2002年4月10日水曜日

「女性の尿失禁」について

ゲスト/元町泌尿器科クリニック 西村昌宏 医師

女性の尿失禁について教えてください

 女性の尿道は約4cmと短いうえ、尿の禁制を保つ尿道括約筋の力が男性に比べて弱く、20代、30代の健康な女性でも、産後などに尿失禁を経験する場合が少なくありません。特に、数回の出産、骨盤内の手術経験、加齢、肥満などの要因が重なると、骨盤底筋群が弱くなるため膀胱(ぼうこう)が下がり、くしゃみやせき、重い物を持ち上げる時などにかかる腹圧で、尿失禁を起こしやすくなります(腹圧性尿失禁)。女性に最も多い尿失禁はこのタイプですが、ほかに、膀胱炎や神経障害から膀胱が勝手に収縮し、トイレまで間に合わず漏らしてしまう切迫性尿失禁や、腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁の混合型もあります。

腹圧性尿失禁の治療法は。

 症状が軽い場合は、膀胱の下垂を防ぐため骨盤底筋群を鍛える体操や、膀胱の出口を絞める作用のある薬を使った治療を行います。体操の方法は、肛門や膣のまわりの筋肉を3秒から10秒間収縮させるのを1回とし、1日50回から100回、3カ月間を目安に継続すれば効果が現れるといわれています。体操と薬物療法の併行で、症状が改善されたという報告も多く聞かれますが、いずれも継続が必要であり、体操は習慣として続けることが大切です。このような治療で効果が無い、初めから症状が重いなどの場合には、手術治療をおすすめします。これまでの手術は、ナイロンの糸で膀胱の出口を釣り上げるステイミー法が主流でしたが、最近では、尿道の中間部を特殊なメッシュ状の樹脂テープで支えるTVT手術が考案され、実施している施設はまだ少数ですが良い成績が報告されています。手術時間は約30分、入院期間は5日程で、体を切るのは膣の1箇所と下腹部2箇所をいずれも1cm程度です。女性の場合、恥ずかしいという理由からなかなか泌尿器科を訪れない方もいますが、実際には尿失禁で悩んでいる方は数多くいます。放っておいても良くならず、悪化することも考えられますので、症状が軽いうちに、専門医に相談することをおすすめします。

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