、週末や夜な ど、精神的にリラックスしている時には、まったく症状が現れません。下痢の場合 は、食事内容とは無関係に下痢が1日2~3回、ときには数回以上も起こり、特に朝 食後に多く見られます。1回の量は少なく、十分排便できないため不快感が残りま す。便秘タイプは、便意を催してトイレに行ってもコロコロとした硬い便しか出ませ ん。下痢と便秘を繰り返す交替性便通異常は、軟便や水様便、粘液が混じった便など が続き、その後は便秘をしたり、コロコロした便、細い便が出るなどの症状を繰り返 します。治療は、まずストレスを発散させ、規則正しい生活・食生活を心掛けるな ど、原因を取り除くことから始めます。どうしても必要であれば、下痢止めや整腸剤などを症状に合わせて処方することもあります。

大病に進行すること はないのでしょうか。

 生活の上での不便はあり ますが、大病につながることはまずありません。「下痢をするんじゃないか」「お腹 が痛くなったらどうしよう」と不安に思う気持ちが、さらに精神を不安定にさせ、症 状を強くすることもあります。精神をうまくコントロールすれば、症状は軽くなりま す。ただし、「過敏性腸炎だから」「昔から緊張すると腹痛がするから」と受診しな いでいると、ほかの病気の発見が遅れる場合があります。大腸ガン、クローン病の症 状とも重なるので、心配を取り除くために、一度は受診してください。

2002年9月4日水曜日

「排尿障害」について

ゲスト/元町泌尿器科 西村昌宏 医師

排尿障害を伴う疾患として、どのようなものがありますか。

 女性に多いのは、突然の排尿痛を伴い、頻尿、残尿 感に襲われる急性膀胱(ぼうこう)炎です。排尿後の不快感もあり、尿に血液が混じ ることもあります。原因は菌による感染で、性活動が活発な20代の女性と、閉経後に 女性ホルモンによる自浄作用が後退した50代以降の女性に多くみられます。長時間ト イレを我慢したり、下半身の冷えから発症することもあります。抗生物質の服用で 3、4日で症状が改善しますから、我慢せずにすぐ泌尿器科を受診してください。何 度も繰り返すことがあるので、最初の治療が大切です。そのほかの膀胱炎としては、 ほかの疾患の合併症として出る神経因性膀胱に伴う慢性膀胱炎などがあります。男性 も膀胱炎になることはありますが、多くみられるのは尿道炎、前立腺炎です。尿道内 に細菌が入り、尿道や前立腺が炎症を起こす疾患で、排尿痛、頻尿、残尿感、発熱な どの症状があります。大腸菌、淋(りん)菌、クラミジア、マイコプラズマなどによ る感染が原因で、抗生物質投与などの治療を行います。前立腺炎は慢性化すると治り づらくなるので専門医で適切な治療を受けてください。

男性において感染による疾患以外では、どのようなものがありますか。

 夜間の頻尿、尿に勢いが 無い、残尿感があるなど、中高年で排尿に関する悩みを持つ人は多いと思います。こ れは、加齢によって前立腺が肥大し、尿道を圧迫するため尿の出が悪くなる前立腺肥 大による症状です。肥大症は通常50代になって現れる病気で、60歳以上ではかなりの 確率で肥大症になるといわれています。投薬や手術による前立腺の切除など、症状の 進行具合に適した治療をすればまず問題ありません。また、肥大症の症状に酷似した 前立腺ガンの可能性もあります。前立腺ガンは近年日本で急増し、死亡数も増加傾向 です。簡単な血液検査でかなりの確率で診断できますから、積極的に検査を受けてく ださい。早期に発見・治療することが肝要です。50歳を過ぎたら年に1回は定期的に 検診を受けましょう。

2002年8月28日水曜日

「幼児期からの虫歯予防」について

ゲスト/つちだ矯正歯科クリニック 土田康人 歯科医師

幼児期からの虫歯予 防は、どのような点に気をつければいいでしょうか。

 「8020運動」という言葉を聞いたことがあると思い ますが、自分の歯を80歳まで最低20本は残そうという運動です。そのためには、幼児 期からの歯を大切にする習慣が大切です。幼児期の歯を守るのは親の役目です。歯磨 きの徹底は虫歯予防の第一歩ですが、幼児の場合は自分で磨いても限界があります。 磨き残しが無いか必ず確認し、仕上げ磨きをしてください。毎食後に磨くのは習慣と して大切ですが、しっかり隅々まで磨くのは1日に1度でいいでしょう。寝る前に、 5分以上磨くようにしましょう。歯を磨くときのポイントは、歯と歯茎の間、奥歯の 凹凸がある部分など、虫歯になりやすい個所を集中的にあまり力を入れず、小刻みに ブラッシングすることです。歯磨き粉は、子どもが嫌がるのであれば使用しなくても かまいませんが、フッ素入りの歯磨き粉は使い続けることによって虫歯予防に効果が あるといわれています。

食生活など歯磨き以 外の注意点はありますか。

 おやつは時間を決めて与 えてください。ダラダラと食べさせるのが一番歯に良くありません。特に上に兄、姉 がいる場合、甘い菓子を食べるなど悪習慣がついてしまいがちです。おやつも、軟ら かいものより、繊維質のものや噛(か)み応えのあるものが、歯の健康には良いで す。飲み物はお茶や水を基本に。ジュースや炭酸水はかなりの糖分が入っています。 スポーツ飲料も同様です。最近、キシリトール入りのガムやタブレットなどの菓子が 出ていますが、キシリトールは天然素材の甘味料で虫歯菌によって発酵せず、虫歯の もとになる酸が発生しません。上手に利用すると、虫歯予防に役立ちます。また、3 カ月から半年に1度は歯科医で定期検診を受けると安心です。その際、フッ素塗布 や、虫歯になりやすい溝を埋めるシーラント(予防填塞=てんそく)、歯列矯正など 気になることは積極的に相談しましょう。気軽に通える専門医を見つけ、上手に付き 合うことも歯の健康を守る上での大切な要素です。

2002年8月21日水曜日

「更年期障害と骨粗しょう症」について

ゲスト/草薙レディースクリニック 草薙鉄也 院長

更年期障害と骨粗しょう症はなぜ女性に多いのですか。

 まず更年期障害についてですが、初潮を迎えたとき、卵巣には40万個の卵子があります。しかしその後の排卵で50歳までに卵子は無くなり、それまで卵巣から分泌されていた女性ホルモン(エストロゲン)は突然失われます。そうすると脳の視床下部にあるエストロゲン分泌の指令塔(性中枢)からエストロゲンをもっと分泌するように、過剰な刺激を卵巣に与え性中枢が乱れます。実は自律神経中枢は性中枢の隣りにあるため、性中枢の乱れは自律神経の乱れを同時に起こします。更年期障害はホットフラッシュ、発汗、肩こり、腰痛、関節痛、疲れやすいなどのエストロゲン不足症状と、動悸、めまい、イライラ、不眠、うつ状態などの自律神経失調症状の2つの症状が混じり合ったかたちで現れます。女性は男性と違って女性ホルモンが突然失われるため更年期障害が出やすいのです。次に骨粗しょう症ですが、女性は閉経後、ホルモンが不足することによりカルシウムの吸収率が半減し、骨がもろくなる骨粗しょう症になりやすくなります。現在患者数は約780万人、その75%は女性です。閉経後20年間で脊椎(せきつい)骨や大腿骨頚部(股関節)の骨量が20%減少し、特に閉経直後の10年間にその7割が失われます。また骨折後5年以内に50%の方が死亡しています。

更年期障害と骨粗しょう症は、どのように対応したらよいですか。

 更年期障害、特に自律神経失調症状に対しては、漢方や自律神経安定剤が有効ですが、もともとの原因である性中枢の乱れに対しては、ホルモン補充療法が有効です。また、女性ホルモンで骨量減少を予防できますから、更年期以降の女性にとって骨粗しょう症予防にこの療法は有用といえます。最近ホルモン補充療法の副作用について取り上げられていますが、このような報告は以前からあり、もともと血栓症や乳ガンが多い人種、肥満や喫煙習慣などがある女性にはホルモン補充療法は適さないという報告です。適応基準を守れば問題無いので、専門医に相談し、自分に合う治療法を見つけてください。

2002年8月14日水曜日

「結核」について

ゲスト/大道内科・呼吸器科クリニック 大道光秀 医師

結核について教えて いただきたいのですが。

 まず認識していただきたいのは、結核は決して過去 の病気ではなく、今でも世界中で毎年800万人の患者と300万人の死者を出しており、 特に開発途上国では成人における感染症死亡の第1位であり続け、また免疫力を低下 させるエイズの蔓(まん)延とともに、今後も増加が予想される病気です。また先進 国、特に日本でも近年罹患(りかん)率が増えている疾病であります。日本では昭和 26年当時、患者数60万人の国民病であり、死亡者数10万人近くを数える「死の病」と して恐れられていました。しかし、医学が進歩し生活環境も改善され、次第にその数 は減り、昭和40年代に開発された特効薬によって患者数は激減し、一般の人のみなら ず、医療関係者まで「結核は過去の病」と思い込むまでになりました。ところが、平 成9年から新規患者数が増え始め、以降毎年上昇しています。現在、毎年4万人余り の新規患者が発生し、3千人近くの人が結核によって亡くなっています。患者数がこ こにきて増えた理由の1つには高齢者の発症が多いことです。結核が蔓延していた時 代に結核菌に感染しながら、発病せずに免疫を持っていた人が、年を取り免疫力や体 力が衰え発症するためです。発症した人が、結核と気づくのが遅れたため、周囲の人 に感染させるということも多いのです。また、ホームレスなど劣悪な環境に身を置「ている人が多い地域では極端に罹患率が高くなっています。これは診察を受けなか チたり、治療を途中でやめてしまう人が多いためです。さらに不摂生な生活や偏った 食生活で栄養状態が悪くなっている若者にも患者が増えています。活動的な年代であ るため、接客などを通して多数の人に感染させている場合があります。一方、結核菌 に全く免疫力を持たない若年者が、診断の遅れのため結核菌を排菌している人から感 染する集団発症も最近増えています。

結核にかかったら、 どうすれば良いのですか。

 結核の初期症状は風邪と 似ています。せきやたんが出る、体がだるい、微熱が続くなどです。せきが1カ月以 上続く場合は、医療機関を受診してください。医療従事者でも結核の認識が薄いとい うのが実情なので、できれば呼吸器の専門医を訪ねてください。結核は、早くに発見 し、治療さえきちんと受ければ必ず治る病気です。長患いという印象がありますが、 現在では3,4種類の薬を6~9カ月服用することで短期間に治すことができます。排菌 が無ければ通院で治すこともできます。しかし治療を途中で中断すると、耐性菌が出 現し治療が困難になりますし、死亡することもあります。また、治療に時間を要する ことから、非常に進行した状態では薬の効果が出る前に死亡することもあります。や はり早期診断、早期治療が大事です。

2002年8月7日水曜日

「助産院」について

ゲスト/あいの里助産院 嶋本幸子 助産師

助産院での出産につ いて教えてください

 助産院というのは、嘱託(しょくたく)医と連携し ながら助産師が運営している施設です。病院ではどんな分娩(ぶんべん)でも扱いま すが、助産院では正常の分娩のみを扱っています。ですから、正常な妊娠経過をたど って正常な分娩ができるように、保健指導にとても力を入れています。そして、異常 の状態を予測して万全の体制を整えながら、産婦さんが自分の「産み出す力」を最大 限に発揮できるように自然分娩のお手伝いをします。嘱託の産婦人科の先生には、妊 娠期間中に2~3回の診察と血液検査など必要な検査をそのときに依頼している助産院 が多いと思います。また妊娠中、分娩中に何か正常分娩できないような問題が起こっ たとき、助産師は救命のための緊急処置をして、速やかに嘱託医の病院施設に搬送し ます。助産院には、入院設備を持って入院分娩を取り扱うところと、自宅分娩を出張 で行っているところがあります。どちらも妊娠初期からの検診や保健指導を行ってい ますし、お産の後の母乳、育児、避妊のことなどの相談も受けられます。家族立ち会 い、夫の臍帯(さいたい)切断、個室の入院室や家族同伴入院できるところなど各助 産院で違いがあります。札幌には5軒の助産院があり、そのうち3軒で入院できます。

助産院で出産する魅 力とはなんでしょう。

 妊娠の初期から、妊婦と 助産師の関係を築き、お互いによく知り合った上で出産に臨むことができるという安 心感が大きいと思います。ゆっくりお話しする時間を十分にとれるのも助産院の特徴 の1つです。助産院はこぢんまりとしていて、家庭的な雰囲気なので「実家に帰って 産んだみたい」という方もいます。いろいろな事情に合わせて、ある程度融通が利く のも助産院ならではでしょう。「上の子の預け先が無い」「実家の事情で世話になれ ない」「ずっと家族と一緒にいたい」など困っていること、ご希望のある方は各助産 院に相談してみてください。

2002年7月24日水曜日

「いろいろな外傷」について

ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林淑人 医師

日常生活で負いやすいケガについて教えてください。

 指を切ってしまった場合ですが、指は顔や頭と並んで血行の良い部位ですので、わずかな切り傷でも思いのほか出血します。出血は、ガーゼなどで患部を圧迫するように押さえるとしばらくして止まりますが、指は常に使うものですので、早く治すためには、明らかに傷が浅い場合を除いて縫合することをお勧めします。傷が非常に深く、神経を傷つけてしまった場合、部分的な損傷ならある程度の回復は望めますが、神経が一度完全に切断されると、後遺症としてしびれや感覚の鈍さが残ることも考えられます。傷口部分より先端にしびれや違和感を感じた場合は、早めに医師へ相談してください。擦り傷の場合は、傷が浅ければ消毒と外用薬で治りますが、屋外で転倒し、顔や膝(ひざ)を擦りむいた場合は注意が必要です。傷が深いと、細かい砂が中に入り込み、入れ墨のように跡が残ってしまうことがあります(外傷性刺青=しせい=)。ケガをした後は速やかに病院で傷をよく洗浄し、ガーゼやブラシで砂をこすり落とすことが大切です。幼少時に受けた傷により、成長後も外傷性刺青が消えない例も多くあります。外傷性刺青が残ってしまった場合には、レーザー治療も有効です。また、治ったばかりの赤い傷跡は、紫外線の影響を受けやすく、色素沈着を起こしシミになってしまうこともありますので、顔の場合は要注意です。日焼け止めクリームをこまめに塗る、遮光テープを張るなどの予防をお勧めします。

犬にかまれたというケガも多く聞かれますが。

 野犬、飼い犬を問わず犬の口の中には細菌が多く、かまれると傷の奥深くまで細菌が侵入します。犬にかまれたくらいという素人判断は危険です。放置すると感染を起こし、膿(うみ)が患部にたまって周辺まで腫(は)れ上がり、患部のある腕や足全体が腫れることもあります。病院で傷口を洗浄し、細菌を洗い流すことが大切です。また、安易に縫合すると細菌を閉じ込め、化膿する危険があるので、大きな傷の場合を除いて縫合はしないのが基本です。

2002年7月17日水曜日

「貧血」について

ゲスト/つちだ消化器循環器内科 土田敏之 医師

貧血について教えてください。

 貧血は、多くの健康診断で検査項目に挙がっているポピュラーな検査ですから、健康診断で指摘されることも多いと思います。貧血とは、酸素を運ぶ赤血球が減り、血が薄くなる状態です。具体的な症状としては、倦怠(けんたい)感、息切れ、めまい、動悸(どうき)、疲れやすいなどです。貧血の原因として多いのは鉄欠乏性貧血で、成長期の鉄分不足や無理なダイエット、不摂生な食事で鉄分が不足している場合です。ビタミンB12不足、葉酸不足が原因のこともあります。また、子宮筋腫(しゅ)、胃潰瘍(かいよう)、痔(じ)など他の疾患が原因で少量の出血が続くことによる貧血の場合もあります。さらに、慢性の感染症や膠原(こうげん)病、消化器のガンなど思いがけない重大な病気が隠れていることもあります。肝臓病や甲状腺機能低下症、腎不全も疑われます。白血病や再生不良性貧血、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫などの血液疾患、溶血性貧血の場合もありますので、軽く考えるのは禁物です。

受診時にはどのような注意が必要ですか。

 先ほど述べたように重い病気のサインとして貧血が現れる場合があります。健康診断で貧血と診断されたり、貧血の症状が出たら、病院で受診してください。その際に、めまいや動悸などの具体的な症状のほかに、月経量が多い、便が黒い、または排便時に血液そのものが出る、尿の色がいつもと違う、爪(つめ)の変形がある、目や体が黄色い、手足のしびれがあるなど、該当することを医師に告げてください。また、現在薬を内服しているか、仕事などの都合で何かを吸入しているか、飲酒量、微熱の有無、鼻血や皮膚の内出血があるか、舌や口元のただれの有無、体重の減少などは、原因を診断する上で大切な情報ですから、思い当たることは医師に話してください。検査は、血液検査、エコー、CTなどの画像検査、胃や大腸のファイバーによる消化管出血の検査、造血の状態を知るための骨髄穿(せん)刺などがあります。治療は、原因疾患の治療と貧血そのものの治療となります。

2002年7月10日水曜日

「疾患による咬合異常」について

ゲスト/北大前矯正歯科クリニック 工藤章修 医師

咬合(こうごう)異常が生じる疾患として、どのようなものがありますか。

 生まれつき唇や顎(あご)が2つまたは3つに分かれている唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ)、生まれつきの顔面非対称を示し、片側の下顎の低形成が見られる第一第二鰓弓(さいきゅう)症候群、ピエールロバン症候群、トリーチャーコリンズ症候群など下顎(かがく)の低形成を示す疾患、鎖骨頭蓋(がい)異骨症、ダウン症候群などは、咬合異常を伴う先天的な疾患で、矯正治療を含め、顔面、頭部、顎と広い範囲での総合的な治療が必要になります。形成外科や口腔(こうくう)外科と、更正医療機関の矯正専門医などが協力し、幼いうちから長い時間をかけて矯正します。これらの疾患の矯正治療は、唇顎口蓋裂で1982年4月から、そのほかの疾患で2002年4月から健康保険の適用になりました。

成長の過程で生じる咬(か)み合わせの異常について教えてください。

 成長時期の発育異常によって生じる咬合異常の中でも、顎変形症には外科手術が必要な場合があります。顎が左右どちらかにずれる、前に突き出すなど、顎に異常が生じるだけではなく、顔全体が変形してしまう例もあり、食べ物の咀嚼(そしゃく)がうまくいかない、発音が不明りょうになってしまうなど機能面での不都合、また審美的な面での悩みを持つ人も多いのが実情です。一般的な矯正治療のみで改善が難しい場合は、外科手術によって上顎と下顎の骨を移動して正常な咬み合わせにします。手術前に矯正治療で歯並びを整え、手術しますが、ほとんどの場合口の中から行うので、手術痕が顔に残ることはまずありません。その後、矯正治療で咬み合わせの微調整を行います。骨格が完成する高校生以上での手術が基本となります。このような外科手術を伴う歯科矯正の場合は、健康保険の適用対象になります。また、交通事故などによって顔面に外傷を負い、顎や歯を損傷した場合、救命治療が優先されるため、咬み合わせをあまり考慮せずに外科手術を実行する場合があります。術後、咬み合わせに不都合が生じていると感じたら、矯正歯科専門医を訪ねてください。

2002年7月3日水曜日

「ペインクリニック」について

ゲスト/札幌一条クリニック 後藤康之 医師

どのような時、ペインクリニックを受診すればいいのですか。

 痛みを伴う疾患の診断、治療を行うのがペインクリニックです。頭痛、片頭痛、顔面痛、顔面神経麻痺、三叉(さんさ)神経痛、肩・腰・関節の痛み、ギックリ腰、帯状疱疹(ヘルペス)、座骨(ざこつ)神経痛、ガンによる痛み、心因性の痛みなど、痛み、しびれのある症状なら、すべて治療の対象になります。痛みがあれば緩和するというのは、アメリカでは一般的なことで、各診療科目と協力して行っている場合が多いのですが、日本ではまだ数が少ないのが現状です。「痛いくらい我慢しなければ」「手術したんだから痛くても当たり前」というような「我慢すべきこと」として痛みがとらえられているからです。しかし、痛みというのは、当事者にとって大きなストレスになり、さらにストレスによって痛みが増幅することも多いのです。痛くて眠れない、食べられないということもあります。痛みを緩和し、患者の生活の質を上げることが、痛みの緩和治療、ペインクリニックの仕事です。また、最近増えているのが、心因性の痛みです。大きな悩みやストレスが体の痛みにつながっているわけですが、患者自身にも原因がわからないため、「どんな病院を受診すべきか」「いくら検査しても悪い所が無いが、確かに痛い」と困惑している人も多いのです。このような場合も、ペインクリニックでは、治療とともに、原因を探るためにじっくり時間をかけて診断します。

具体的にはどのように痛みを緩和するのでしょうか。

 神経ブロック療法といって、注射で局所麻酔薬などを神経周辺に入れ、痛みを遮断します。一度で痛みがとれる場合もあるし、何度か通ってもらうこともあります。痛みの原因は何らかの疾患によることが多いので、治療を行うにあたっては、内科、神経内科、整形外科などいくつもの診療科との協力を得ることも肝心です。治療では神経という繊細な部分を扱うため、高い技術や豊富な経験も必要となります。痛みがあったら我慢せず、ぜひ専門医を訪ねてください。

2002年6月26日水曜日

「乳児の発熱」について

ゲスト/札幌東豊病院 若松章夫 医師

乳児の発熱について教えてください。

 乳幼児の体温は大人の体温より一般に高く、36.5~37.5度程度であれば、平熱の範疇(はんちゅう)として考えていいでしょう。それ以上であれば、発熱と考えられます。発熱した場合、真っ先にしてほしいことは、着ている服を1、2枚脱がせる、掛けている布団類を減らすことです。乳児の体温は、周囲の温度に左右されやすく、室温が高かったり、厚着をさせたりすると、体温が上昇することがよくあります。「熱があるようだから、暖かくしなくては」「汗をかかせて熱を下げよう」という方法は間違っています。熱がこもってしまい、かえって熱が下がらなくなります。手足が冷たい場合は靴下などで暖めて、体は薄着にさせて1~2時間様子を見てください。室温も暑過ぎないように、適温に調整してください。夜間の乳児の初めての発熱では、両親が驚いて、救急外来や夜間診療の病院などに駆けつけることも多いのですが、赤ちゃんの調子が悪いときに、バタバタと動くことの方が悪影響を及ぼすことも多いのです。救急外来で別の病気をもらうことも考えられます。機嫌が良く、母乳やミルクをいつも通り飲んでいれば、まず心配ないので、朝まで待ってから、かかりつけの小児科を受診するようにしてください。赤ちゃんが心地よさそうであれば、ジェルタイプの冷却シートや水まくらなどで、おでこや頭を冷やしてあげてもいいでしょう。また、生後3カ月程度までは解熱剤を使わない方がいいと考えられます。熱が下がり過ぎることによる影響の方が心配です。

赤ちゃんの発熱の原因は何だと考えられますか。

 たいていの場合は風邪です。乳児は母親から免疫を受け継いでいるので、生後しばらくは風邪をひかないと考えられていますが、実際にはひきます。兄、姉が風邪のウイルスを家に持ち込み、接触すれば感染する可能性もぐっと上がります。「乳児だから免疫がある」と過信せず、感染者との接触や人ごみを避け、抵抗力の弱い赤ちゃんを守ってあげてください。

乳児の発熱で特に気を付けることは何ですか。

 生後3カ月未満の乳児の発熱の場合、肺炎、敗血症、髄膜炎、尿路感染症などの重篤な病気が隠れていることがあります。夜間に発熱し、朝になって症状が落ち着いた状態であっても、必ず小児専門医を受診してください。

2002年6月19日水曜日

「C型肝炎」について

愛会内科・消化器科クリニック 高梨良秀 医師

C型肝炎について教えてください。

 C型肝炎とは、主に血液を介してC型肝炎ウイルスに感染し、肝臓で炎症を起こしている状態をいいます。このウイルスは1988年に発見され、翌年12月にはスクリーニング抗体検査が導入されたため、現在は一部の例外を除き、日常生活や医療行為で感染することはほとんどありませんが、次のような方は感染している可能性がありますので一度検査を受けることをおすすめします。1989年抗体検査導入以前に輸血を受けている方、以前針を換えずに行っていた時代に集団予防接種や注射などを受けた方などが代表的な例です。また感染原因不明例が約半数ありますので、肝機能障害を現在もしくは過去に経験している方も同様に考えた方が良いでしょう。今年の4月からすこやか検診でも導入されていますので利用するのも良い機会です。C型肝炎ウイルスは、感染しても自覚症状がほとんど無いため気が付かないことが多く、ウイルスの無症候性感染者(HCVキャリア)は全国に150~200万人いるといわれ、肝炎患者も含めると300~400万人ともいわれています。C型肝炎ウイルスに感染しそのまま放置すると慢性肝炎になり、肝炎が持続すると約20~30年ほどで肝硬変、肝ガンへ進行します。自然治癒することはまずありません。

治療法について教えてください。

 HCVキャリアの場合でも、いずれ肝炎を起こしてくるので、肝炎の方同様にその状態に適した定期的チェックと治療時期も含めた医師の指導が必要になります。実際のウイルスの排除にはインターフェロン療法が用いられていますが、治癒率は現在のところ約3割です。治癒率を上げるために長期投与法、抗ウイルス薬のリバビリンとの併用療法などが行われていますが、副作用や医療費の問題もありますので、専門医とよく相談し、本人の希望と病状に合わせた治療、健康管理を行うことが大切です。また、インターフェロン療法は、医師が肝臓の状態を常に把握し、治療時期を見極めることで効果が高まるので、定期的な検診を怠らないようにしてください。

2002年6月12日水曜日

「きれいな歯を保つためには」について

ゲスト/庄内歯科医院 庄内淳能 歯科医師

健康的な白い歯を保つためにはどうしたらいいでしょうか

 歯が変色する要因としては、虫歯によるもののほか、たばこやお茶などの色が付着する場合、また補綴物(ほてつぶつ)の変色、歯と人工物の境目が露出して変色して見える場合などがあります。補綴物の変色の場合は詰め替え、かぶせ替えで、きれいにできます。金属やプラスチックより、瀬戸やセラミックを素材にした方が、変色はしづらいでしょう。もちろん、どんな素材でも、しっかりケアしなくては美しさを保てません。お茶、コーヒー、たばこのヤニなどによる、エナメル質の表面の着色は、PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)によって除去することができます。しかし、PMTCだけではきれいにできないエナメル質の奥にまでしみこんでしまった汚れには、ホワイトニングが効果的です。ホワイトニングとは、エナメル質の中にある有色素成分を直接分解する方法で、歯を傷つけることなく汚れのみを落とします。

ホワイトニングはどのような方法で行いますか。

 歯科医で行う「インオフィスホワイトニング」と、歯科医の指導のもと、自宅で行う「アットホームホワイトニング」があります。どちらも酸素漂白で基本的には同じですが、薬品の濃度が異なるため、要する時間が違います。インオフィスホワイトニングは1、2回の通院、アットホームホワイトニングであれば、上と下の歯で4週間程度かかります。どちらの方法が適しているか、歯科医と相談して決めるといいでしょう。ホワイトニングというと、審美的な面だけで捉(とら)えられがちですが、本来、歯というのは、虫歯が無いことはもちろん、歯並びや咬(か)み合わせも含めて、人前で躊躇(ちゅうちょ)なく笑顔になれる、自信を持てる口元であること、それが健康な歯といえます。健康できれいな歯を保つためには、治療のほか、ブラッシング指導や、歯に関する悩みを親身に聞いて、一緒に考えてくれる掛かりつけの歯科医を見つけることが一番の近道だと思います。

2002年6月5日水曜日

「花粉症」について

ゲスト/おおやち耳鼻咽喉科クリニック 金澤勲 医師

本州では春先のスギ花粉による花粉症が有名ですが、
北海道にもあるのでしょうか。

 春の北海道の花粉症は、シラカバによるものが大半で、時期的には本州より遅い4月中旬過ぎから5月下旬にかけて多く認められます。鼻風邪と症状が似ていますが、鼻、目のかゆみが強く、いつまでも水様性の鼻汁が続くときは、耳鼻咽喉科で診察を受けてください。花粉症が疑われるときは、血液検査などで比較的簡単に原因を調べることができます。シラカバ花粉症の終わるこれからの時期は、カモガヤなどの牧草類による花粉症も多く、油断できません。また、シラカバ花粉症の患者さんには、リンゴ、桃、サクランボなどの果物を食べると、口や喉がかゆくなったり、場合によっては腫(は)れたりする果物アレルギーを合併している場合も多く、注意が必要です。

具体的な防止策、治療法を教えてください。

 花粉の飛散量は、風が強く、よく晴れた日に増加しますから、そのような日は外出を控えたり、部屋の窓を開けないようにした方がいいでしょう。外出先から戻ったら、うがいをしたり、着ていた衣類を外でよく払うなどの配慮も必要です。また外出時にマスクをすることも予防効果があります。ただし防止策だけでは、どうしても限界がありますので、症状がつらい時には様々な薬剤を用いて治療する必要がでてきます。治療の中心となる内服の抗アレルギー剤は症状をやわらげ、最近では眠気が非常に少なく飲みやすいものも増えています。鼻づまりがひどい場合は、ステロイド剤や血管収縮剤などの点鼻薬が有効な場合が多いのですが、つけるとすぐ楽になるからといって、市販されている血管収縮剤を自己流で無節操に使用していると、もっと重症な鼻づまりになる可能性がありますので注意してください。毎年、花粉症に悩まされている方は、原因になっている花粉が飛び始める2週間前くらいから、予防的に抗アレルギー剤を内服すると、そのシーズンの症状が軽減されるといわれていますので、早めに耳鼻咽喉科を受診してみてください。

2002年5月22日水曜日

「尿路結石」について

ゲスト/元町泌尿器科クリニック 西村昌宏 医師

尿路結石について教えてください。

 腎臓内にできた結石が、腎臓と膀胱(ぼうこう)を結ぶ尿管に入り、「仙痛発作」と呼ばれる激痛を引き起こします。痛みは背中から側腹部、下腹部に広がる場合があります。日本人の20~25人に1人程度が経験するといわれる疾患で、年齢、性別にかかわらず発症し、また一度かかった人が再発する可能性は4割を超えています。原因は多くの場合不明ですが、体質や食事習慣、飲料水などが関与しているといわれています。結石の成分は、尿に溶け込んでいるカルシウムやシュウ酸、リン酸などで、これらが何らかの原因で結晶となり、有機物質も取り込んで石のように固まってしまったものです。尿管が結石でふさがれると尿が停滞し、上部の尿管や腎臓が腫(は)れた状態になります。

どのような治療方法がありますか。

 石が1cm以下であれば、水分を多く摂(と)って尿と一緒に自然に排出されるのを待ちます。自然排石されない場合や石が大きい場合は、手術が必要になります。開腹はせず、体の外から衝撃波を当てて砕石する「ESWL」という方法や、細い内視鏡を尿道、膀胱を通して尿管内に入れ、結石を直接見てレーザー照射で砕く「TUL」という方法が一般的です。ESWLは、位置によっては砕けず、また肥満の人は砕けにくいという特徴があり、砕石の確率は約7割です。TULは、目で確認しながらの照射なので、ほぼ確実に砕石できますが、尿管が曲がっていたり、石の位置によっては内視鏡が届かないこともあります。どちらの方法にも一長一短がありますから、結石の場所、形、硬さ、大きさなどを考慮し、治療法を決定します。ESWLの場合は、日帰りから1泊2日の入院、TULの場合は2、3日の入院で治療できます。治療せずに痛みが治まってしまうこともありますが、腎臓にダメージを与えていることもあるので、とにかく仙痛に襲われたらすぐに泌尿器科を受診してください。夏場は水分不足から尿路結石を発症する人が多いので、汗をかいたらまめに水分を補給してください。

2002年5月15日水曜日

「紫外線の影響」について

ゲスト/かとう皮フ科クリニック 加藤文博 医師

紫外線が肌に与える影響について教えてください。

 太陽から届く光線は、波長の長いものから赤外線・可視光線・紫外線に分類されます。波長が短いほどエネルギーが強く、肌にダメージを与えます。紫外線を細かく分類すると、波長の長いものから、UV-A、UV-B、UV-Cとなります。UV-Aは皮膚の深い層まで届いてシワやたるみの原因になります。UV-Bは肌が赤く日焼けする原因になります。UV-Cは、DNAを破壊してしまいます。このうち、オゾン層を通過して地表に到達するのが、UV-AとUV-Bの一部で、皮膚の内側から老化に作用し、シミ、シワ、ホクロの原因になります。元々の肌が白いほど紫外線に弱く、黒人よりも白人の方が、また日本人でも肌色が黒い人より、色白で太陽に当たるとすぐ赤くなる人の方が、強く影響を受けます。

効果的な紫外線対策を教えてください。

 紫外線は、5月から7月にかけてが最も強い季節で、時間帯としては午前10時から午後2時ごろまでがピークになります。屋外に出るときは、サンスクリーンと呼ばれる日焼け止めクリームを顔など露出する部分に塗りましょう。日焼け防止を目的とした化粧品には、通常「SPF値」が表示されています。これは、日焼けを防ぐ時間を表しており、日本で日常生活の中で使用するのであれば、10~30程度で十分でしょう。リゾート地などでは、50くらいの数値の高いものを使用しますが、いずれにしても汗などで流れてしまうので、3、4時間おきに塗り直さなければ効果がありません。このほかに、日傘、帽子、長袖など、とにかく直射日光を避ける服装が効果的です。日焼けした子供は健康的というイメージがありますが、30~40歳代で出るシミ、シワ、ホクロは、子供時代からの日焼けの蓄積によって出現するのです。紫外線が原因の皮膚ガンも、最近日本で増えつつあります。オゾン層の破壊によって有害な紫外線が増えていることからも、肌の健康を第一に考えれば、紫外線は避けるに越したことはありません。

2002年5月8日水曜日

「歯の健康」について

ゲスト/石丸歯科  石丸俊春 歯科医師

虫歯予防について教えてください。

 まず認識していただきたいのは、虫歯はほぼ100%予防できるということです。ケアさえ完全なら、一生涯虫歯ゼロで過ごすことができるのです。歯のケアには、ホームケアとプロフェッショナルケアの2種類があります。ホームケアの基本は毎日の歯磨きです。毎食後の歯磨き、就寝前の歯磨きのうち、1度は徹底して磨く時間にしてください。この毎日のホームケアを、より効果的に行うために必要なのが、プロフェッショナルケアです。最初に、虫歯になりやすい、なりづらいなど歯や唾(だ)液の質を判断し、また生え方、歯の形、歯並びなどから、もっとも効果的なブラッシング方法などホームケアのコツを歯科医がアドバイスします。個人に合ったブラッシング方法によって、効率的な磨き方を学ぶことができます。実際にブラッシングを何度か指導し、さらに年に数回、プロによるチェックによって、歯の健康を守ります。もちろん、家では取りきれない歯石や歯の汚れもケアします。ホームケアとプロフェッショナルケアがうまく連動すれば、虫歯のない一生も夢ではありません。

歯の健康を保つために、どのような点に注意すればいいですか。

 現在の虫歯・歯周病治療は「ミニマムインターベーション(最小の侵襲)」といって、極力削らない、抜かない治療が主流です。具体的にはう蝕(虫歯)の正しい診断から治療計画を立て、できるだけ削らない、抜かない治療を行います。この間、患者さんとのコミュニケーションを取りながら、十分に説明し、理解をしてもらいます。このような信頼関係を築ける歯科医師であれば、今後のケアについても安心して任せることができます。「ブラッシングについてアドバイスを」と、要求すればいいのです。十分な説明もなく治療するようであれば、遠慮無く病状、治療内容、予後の見通しなどについて質問してよいと思います。「おいしく食べる、楽しい食事」というのは、人生の質にかかわる問題です。6月4日の虫歯予防デーを前に、ぜひ歯の健康管理という問題を真剣に考えてみてください。

2002年5月1日水曜日

「痔(じ)ろう」について

ゲスト/札幌いしやま病院  樽見研 医師

痔ろうについて教えてください。

 痔ろうは、直腸と肛門の境界部分にある肛門陰窩(か)というすき間に細菌が入って感染することによって、肛門周囲膿瘍(のうよう)になることから始まります。肛門周辺に膿(うみ)がたまり、炎症を起こして激しい痛みや発熱に襲われます。しかし、膿瘍が破れたり、病院で切開して膿が出きってしまうと、痛みも治まり、完治したかのように感じます。実際には、肛門周囲膿瘍によって肛門内と皮膚との間にできた細菌の通り道が、トンネル状にじわじわと広がっていきます。この状態を痔ろうといいます。痔ろう初期の自覚症状としては、いったん痔ろうが完成されてしまうと、違和感や鈍痛、痔ろうによって出来た穴から膿が出て下着を汚す程度です。しかし、排便のたびに細菌に侵されるため、痔ろうは枝分かれして複雑に広がり、肛門周囲にできる出口の穴が複数になる場合もあります。痔ろうになる原因ははっきりしていません。30~40代の人に多く、圧倒的に男性の罹患(りかん)率が高いようです。遺伝的なものではなく、特に発病のきっかけとなる要因も特定できませんから、予防法もありません。あえていうなら、下痢や体の抵抗力の低下を招く不摂生などを避けましょう。

痔ろうの治療はどのように行われますか。

 肛門周囲膿瘍の時点では膿を出す応急処置をすると、症状が消えます。しかし、痔ろうの根本的な治療にはなりません。痔ろうになってしまった場合、手術によって病巣を摘出することが唯一の治療法です。手術で問題となるのが括約筋をいかに傷つけないかということです。括約筋を切れば術後肛門のしまりが悪くなります。複雑な痔ろうの手術は技術的に難しいので、経験の多い病院を選ぶことが肝心です。病巣が深い場合は括約筋温存手術が不可能になってしまうこともあり、早めの受診が必要です。手術に伴う入院期間は軽いものなら2、3日、重症の場合は3週間程度です。まれに痔ろうがガンに移行することもあります。また、難病に指定されているクローン病の合併症として現れる場合もあります。下着に膿が付着したら、痔ろうを疑い専門医に相談してください。

2002年4月24日水曜日

「虚血性心疾患~狭心症と心筋梗塞」について

ゲスト/朝日内科クリニック 富田文 医師

狭心症について教えてください。

 狭心症は、心臓の筋肉(心筋)に血液を送る冠動脈という血管が、動脈硬化などにより狭くなったり、詰まったりした結果、心筋に血液が不足して発症する病気です。狭心症には、歩行や階段を上るなどの運動時に発症する労作性狭心症と、安静時に起こる安静時狭心症があります。労作性狭心症は、労作(運動)により心臓の仕事量が増えた際、狭くなっていた血管から必要量の血液が供給されず、左前胸部の圧迫感や痛みなどの発作に襲われる症状をいいます。安静時狭心症は、冠動脈がけいれんする冠攣(れん)縮によって虚血となるもので、夜中や朝方に多く、動脈硬化が軽度であったり、特に危険因子のない場合でも起きることがあります。

心筋梗塞(こうそく)について教えてください。

 心筋梗塞は、冠動脈が完全に詰まって血液が供給されなくなり、心筋が部分的に壊死(えし)する病気です。発作は、狭心症が5分から、長くとも20分なのに対し、心筋梗塞は30分以上持続し、より激しい痛みや吐き気・嘔吐(おうと)などを伴います。発症後、時間の経過とともに心臓へのダメージが大きくなるので、早期の治療が大切です。治療には、詰まった冠動脈を広げて血流を再開させる再灌(かん)流療法があり、発作から6時間以内に行えば、壊死する範囲を狭めることが可能です。壊死した範囲が狭ければ、ほかの部位心筋が補うことにより心臓の機能低下を防ぎ、治療後の早い回復が望めます。

虚血性心疾患の治療と予防について教えてください。

 前述の再灌流療法には、冠動脈を風船で広げる風船療法や、静脈に薬剤を注射して血栓を溶かす方法があります。ほかの血管を使って迂回(うかい)路を作り、血液の流れを回復させる冠動脈バイパス手術も有効です。狭心症の場合、症状によっては薬物療法も考えられます。虚血性心疾患は生活習慣病の一つですので、予防や治療には食事や喫煙などの生活習慣の改善が大切です。糖尿病、高血圧など危険因子のある方で、日常生活で心臓に違和感や痛みを感じる場合は、専門医への相談をおすすめします。

2002年4月17日水曜日

「増える性感染症」について

ゲスト/札幌東豊病院 南邦弘 医師

最近、性感染症で受診する人が増えているそうですが。

 特に若い女性の受診が多く、淋(りん)病やケジラミなども見られますが、圧倒的に多いのは性器クラミジア感染症です。クラミジアというのは、ウイルスと細菌の中間くらいの大きさの病原菌で、主に性行為によって感染します。男性が感染すると多少の症状が出ますが、女性の場合、ほとんど自覚症状がありません。これが、クラミジアをまん延させる最大の要因です。症状が無いからといって、放置しておくと女性の場合、子宮内膜炎、卵管炎、骨盤腹膜炎などを引き起こす場合もあり、不妊症の原因にもなります。また、妊娠した場合、出産時に母子感染する可能性があるため、札幌市内のほとんどの産科では妊娠時に感染の有無を検査しますが、地域、病院によっては検査しない所も多いので、一度検査を受けることを強くおすすめします。実際に感染していても、症状が進行していなければ、抗生物質を2週間程度投与すれば完治します。若い人の場合、途中で薬をやめてしまい、治り切らないことも多いのが実状です。性感染症である以上、男女いずれか一方が感染していたら、パートナーも感染している可能性が大です。必ず、男女一緒に治療してください。

クラミジア以外で増えているものはありますか。

 性感染症すべてが増えています。特に若年層に顕著で、先進国でこんなに増えているのは日本くらいではないでしょうか。中でも心配なのは、ヒトパピロマウイルスの感染です。これは、米粒のようなイボがびっしりできる尖圭(せんけい)コンジロームという感染症の原因となるウイルスですが、最近の研究で子宮頚(けい)ガンの原因の一つであることがわかってきました。子宮ガンには子宮体ガンと子宮頚ガンの2種類がありますが、頚ガンは若年層で発症する人が増加しています。子宮ガンについては、20代になったらガン検診を積極的に受けてください。早期発見、早期治療ができれば、ほぼ完治するガンです。その後の妊娠や出産も可能です。いずれにしても、性感染症にはコンドームの利用が効果的な予防策です。

2002年4月10日水曜日

「女性の尿失禁」について

ゲスト/元町泌尿器科クリニック 西村昌宏 医師

女性の尿失禁について教えてください

 女性の尿道は約4cmと短いうえ、尿の禁制を保つ尿道括約筋の力が男性に比べて弱く、20代、30代の健康な女性でも、産後などに尿失禁を経験する場合が少なくありません。特に、数回の出産、骨盤内の手術経験、加齢、肥満などの要因が重なると、骨盤底筋群が弱くなるため膀胱(ぼうこう)が下がり、くしゃみやせき、重い物を持ち上げる時などにかかる腹圧で、尿失禁を起こしやすくなります(腹圧性尿失禁)。女性に最も多い尿失禁はこのタイプですが、ほかに、膀胱炎や神経障害から膀胱が勝手に収縮し、トイレまで間に合わず漏らしてしまう切迫性尿失禁や、腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁の混合型もあります。

腹圧性尿失禁の治療法は。

 症状が軽い場合は、膀胱の下垂を防ぐため骨盤底筋群を鍛える体操や、膀胱の出口を絞める作用のある薬を使った治療を行います。体操の方法は、肛門や膣のまわりの筋肉を3秒から10秒間収縮させるのを1回とし、1日50回から100回、3カ月間を目安に継続すれば効果が現れるといわれています。体操と薬物療法の併行で、症状が改善されたという報告も多く聞かれますが、いずれも継続が必要であり、体操は習慣として続けることが大切です。このような治療で効果が無い、初めから症状が重いなどの場合には、手術治療をおすすめします。これまでの手術は、ナイロンの糸で膀胱の出口を釣り上げるステイミー法が主流でしたが、最近では、尿道の中間部を特殊なメッシュ状の樹脂テープで支えるTVT手術が考案され、実施している施設はまだ少数ですが良い成績が報告されています。手術時間は約30分、入院期間は5日程で、体を切るのは膣の1箇所と下腹部2箇所をいずれも1cm程度です。女性の場合、恥ずかしいという理由からなかなか泌尿器科を訪れない方もいますが、実際には尿失禁で悩んでいる方は数多くいます。放っておいても良くならず、悪化することも考えられますので、症状が軽いうちに、専門医に相談することをおすすめします。

「生活習慣病」について

ゲスト/北広島中央クリニック 今井良成 医師

生活習慣病にはどんな病気がありますか。

 高血圧や、血液中のブドウ糖をエネルギーに変えるインスリンの作用が不足し、高血糖状態が続く糖尿病、血液中のコレステロールや中性脂肪の数値が高い高脂血症などが多くみられます。これらは初期には特に自覚症状が無いのですが、進行すると動脈硬化をきたし、心筋梗塞(こうそく)や狭心症などの心臓疾患、脳梗塞、足の動脈が詰まる閉塞性動脈硬化症など重大な合併症を引き起こします。

どのような治療法がありますか。

 生活習慣病は、その名の通り生活習慣に起因するものですから、タンパク質、糖質、脂肪、ビタミン類など栄養素のバランスを考えながら1日の総カロリー摂取量を調整する食事療法、ウオーキングや水中歩行など適度な運動を生活に取り入れる運動療法が治療の基本となります。カロリー摂取量、運動の種類や時間は、症状や体質により異なりますので、専門医や栄養士に相談の上で行ってください。また、高血圧をはじめ多くの生活習慣病には、ストレスも悪影響を及ぼしますので、休暇を取ってのんびり過ごすことも大切です。

近年、増えている生活習慣病はありますか。

 慢性肺気腫(しゅ)という肺の病気も、喫煙歴が関与しているという意味で生活習慣病といえます。長年の喫煙により、酸素と二酸化炭素を交換する場所である肺胞が慢性的に拡張し、喘鳴(ぜんめい)や息切れ、呼吸困難などの症状をきたす病気です。症状が進行すると酸素吸入が必要になりますが、最近では在宅酸素療法が少しずつ普及し、患者さんの生活の質の改善に役立っています。また、食生活の欧米化、幼年期からの慢性的な運動不足に加え、不規則な食事も原因の一つとして、これまで中年以降の病気といった印象の強かった2型糖尿病や高脂血症が、若い人でも見られるようになってきています。生活習慣病の治療は、患者一人ではなく家族全体にもかかわる問題ですから、定期的な検診で自分の健康状態を把握し、早期の生活改善をおすすめします。

2002年3月20日水曜日

「アレルギー性鼻炎」について

ゲスト/つちだ消化器循環器内科 土田敏之 医師

アレルギー性鼻炎とはどのような症状でしょうか。

 発作的にくしゃみが何度も出て、鼻水が止まらなくなる、あるいは鼻が詰まる。また、人によっては涙目になったりする症状があげられます。その人にとっての異物が鼻に入ってきたとき、異物を排除しようとして、くしゃみや鼻水で追い出そうとして出る反応です。

原因としては、どんなものがありますか。

 一番多いのはホコリ、ダニによるものです。次に、シラカバやイネ科の植物などの花粉によるもので、花粉が飛散する時期に発症します。本州では春先のスギによる花粉症が有名です。北海道ではスギ花粉症はあまり見られません。そして、動物の毛、フケによるものが続きます。予防法としては、ホコリ、ダニの場合は、窓を開けて空気を入れ替え、まめに掃除することが効果的です。逆に、花粉の場合は原因となる花粉の飛散時期には窓をできるだけ閉めて花粉の侵入を防ぎましょう。外出時には防じんマスクをしたり、家に入る前に体や衣類についた花粉を払うと、ある程度防ぐことができます。動物のアレルギーに関しては、接触しないことが一番です。また、体力が落ちていたり、寝不足や疲労、強いストレスを感じているときなど、個人の体調によって発症することもあります。日ごろから体力をつけ、規則正しい生活を送ることも大事な予防法です。

どのような治療法がありますか。

 抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤などの薬物治療が一般的で、薬によって症状を軽くすることができます。また、花粉やホコリ、ダニなどの原因抗原を完全に身の回りから取り除ければ問題ありませんが、現実的には不可能です。そこで、根本的な治療となるのが減感作療法です。原因抗原を体に入れて、抵抗力をつけるという治療です。原因抗原のエキスを薄めて腕に注射します。間隔をあけて、薄いものを少量から徐々に量を増やし、また濃度を濃くしていきます。個人差はありますが、2カ月以上はかかる治療法です。

2002年3月19日火曜日

「矯正治療の気になる点」について

ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 歯科医師

歯列矯正というと、装置が目立つのではないかと心配ですが。

 一般的な矯正は、歯の外側から金属や透明な材質の小さなブラケットを付け、それに細いワイヤを通して歯を動かす固定式の装置を使います。以前は銀色のものがほとんどで、大変目立ったのですが、近ごろは目立たない種類も増えてきました。どうしても矯正装置が見えることに抵抗があるという人には、歯の裏側からの矯正という方法もあります。装置が見えないため、外見が気になる若い女性や人と接する職業の方に適しています。また、激しいスポーツをする人にも、装置でケガをする可能性が低いのでお勧めします。外側からの矯正に比べて多少治療費が高くなりますが、効果も費やす時間も同じです。ただ、見づらくなるため、歯磨きなど歯のケアについては若干しづらくなります。また、この治療法を行っていない矯正歯科もありますので、希望する場合はあらかじめ確認してください。

大人の矯正に年齢は関係ありますか。

 基本的に年齢は関係ありません。成人の矯正治療の場合、不正咬合(こうごう)のほかに歯周病や歯の欠損などの問題を抱えていることも多く、咬(か)み合わせを正しくするとともに口の中の健康を回復するという意味合いがあります。奥歯の欠損した部分に埋没している親知らずを引っ張り出して空間を埋めるなどという治療も可能です。矯正専門医と歯科医師が協力して治療するのが一般的です。歯科矯正は10代前半が1番スムーズに治療できますが、逆に外科手術を伴う矯正治療の場合は、骨格が出来上がった高校生以上にならないと行えません。大きく顎(あご)が飛び出す、曲がっているなどの顎(がく)変形症の人が主な対象です。この場合は口腔(こうくう)外科、形成外科と矯正専門医が協力して治療に当たります。手術といっても口の中から行うので傷跡はつきません。歯を動かす期間は3年程度で、手術前の矯正、手術後の調整を行います。一般の矯正治療は保険診療の対象外ですが、外科治療を伴う場合は保険診療対象となります。

2002年3月13日水曜日

「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」について

ゲスト/森皮フ科医院 森尚隆 医師

帯状疱疹とはどんな病気ですか。

 小さな水膨れができ、ピリピリと痛む病気で、かつてかかった水ぼうそうのウイルスが原因です。他人から感染することは滅多になく、ほとんどの場合、神経の節に潜んでいたウイルスが、風邪などの免疫力の低下をきっかけに動き出し発病します。一般に症状は、痛みが起こり、その後皮膚にブツブツと赤い発疹が現れ、小さな水膨れが広がります。顔、胸から背中、お腹(なか)などによくできますが、神経に沿って身体の片側に帯状に広がります。人によっては手足などさまざまな部位に出ることもあります。

発病したらどのような点に注意すればいいですか。

 免疫力の回復を促すために、十分な休息と睡眠、栄養を取るように心がけましょう。水膨れを破くと細菌感染が起こりやすくなるので注意が必要です。また、神経に沿って痛むため、当初帯状疱疹と思わず、神経痛として湿布などで冷やしてしまう場合があります。これは間違った治療法で、皮膚症状が消えた後も、いつまでもピリピリとした神経の痛みが残ってしまうことがあります。ウイルス性ですが、普通は人にうつりません。ただ、水ぼうそうにかかった経験のない人には、感染することがあります。この場合は、水ぼうそうとして発症します。水ぼうそうを経験していない子どもには接触しない方がいいでしょう。

どのような治療法がありますか。

 症状に応じて抗ウイルス剤、鎮痛剤、ビタミン剤などで治療します。また、半導体レーザー、スーパーライザー、キセノンライトなどの治療で痛みを緩和することができます。あまりに痛みがひどい場合は、神経ブロックが有効です。いずれにしても発症後、早い時期に治療を開始した方が早く治ります。また、60歳以上の人に多い病気ですが、若くして発症すると痛みではなくかゆみを感じることがあります。帯状疱疹は治っても、その後に皮膚に瘢痕(はんこん)や神経痛を残すことがあります。おかしいと思ったら速やかに専門医に相談した方がいいでしょう。

2002年3月6日水曜日

「長期間続くせき」について

ゲスト/大道内科・呼吸器科クリニック 大道光秀 医師

風邪が治った後もせきがしつこく出るという人がいますが。

 専門的には、せきが8週間以上続く場合を慢性咳嗽(がいそう)といいますが、2~4週間以上せきが続くなら、専門医を受診することをおすすめします。原因を特定するためにレントゲンを撮ったり、たんを検査します。風邪から肺炎に移行していたり、肺がん、肺結核に罹患(りかん)しているという恐れもあります。結核は、過去の病気と思われがちですが、最近でも日本国内で多く発症しています。結核は世界でいまだに1年に300万人くらいの死亡者を出しており、若者と大人の重大な感染症といえます。放っておくと、肺結核の集団感染を引き起こしてしまうことにもなりかねません。薬を投与して治すことができるのに、気が付かないばかりに手遅れになることもあります。また、喫煙の習慣が無くても肺がんになる可能性があります。大きな病気を見逃さないためにも、「風邪が長引いている」などと決め付けず、一度検査を受けてみましょう。

風邪をひいてもいないのに、せきが続くという場合は、どのような原因が疑われますか。

 最近多いのが、アレルギーによる慢性的なせきです。風邪などがきっかけになって、ハウスダストや花粉などの原因によるアレルギー性のせきが続くのです。アレルギーによるせきこみから、気管支喘息(ぜんそく)に移行する場合もあります。熱が無く、レントゲンでも異常が無いのにせきが続く場合は、一度、アレルギー素因があるか血液検査をしてみるといいでしょう。アレルギーによるせきであれば、喘息の薬に類似するものが良く効きます。ただし、アレルギーである以上、根本的な治療としては体質改善をする必要がありますが、これはなかなか困難です。また、本州ではスギ花粉症のシーズンですが、北海道では初夏に発症するシラカバや、夏から秋にかけてのイネ科(カモガヤなど)やキク科(ブタクサ、ヨモギなど)の植物による花粉症が多く見られます。せきが続くと体力を消耗させます。「たかがせき」と思わずに、気管支からの危険信号と捉(とら)え、原因を特定し、それに合った治療を受けましょう。

2002年2月27日水曜日

「精神科医の勧めるストレス対策」について

ゲスト/岡本病院 村木彰 医師

現在、ストレスによる体の不調を訴える人も多いようですが。

 客観的に考えると飢餓や戦争など、大きな恐怖の無い現在の日本社会は、悪いストレスの少ない、むしろ恵まれた環境にあるといっていいでしょう。しかし、大きなストレスのない社会で育った日本人には、ささいなことが精神的なストレスになってしまうのです。この傾向は今後も続くでしょう。

先生が勧めるストレス対策をご紹介いただけますか。

 「ストレス」は生きている限り避けられないものです。それに耐えられるように適度な負荷、鍛練が必要なのです。また、仕事や家庭生活といった、日常とは全く別の世界を持つことが良い対策になります。よくいわれる「趣味を持て」ということです。とはいっても、夢中になれる趣味はそう簡単に見つかるものではありません。何かストレスを発散できる趣味が欲しい、という人にお勧めしたいことは、北海道を代表するプロスポーツチームである「コンサドーレ札幌」の応援です。これは、道民向けの最も具体的なアドバイスの一つです。

コンサドーレ札幌の応援がストレス対策になるのですか。

 そうです。地元チームで、感情移入できることが重要です。特にスタジアムに足を運んでの応援をお勧めします。試合前の期待感と緊張、得点シーンや勝利の瞬間の興奮と歓喜は日常生活を忘れさせてくれます。応援に「参加」することで得られる感動は、精神的にとても良い刺激となります。コンサドーレ札幌の応援は、短期的には試合ごとの感動が得られますが、長期的にもさまざまな期待や喜び、さらに不安や悲しみさえ味わうことがあり、いわば、もうひとつの別の人生を体験することができるのです。また、コンサドーレ札幌は、ファン層が幅広いのが特徴で、一家揃(そろ)ってレプリカユニホームを着ての応援も目立ちます。親子で応援を通して共通の話題が尽きなければ、非行など家庭内の心配事も減ってくるでしょう。総合的なストレス対策として、有効な手段といえます。

2002年2月23日土曜日

「ノロウイルス感染症」について

ゲスト/岡本病院 松浦 信博 医師

ノロウイルス感染症について教えてください。

 1968年に米国オハイオ州ノーウォークの小学校で、急性胃腸炎の集団感染が発生し、ウイルスが発見され、ノーウォークウイルスと呼ばれていました。その後研究が進み、小型球形ウイルスと呼ばれるようになり、ノロウイルスとして正式に命名されたのは2002年です。集団感染で死者が出るなどして注目されていますが、昨年まで死亡例の報告はゼロでした。感染した場合、症状としては、吐き気、嘔吐(おうと)、下痢、腹痛、発熱があり、たいていの場合1~2日で症状が治まります。子どもには嘔吐、大人には下痢が多く見られます。また、感染してもまったく症状の現れない人もいます。
 感染源としては、汚染されたカキなどの二枚貝を生または十分に加熱しないで食べた場合や、調理師や主婦などの食品取扱者が感染し、その人を介して汚染した食品を食べた場合、感染者の便や吐物から二次感染する場合などがあげられます。少量でも感染し、症状が治まっても2~3週間はウイルスを排出します。

治療と予防について教えてください。

 この感染症に効果のある薬品は今のところありません。嘔吐、下痢があったら早めに受診し、症状が治まるまで安静に過ごしてください。小さなお子さんやお年寄りは、嘔吐、下痢で脱水症状にならないよう、小まめに水分を補給してください。
 二次感染防止のためには、徹底した手洗いが有効です。帰宅したら、トイレの後、調理の前、食事の前、必ず石けんで手を洗ってください。また、患者の吐物に素手で触れないように注意しましょう。ノロウイルスには塩素系の漂白剤が有効です。吐いた場所や便が付いた場所を、100倍に薄めた漂白剤を染み込ませたペーパータオルでふき、30分ほどしたら水ふきしましょう。吐物や便で汚れた衣類、寝具なども、漂白剤で消毒してから洗濯します。下痢をしている場合は最後に入浴するか、シャワーだけにして、お尻を石けんでよく洗います。また、嘔吐や下痢症状がある人とタオルなどを共用しないようにしましょう。

2002年2月20日水曜日

「噛(か)むことの重要性」について

ゲスト/よこやま矯正歯科 横山一徳 医師

噛む力が弱いと、どのような弊害がありますか。

 第一に、咀嚼(そしゃく)が十分じゃない状態で飲み込むと、唾液があまり分泌されません。唾液には消化酵素が含まれていますから、胃に負担がかかることになります。また、噛むという動作で顎(あご)の筋肉を使うことによって、脳の血流量やホルモン分泌が増え、知能や体力の向上に影響し、さらに寝たきりやボケの防止に効果があることがわかってきました。最近では、学校の現場から、「噛む力の差によって集中力や積極性に差が出る」「噛む力が強い子は、ねばり強い」という報告もされています。

最近、子どもたちの噛む力が弱くなっていると聞きますが。

 カレーやスパゲティ、ハンバーグのような食べ物は、あまり噛まずに食べることができます。昔よりも軟らかい食べ物が食卓の中心になってきているため、子どもや若者の噛む力が弱くなっています。さらに、今の子どもたちは食事中に水やジュース、お茶などを飲みながら食べるので、咀嚼せずに飲み込んでしまう傾向があります。また、軟らかい食べ物は、歯が汚れやすく虫歯の原因にもなりますので、硬いものや繊維質のものをバランス良く食事に取り入れることが必要です。噛む力が弱いと、顔つき自体は細面で顎の小さいスマートな印象に、逆に噛む力の強い人は、角張った顔つきになるといわれています。

咬(か)み合わせが悪くて、しっかり噛めないという場合もありますか。

 上の歯や顎が出ている上顎(がく)前突、逆に下が出ている下顎前突、深い咬み合わせの過蓋咬合(かがいこうごう)、前歯が開いている開咬(かいこう)などが、咬み合わせが悪い不正咬合です。歯が咬み合っていないので上手に噛めない、顎や顎関節に悪い影響が出るなどの心配があります。また、年齢が高くなるほど悪影響が出てきますから、前歯が永久歯に生え替わり始めたころ、一度専門医に診察してもらうことをおすすめします。矯正治療は期間や治療費が多少かかりますが、いつまでもおいしく健康的に食事をする快適さや充足感とは引き換えられません。

2002年2月13日水曜日

「近視の矯正手術」について

ゲスト/誠心眼科病院 前川浩 医師

コンタクトレンズに異物感がある、眼鏡は疲れる、日常的に不便があるといった場合、手術によって近視矯正をすることができますか。

 目は、入ってきた光を角膜と水晶体で屈折させ、網膜上の一点に焦点を合わせています。しかし角膜のカーブが強すぎたり、眼球が前後に長くなってしまった場合、網膜の前方で焦点が合ってしまい、近くのものは見えても遠くのものがよく見えないという状態が近視です。乱視は主に角膜にひずみがある場合に起こります。現在、毎年数百万人が受けているといわれるポピュラーな近視矯正手術は、角膜の実質層の一部を特殊なレーザー光線で削り、屈折率を変えて視力を矯正する治療です。乱視を伴う場合は、乱視もある程度矯正できます。ただし、乱視の単独の矯正手術は、現在認可されていません。また、目に病気のある人、角膜が異常に薄い人など、手術に適さない人もいます。

手術の痛みや危険性はありますか。

 「LASIK(レーシック)」と呼ばれるこの手術は、1000分の1ミリ単位で角膜表面を削ることのできる特殊なエキシマレーザーの実用化によって、1995年から臨床で行われるようになりました。高度な技術が必要ですが、手術自体は目薬による麻酔なので痛みもなく、片目15分程度で終了します。もちろん入院の必要はありません。視力は通常、1週間程度で安定します。まったくリスクが無いわけではありませんが、大きな合併症の報告はほとんどありません。費用については、コンタクトレンズや眼鏡と同様に、健康保険の適用外になります。

手術でどの程度視力が回復しますか。

 術前の近視・乱視の程度によりますが、全体の約90%の人が0.7以上、80%の人が1.0まで回復すると報告されています。矯正が弱い場合は追加手術も可能です。個人差があるので事前に精密適正検査が必要です。角膜というデリケートな部分の手術ですから、十分に説明を受け、自分で納得してから手術することをおすすめします。事前説明やアフターフォローのしっかりした眼科専門医を選びましょう。

2002年2月6日水曜日

「顔面の青あざ(太田母斑=はん=)」について

ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林淑人 医師

太田母斑とはどんなあざですか。

 目の周りや頬(ほお)、こめかみなどに見られる青いあざです。ほとんどが生後まもなく目立ってくる生まれつきのものですが、思春期ころから現れる場合もあります。青あざといっても、実際には青色だけではなく、茶色や黒色に近い色など、人によってさまざまです。通常は顔面の片側に見られ、あざの広さや濃さなどは、人によってまちまちです。眼球の結膜や口腔粘膜にも見られることがあります。性別では、男性よりも女性の方に多く、また自然に消えることはありません。

治療方法は、どのようなものがありますか。

 以前はドライアイスによる凍結治療や皮膚移植などが行われていましたが、あまり効果的な治療とはいえませんでした。しかし、最近はレーザーによる治療が主流になり成果を上げています。シミやそばかすの治療にも効果があるQスイッチ付アレキサンドライトレーザーやルビーレーザーなどが治療に用いられます。すべてのあざにこれらのレーザー治療が可能というわけではありませんが、太田母斑には非常に効果的です。ただ、一回のレーザー治療であざがすっかり消えるというわけではなく、3、4カ月おきに何度か繰り返す必要があります。その回数は、あざの濃さ、広さなどによって異なります。治療前に麻酔クリームを塗るなどしますので痛みも少なく、通院のみで治療できます。治療後は、1週間ほど外用剤を塗って治療部をガーゼなどで保護する必要があります。それ以後は紫外線の影響を避けるために日焼け止め(遮光)が必要になります。レーザーの種類によっては健康保険も適用されるので、ぜひ専門医に相談してください。

治療に適した年齢はありますか。

 基本的にはどの年代の人にも治療可能です。ただ、太田母斑は成長と共に広く濃くなる場合が多いので、幼・小児期に治療した方が効果的といわれています。生後6カ月くらいから治療可能です。もちろん高齢の方でも治療できます。

2002年1月30日水曜日

「脳卒中」について

ゲスト/川沿脳神経外科クリニック 蝶野吉美 医師

脳卒中について教えてください。

「卒」は卒然の卒、つまり突然・にわかの意、「中」は命中の中、つまり当たるの意味です。脳に突然当たって意識を失ったり、手足が麻痺することを指します。昔、お年寄りが突然倒れて、三日三晩大いびきをかいて大往生などといわれたのも実は脳卒中だったのかもしれません。原因は脳の血行障害ですが、これには血管が詰まって起きる脳梗塞(こうそく)と血管が破れて起きる脳出血(脳溢=いっ=血ともいわれ脳の中に出血するもの)、くも膜下出血(脳動脈瘤=りゅう=が破裂して脳の表面に出血するもの)が含まれます。人は血管と共に老いるともいわれますが、高齢化に伴い脳梗塞が増えています。このほか脳卒中の仲間には、症状が24時間以内に消える一過性脳虚血発作、血管性痴呆、高血圧性脳症があります。脳から背骨の中を腰まで伸びる脊髄(せきずい)にも、脳卒中と同じ病気が起きることがあり注意が必要です。

どのような兆候が現れたら受診すればいいのですか。

 簡単には、頭痛、めまい、しびれ、物忘れと覚えておくといいでしょう。しびれには口元のもつれ、手足の重だるさも含めることにします。脳は、機能局在といって、部位により果たす役割分担が決まっていますから、障害を受けた部位により出現する症状もいろいろなのです。耳鼻科、内科、整形外科など他科の病気も同様の症状を起こしますが、急激に出現した場合は脳卒中の疑いをまず晴らした方が安心です。このとき症状の程度、年齢は脳卒中の有無と関係ないことに注意してください。くも膜下出血による頭痛、小脳梗塞によるめまい、脳出血によるしびれの方が、偏頭痛による頭痛、メニエール病によるめまい、頚椎(けいつい)症によるしびれよりずっと軽いことがあります。また小児にもモヤモヤ病、動静脈奇形などによる脳卒中があります。最近はMRIなどの画像診断も比較的容易に受けられるようになり、症状の無いうちに発見される機会も増えてきました。それらの中には、将来脳卒中を起こす危険性、治療の必要性を正確に予測することが困難なものも少なくありません。脳神経専門医の責任が増しているとともに、自分の脳の健康は自分で守る時代が来たともいえるでしょう。

2002年1月23日水曜日

「受け口(下顎前突)」について

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治正光 医師

受け口について教えてください。

 下顎前突、いわいる受け口ですが、原因は遺伝的因子と環境的因子が考えられます。乳歯が生え始めたときから発症する場合もありますから、一番身近に接するお母さんが注意をしていれば早い時期に気づくことができます。治療自体は、上下前歯の永久歯が生え揃う6、7才頃からという場合が多いのですが、気づいた時点で一度専門医を受診しておくと、その後の予測もつき、治療計画も立てられ安心です。受け口に限らず、咬(か)み合わせや歯並びが悪いと、歯にも体にも悪影響を与えます。80歳で20本以上の歯を残している人の中に、受け口の人はいないといわれているのは見逃せない事実です。前歯が刺激を受け続けるため、炎症を起こしやすく、歯槽膿漏(しそうのうろう)などになりやすいためです。また、受け口で舌足らずなしゃべり方をする人は、低位舌(ていいぜつ)の可能性があります。通常、人間の舌というのは上顎に貼り付いているものですが、受け口の場合、上顎が小さいため、舌が下方に貼り付いて、舌と下顎の間の筋が短く、舌が自由に動かないため、うまく発音することができなくなります。大人にも多く見られる症状なので、思い当たる人は一度受診してみるといいでしょう。

受け口の具体的な矯正方法について教えてください。

 受け口というと、下顎に問題があるように思われがちですが、むしろ、上顎が狭過ぎるという場合が意外に多いのです。下顎と大きさを合わせるために、上顎前方牽引装置で上顎骨の前方成長を計ります。この装置は自分で簡単に取り外しができるので、夜間のみの使用でかまいません。見た目や装着の不快感は最小限にとめます。受け口に限らず、歯列や噛み合わせの矯正については、現在、なるべく歯を抜かない、痛みを感じさせない、目立たないといった、患者の負担を極力軽くする治療法が主流になりつつあります。しかし、矯正は長期に渡り、健康保険の適用外になることが多いので、信頼できる専門医から納得できる説明を十分に受け治療を開始することをお勧めします。

2002年1月16日水曜日

「胃ろう」について

ゲスト/土田病院 北川一彦 医師

「おなかに小さな口」といわれている、胃ろうについて教えてください。

 経皮内視鏡的胃ろう造設術の英文頭文字を取って一般 に「PEG(ペグ)」と呼ばれています。食道がん、喉頭(こうとう)がんの手術後の人、脳外科手術後の意識がない人、嚥下(えんげ)機能障害のある人など、何らかの理由により食べられない、食べてもむせてしまうという人のために、直接胃に穴を開けて栄養を補給する方法です。現在主流である、鼻からチューブを通 す経鼻栄養の場合、チューブがのどに違和感を与え、患者の苦痛になったり、長期にわたると炎症や潰瘍(かいよう)などの合併症を引き起こしたり、胃液や栄養剤が逆流し、誤えん性肺炎を引き起こすこともあります。さらに、自由に動ける人の場合はリハビリの妨げにもなります。在宅管理も難しく、経鼻栄養のためだけに入院を余儀なくされる場合もあります。胃ろうの場合は、体を自由に動かせるのでストレスが少なく、また管理も簡単なため、自宅での療養が可能になります。一泊の入院で、危険性の極めて低い手術によって造設することができます。大きな特徴として、嚥下訓練などで口から栄養を取れるようになった時点で、麻酔や縫合も必要なく、すぐに抜くことができることがあげられます。抜いた後の穴は、ピアスの穴が自然にふさがるのと同様に、自然な回復力により痛みもなく、1日程度でふさがってしまいます。

胃ろうの手入れなどは大変ですか。

 日常のケアは、食後口の周りを拭(ふ)くように、栄養剤注入後に胃ろうチューブのまわりを清潔な布で拭くだけです。湯船に浸(つ)かったり、シャワーを浴びることもできますから、常に清潔を心がければ細菌感染を恐れることもありません。栄養剤のほかに、スープなど液体状の物であれば入れることができます。4カ月に一度程度のチューブ交換が必要ですが、介護にあたる人の負担が経鼻栄養より格段に軽く、患者本人のストレスが少ない点が大きな魅力です。胃ろう造設術を希望される方は、まず病院に相談してみてください。

2002年1月15日火曜日

「インフルエンザの予防と治療」について

ゲスト/つちだ消化器循環器内科 土田敏之 医師

インフルエンザについて教えてください。

 インフルエンザは、インフルエンザウイルスの感染によるもので、抗原性の違いから、A型、B型、C型に分類されます。冬季に大流行する場合が多く見られます。突然、悪寒を伴う39度以上の発熱で発症する場合が典型で、そのほかに頭痛、関節痛、筋肉痛、食欲不振、倦怠(けんたい)感などの全身症状が強く出現することが大きな特徴で、一般の風邪とは異なった感染症です。重症化することも多く、気管支炎や肺炎、中耳炎、熱性けいれんなどを合併したり、脳炎・脳症など重篤な合併症を引き起こすこともあります。また、呼吸器や心臓などに疾患を持つ人は、重症化することも多いので気を付けなくてはいけません。特に、抵抗力の弱い幼い子どもたちや高齢者には注意が必要です。

予防方法や治療法をご紹介ください。

 毎年10月ころからインフルエンザワクチンの接種が行われています。ワクチン接種をしても、インフルエンザに罹患(りかん)してしまうことがありますが、肺炎や脳炎など合併症を予防することが期待できます。特に老人介護施設や保育園など集団生活を送っている場合は、インフルエンザが蔓延する場合が多いので、ワクチンで予防することをお勧めします。流行しているときは、人込みに出掛けない、などの自衛策も大切です。インフルエンザに感染してしまった場合、有効な治療法としては、抗ウイルス薬の内服があります。抗ウイルス薬はウイルスの増殖を抑制し、症状を緩和させ、重症化による死亡率を低下させます。しかし、この薬は発症後48時間以内の服用が原則ですから、かかったかなと思ったら、すぐ病院へ行ってください。昨シーズンは大人用のみで、インフルエンザA型とB型の両方に効く抗ウイルス薬がありましたが、今シーズンから同じ効き目の小児用抗ウイルス薬が使用可能になりました。健康保険が適用になりますから、一刻も早く病院で薬を処方してもらい、つらい症状を緩和してあげてください。また、無理をせず、十分な休養と栄養を取るようにしてください。

2002年1月9日水曜日

「リウマチ」について

ゲスト/クラーク病院 守内順子 医師

リウマチとはどんな病気でしょうか。

 正式には慢性関節リウマチといいます。体質、免疫異常、感染などの原因が考えられていますが、まだはっきりと解明されていません。まれに子どもに発症する場合もありますが、8割以上は女性に発症する、40代を中心とした働き盛りの女性の病気です。病気の中心は関節の腫(は)れや痛みですが、関節以外にも症状が出ることがある全身の炎症性の病気です。炎症が進むと関節が破壊されるため、リウマチ特有の変形が手や足に見られ、日常生活にも支障を来すことがあります。根治療法は今のところありません。ただ、症状の現れ方や進行のスピードについては個人差が大きく、発病初期の段階で症状が治まる場合もあります。関節以外の症状、合併症としては、貧血、発熱、倦怠(けんたい)、腱鞘(けんしょう)炎、シェーグレン症候群(涙腺(せん)・唾液(だえき)腺に炎症が起き、分泌物が少なくなる病気)などがあります。

治療方法や注意点について教えてください。

 初期症状は、朝起きた時点での関節のこわばりや痛みです。手指の場合が多く、左右対称に発症します。このような症状が現れたら、早めに受診してください。できればリウマチ科を標榜(ひょうぼう)し、専門に診察している病院を受診した方がいいでしょう。関節を中心とした身体所見と血液検査で診断し、治療の中心は薬物療法になります。炎症を抑える非ステロイド性抗炎症剤、副腎(じん)皮質ステロイド剤、リウマチを改善する抗リウマチ剤、免疫抑制剤などが主に使われています。症状や病状変化、副作用など、状態を見ながら投薬していくので、定期的に受診してください。リウマチは長く付き合っていかざる得ない病気なので、検査値や投薬内容、病状の記録を残す「リウマチ手帳」を所持すると良いでしょう。患者自身の病気の理解、自己管理も大切です。関節の破壊が進んだときには、手術を受けた方が良い場合もあります。日常生活の注意点としては、寒さや過労を避け、関節に負担をかけないように過ごします。患者の多くが主婦であるため、安静にできないことも多く、治療には家族の理解と協力が必要です。